12.1の月6日。魔導学園。実技測定~幻の王女の魔法
――――さぁ、お披露目ってやつだ。ふふ。ボクの密やかな、デビューだな。
明けて翌日。
先の少年のことや、ラース皇子一派のことは、ギンナとベルねぇにお願いしたので。
こちらがあとやるべきことは、リコとオリーブのことだ。
彼女たちは学園から是非に、とお願いされた以上、まずはパンドラに案内する必要がある。
エイミーに下宿先を聞いたので、そこを訪ねて連れて行くとしよう。
ああでも、今日は新入生一斉合同授業があるから、そこで聞いてもいいな。
そして見学ってほどでもないが、二人を加えた上で。
リィンジア、ウィスタリアの四人と合わせて、ちょっとパンドラがどんな組織か?を見せようと思う。
研究絡みは、まだ披露は避けたほうがいい。
なので見せるのはすなわち――――普段の業務内容だ。
今日の担当はマリー。面白いものが見せられるはずだ。
昨日の今日なので、今朝は何人か寝不足めな顔をしていた。
全員目の覚める朝飯をぶち込んで叩きだし、ボクは最後に出る。
ギンナとベルねぇは、先の件でさっさと出ていて。
ミスティとマリーとエイミーは朝から講義があるので、ダリア、メリアも連れて早めに登園。
エイミーは完全に寝てたところ、マリーとミスティが引っ張っていったが……大丈夫だろうか。
まぁ大丈夫か。朝飯は普通に食べていた。寝ながら。
マドカ、アリサ、そしてクエルとシフォリアのやる気ある組は、元気に学園に向かった。
そしてボクは寝ぼけたスノーの手を引いて、ストック、ウィスタリア、リィンジアとパンドラを出た。
…………しかし学園通ってるの、多いな。
転送路をくぐるとスノーはしゃっきりしだして手は離したが、やはりまだ眠そうだ。
ストックとボクは平気。睡眠効率はいい方だからね。
「ウィスタリアとリィンジアは、ちゃんと眠れた?」
「「…………」」
おう赤くなって黙るのやめろや。まだ朝やぞ。
たっての希望だからと同室になったらしいが?
「君ら未成年だから、致すと精霊に罰せられるぞ?
外国人だから、基本国外追放だが。
やるなよ?」
「「やらないわよ!?」」
ふむ。顔にも寝不足はでてないし、元気そうで何よりだ。
「姉上たちはまったく眠そうではないけど。
どうして?」
「鍛えてるから、としか言いようがないけど。なぁストック」
「まぁな」
「鍛えられるものだったかしら……」
ストックもかなり、脳の魔素制御がうまくなった。
睡眠圧縮くらいなら、もうお手の物だ。
転送設備から寮の脇を通り、校舎側へ出る。
まばらにまだ登園する学生のいる中。
ウィスタリアとリィンジアが、僅かに身を固くした。
ラース皇子と取り巻きが……二人。
校舎入り口のところに、陣取っている。
メザイヤは、まだ戻ってないはずだしね。
「昨日は大変だったそうだな?リィンジア」
自分をビームで吹っ飛ばした相手に、そうやって突っかかれるの。
正直感服する。
でもちょっと気持ち悪い。そこまでして付きまとわなくても。
「あら。なんのことでしょうか。皇子殿下」
「貴様とぼけるのも!」
大柄の少年がいきり立つ。
自信あったんかなぁ?
投げの一撃で気絶させられて、さすがに傷ついたってとこか。
この子たち見てて改めて思うが、帝国はやっぱ女性を下に見る傾向が強いな。
そういう文化で、教育をしている国だとは知っているが。
子どもだから、で片づけるには。価値観の総意を強く感じる。
「落ち着けホリック」
「ですが皇子っ」
「大方、ペテンでも使ったのであろう。
お前が実力で劣るわけもあるまい」
「皇子……」
何この茶番。
魔導のある世界で、ペテンで。危機感0か。
理解できないことは脅威だと認識しないと、死ぬぞ。
というか、リィンジアのあれに、はっきり倒されておきながら。
それが意識できないとか……無敵か。
「姉上。こういうのに効くツボとか、ご存知なのでは」
スノーが、滅茶苦茶なことをこそっと聞いてきた。
「あるわけないだろ」
馬鹿に効くツボはねぇよ。
皇子が口を開きかけ、茶番続行かとみられたその時。
「邪魔だ」
先のホリックという少年と、皇子の間を、長い黒髪の少年が歩いて抜けた。
皇子がよろけて倒れそうになるのを、取り巻きの赤毛の少年が支える。
「き、貴様無礼な!」
急に沸点低くなったな皇子?
あれか、やっぱ女子は完全に舐めてるが、男子はそうでもないって感じか?
「合同授業が始まろうというのに、校舎入り口をふさぐ馬鹿に、礼を問われる筋合いはない」
「なに!?」
おぉぅ……ボクがせっかく我慢したのに、言っちゃったよ。
次の投稿に続きます。
#本話は計9回(18000字↑)の投稿です。




