13-2.同。~お迎えに行く前に、5分休憩~
~~~~ま、例え一緒に作っていなくても、ストックにはバレバレよな。
「まさか、自動人形の作者!?」
「お、それは知ってたか。だいぶ話題になったらしいしな」
当時貴族令嬢だったこの子の耳にくらいは、そりゃ入るか。
「こんなところで会うとは……しかも存命か」
「どこかで道行きが、変わったんだろうさ。
生きているなら、よかったんじゃないかね……。
少々、身の上は気になるが」
「そうだな。まるで金で買ったような口ぶりだった」
だけ、ではないだろうなぁ。
きな臭い。
「聖国の子爵ごときで、叶うものではないね。
裏があると見るべきで……それはギンナにお任せだ。
ベルねぇや伝手を辿ってくれるだろう」
「そうだな…………ん?」
何か外から音が……?
誰か走ってくる??
「ハイディ様!!」
外側出入口の扉が、ばーんと開いた。
淑女みも議員みも忍みも、全部ダンクしたリコだ。
彼女の後ろにはオリーブ……も目がきらっきらしてる。
「落ち着けリコ。
あまり、ここでかかわってはよくない」
「んぐ!!しかしですね……」
引き下げっておくれ。何がそんなによかったし。
「あとで迎えに行くから、下宿で待ってて。
ああ、オリーブもそれでお願いね?」
「え、ここじゃなくてあっちでですか?」
「あちらは、普通の一年は入れない。
だから少し安全」
学内よりは、ずっと目が少ないんだよね。
今なら上級生も、ほとんど向こうにはいないわけで。
「ぐぅぅぅぅぅ!わかりましたっ。
お待ちしておりますので!
いきましょう、オリーブ」
「ああ、リコちゃんちょっと!
では失礼しますね」
二人が入ってきた扉から、慌しく出て行った。
ド平民のオリーブの方が丁寧に去るのは、どういうことだね。
聖女派きっての聖女マニアの名が泣くぞ、リコ。
その聖女の現物は、もっといろいろ投げ捨ててる感があるけど。
そういや彼女、ウィスタリアがそうだって勘づいてるはずだけど。
向こうに行かないのは、こちらがちゃんと紹介してないからかな?
科も違うし……遠慮してるんだろか。
あの圧が強いリコにしては、珍しい。
「すまん。少し話しこみ過ぎたな」
そう申し訳なさそうにせんでも、ストック。
ボクが君とお話するのを、優先しないわけがないんだが??
言伝はしてほしかったけど、それはそれだ。
ふふ。それに。
あの二人より、君が先にいたということは、だよ。
「君、すました顔して、つまりああいう状態だったってことだろう?
なら……彼女たちには悪いけど、邪魔されたくはないじゃないか」
左手を、差し出す。
すぐにその手はとられて。
待ちわびていたかのように、指を深くまで絡められていく。
「ああ……本当に、美しかった。ハイディ。
少し、言葉にするのが難しいな」
「歯の浮くような誉め言葉でも上手に口にする君が、珍しいね?ストック」
「私の言葉など、精霊と唄うお前の声に比べれば、雑音のようなものだろう」
「何言ってるんだ。君の奏でるものほど美しい旋律が、他にあるものかよ」
「ん……ハイディ」
ストックが、距離を、詰めて。
体が、重なろうと……。
「ストック――――ダメ。
メリアが見てる」
ストックがいい勢いで、ドアの方を振り返る。
うすーく開いた扉から、メリアがこっちを見てる。
まぁ別に、覗いてたわけじゃなくて、入っていいかどうか迷ったんだな、あれは。
「ごめんよ。人の来そうなとこで睦み合う気は、ないから」
「ならその、しっとり絡めた手を離すと良い。
そろそろ、ここを閉めるとさ」
そらそうか。もう他に、ここが必要な測定待ちはおるまい。
「わかった、行こうか。
こらストック」
手ぇ離さんし、どうした。
「姉上……あと五分」
細い扉の向こうで、珍しくメリアが嘆息した。
おい、まさか姉呼びに絆されたりは……。
「わかった。五分したら呼びに戻る」
メリアは扉を閉め、行ってしまったようだ。
え、ちょ?
五分もあったらその、ですね。
「ちょっとま、メリア……。
あのストック?ボク結構汚れててですね」
「私もだ。ふふ。
この少し穢れたお前を味わえるのは、つまり――今だけだな?」
五分で何する気だ!歳思い出せストック!!
思春期入った身でその迫り方はまずい!
なんだその撫で方は!君、尻本当に好きだな!?
次の投稿に続きます。




