12-3.同。~そこに乗せる意思により、力は如何様にも変わる~
~~~~攻略対象ってやつは、どいつもこいつも捻くれてやがる。あと三人もいるの?まじで??
ボクの前に立つ四人の額に、玉のような汗が浮かぶ。
表情が引き攣る。
子ども相手だから、加減はしてやる。
「 伏 せ ろ 」
皇子とその取り巻き、アシャードがゆっくりと膝をついていく。
上から、何か非常に重いもので押さえつけられるかのように。
「く、お」
「こ、れ……は」
「ふぎゅ」
「ぐぉ、ぉ……」
魔法がとけたようで、拘束をとかれたアシャードの手から、数枚の札が落ちる。
そうして四人が、地に伏せて頭を垂れた。
まぁ、徒手空拳ならこんなもんか。拡散しすぎるから、大したことはないね。
これ何かって?別に魔素とか魔力、呪いや結晶の力じゃないよ。
気迫とか、やる気とか?
脳の魔素制御で身に着いた、副産物のようなもんだよ。
武の至りを得たおかげか、ここ数年で少しは制御できるようになった。
前の時間から使えるのは使えるけど……加減が効かなくてねぇ。
だからこう……何度か言ったろ?
ストックには殺気を向けたことがない、って。
そんなことしたら、本当に死んじゃうもの。
もちろん、気迫だけで人間は死にはしないがね?
でも、ボクが絶対勝てないと思ってた六人は、皆死んでしまった。
皮肉なことに、実証済みというわけだ。
「礼がなっているようで、大変結構。
本学は何者をも差別しない。
仲良くなさい」
言葉を刷り込むように。
気圧の手で撫でつけるように。
謳い上げるように告げる。
そうして彼らが、気を失いそうになる手前で。
気配の放出を止めた。
四人が姿勢を崩して倒れる。
汗をかき、息も乱れ、だいぶお疲れのようだ。
これは、合同授業は大変そうだな?
後ろの子も膝をついてしまった。申し訳ない。
振り返り、声をかける。
「ごめんね。巻き込んでしまった」
「いえ、あなた、は」
「ただの平民で、魔力なしさ」
オーガの子の肩を叩く。
これで、体は楽になっただろう。
不思議そうな顔をしている。
そして首だけで、後ろを振り返り。
「魔力なしの女の気迫で膝をつくようでは、この先が思いやられるね?
魔物はこんなものじゃないよ?
せいぜい、よく学び、鍛えるといい」
さて。ボクらも着替えて行かなくては。
皆のところへ戻ると。
ウィスタリアとリィンジアが、ドン引きしていた。
メリアとギンナは知っているからか、苦笑いだ。
ストックは、何か頬を赤らめて、目がうるうるしている。
…………なんでや。
◇ ◇ ◇
ちょっと揉めたくらいで、皆大人しくなってくれたし。
大した騒ぎにもならず、合同授業に入る。
授業といっても――今日は測定会のようなものだ。
実技面の奴だね。体力と魔導。
経営戦略科以外は、試験時にも実技があるんだけど、それは評価のために見るだけ。
今日は各種項目を、じっくり測定される。
魔導については、まだ使えない子は魔力のみ。
あと魔導使えないって診断されてる子は、精密検査も受ける。
これはボクが、うちの講師陣経由で何年か前に提案して、導入された。
低魔力な子や低適性な子に対する、指導要綱は頭の中に入っているので。
それを書き起こして、学園に寄贈した。
検査機器は、一部パンドラと共同開発が進み。
指導人員については、パンドラクルーのダッジさんが中心になって育ててくれた。
あの方は薬師は持ってないが、医師の資格は持っててね。本来は教師向きの人だ。
まぁ魔導学園の教師は、そも学園考査が振るわないとなれないからね……。
そこんとこ、向き不向きがある。
魔導絡みでないけど優秀な人は、どうしても市井に行ってしまう。
さて、この合同授業だが。半日かかる。
入学者全員が対象で、かつほんとにいろいろ計測するからね。
なので今日の初等部一年は、他の講義はない。
一部、上級生も計測や手続き手伝いに出てきている。
最初にちょっと手続きして、それからカードを渡されて、記録しながら周る。
結構な項目があるので、時間かかるのよね……。
ボクも用紙に記入。最後に隠蔽禁止の契約書に署名をし、皆のところへ戻った。
入学者が危険な魔導の持ち主だったりすることもあるので、ここで全部暴かれます。
ボクが前の時間で嫌な目に遭わされたうちの何人かは、力を隠したとんでも人材だった。
そういうのを引っかけ、特別な指導に回す。
この隠蔽禁止の契約には、結果によって特別指導に回されること。
及びそれに従う旨も書かれており、破ったらもちろんだが、不同意でも一発退学だ。
治安悪化の要因となる奴らほど、力を隠す。
先の低魔力低適性者指導要綱の代わりに、パンドラはこの是正を学園に求めた。
何年か前、クエルやシフォリアに学園のことを話したとき。
ボクが少々脅したのが悪かったんだが、ちょっと不安にさせちゃってね。
それを緩和するための措置でもある。
なお、当のクエルとシフォリアは引っかからなかった。
パンドラでも先の6,7曜日に改めて計りなおしたが、彼女たちの力は計測できるものではなかった。
クエルの力は呪いが源のはずで、それなら数値に出るはずなんだが……引っかからない。
本人の言を採用すると、呪いが流転して魔導になっているらしい。
結果、魔導でも呪いでもない何かになっていて、機器で検出できないと見られる。
シフォリアなんか、確かに魔力生成しない魔力なしなのに、自力で魔力を生み出すことができた。
そしてその生み出す側の力は魔導でも呪いでもないので、計測機器で検出できず、隠蔽禁止に抵触しない。
生成した後の魔力は、ちゃんと計測できた。
我が娘ながら、二人とも意味がわからない。
次の投稿に続きます。




