表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
418/518

11-5.同。~皆のおかえりが、伝わる~

~~~~カツサンドはカイナさんの発案。ミルフィーユカツは、どうも専門店が共和国にあるらしい。


 決闘もし、遅くまで起きてる二人は、まだ疲れた様子はないが。


 今にも、おなかが鳴りそうなお顔はしてる。



 リィンジアは一見澄ましているが、目を伏せがちにしてるのは匂いを辿ってるからだろうし。


 ウィスタリアはもっと余裕がない。視線がキッチンの扉から離れてない。


 …………クレッセントにいたから、ひょっとして飢えてるんじゃなかろうか。



「とりあえずカツを揚げたんだけど……って。


 二人は聖国や王国、魔都あたりの食文化圏か。


 学食にもないはずだし、食べた覚えはないかな?」


「ないわね」「私もないわ」



 だろうなぁ。王国っていっても、二人が知ってるのは昔だが。


 王国はそも、長く畜産は控えめだから、この辺の文化が元々薄い。



 魔都は土地があまり豊かではないから、食は質素めだ。


 文化圏としては、帝国と共和国の間くらい。


 聖国よりは豊か、なんだけど。カツはなかったと思う。



「パン粉はわかるか?それをまぶして揚げたものだな。


 とりあえず四足の肉でやってる。


 そろそろ来るからまず一皿食べて……」


「姉上が揚げ物してると聞いて!」「来たわよ!」


「「「…………」」」



 なぜ来た、次代の王家コンビ。


 とりあえずお茶を出すと、すかさず座りに来た。



「あーもーおなか空いちゃって。


 二人とも、ハイディのお料理はとってもおいしいの」



 なじみに行くの早ぇな所長。



「揚げてんのボクじゃねぇけどな?マドカがやってる」


「マドカも、かなり腕を上げたではないですか。


 良い香りに音……おなかが鳴りそうです」


「君らなぜご飯食べてないんだ」


「や。あんまり言いたかないんだけど、お通夜みたいになっちゃって」


「ごめんなさい」


「姉上が謝るところではないんだが」


「その……聞くのが怖いんだけど」



 ウィスタリアがおずおずと手を挙げた。



「姉ってとこかい?」


「まぁ、そう」


「血縁関係にはあるんだよ。


 ボクは生まれてすぐ、聖国に浚われてね。


 王族籍の復帰もできるんだが、いろいろあって公爵になったから王族ではない」



 元は死産扱いなので登録だけされて死亡、ということになってたようなんだが。


 ここからの復籍も可能だった。


 ただ、特例だし王族となると、その長……国王との面会が必須だったんだよね。



 だからなかなか復帰できなくて。そうこうするうちに公爵になってしまった。


 経緯を振り返ると、自分でもさっぱりよくわからない。



「さらっとすごいことが出て来たんだけど……。


 浚われたって」


「ある意味解決済みさ。悪い奴らは、人を呪って、自分の墓穴を掘った。


 ――――もういない」



 少しリィンジアが沈痛な面持ちになり、それをウィスタリアがそっと見ている。



「そういうところ、結局変わらないのね……」


「リィンジア様……」



 変わらない、とは?昔この子たちが国を作った頃から、そうなのか??


 何か聞こうかと思ったところに、ストックが皿を運んできた。



「…………?何か増えてるな。


 とりあえずハイディからだ。


 せっかくだから、もっともってこよう。


 ハイディ、芋のマッシュ揚げも作るが」


「そうしてあげて」


「わかった」



 ストックが次の皿を持ちに行った。


 皿を置いてくれた席について。



 おっと。一つだけ先に伺っておこう。



「あ、そうだビオラ様。今日のことは後でまとめますが」


「先寝てもいいのよ?」


「そうもいきません。それより明日、測定なんです。


 例の、使っても?」


「お披露目ね?各所に話は通してあるから、思いっきりやってきなさい」



 よっしゃ。


 明日は、学園の合同授業。実技能力測定会なんだよ。


 この四年の研鑽、見せてやろうとしようか。



 では……遠慮なく。


 この見るからにおいしそうなやつを。



「悪いけど、お先にいただくね」


「ど、どうぞ」



 スノーのよだれを、脇からビオラ様が拭いてる。



 手を合わせ。



「いただきます」



 千切りの甘葉は食べにくいので、箸でいこうかな。


 すでに適切な大きさに切られているカツを、箸で持ち。



 うん。仄かに立つ湯気。わずかに踊るパン粉。


 もうどこ行っても出せるくらい、上手になったね。マドカ。



 一口。



 あまり良い作法ではないが、さくり、という音が広がる。


 …………生唾を飲む音がしたぞ。そっちは完全にアウトだろう。



 食べ応えはある一方、噛みきるのに労がない。


 しっとりとし、甘味すら感じる柔らかな脂。


 香りもいい。ちょうどよく香ばしさを感じる。



 ああ。四足といい、パン粉といい、最高のものだ。


 それがよく調和し、完璧に揚げられている。


 共和国でお会いして、今はパンドラで働いてくれている料理人のカイナさんも、唸らせることができるだろう。



 しっとりと味わっていると、ストックが追加の皿を持ってきた。


 待っていましたとばかりに歓声が上がり。



「「お母さまが揚げをしていると聞いて!」」


「おなかすいた」「夜食ください!」


「ここに来ればおなか一杯食べられると聞いて!」「カツください」


「しょうがないから手伝ってやろう」「甘いものないですか!?」


「「ただいま」」



 増えた!?


 一人天使(メリア)が混ざっておる。


 あといつの間にか現れたエリアル様が、てきぱきお茶を淹れ始めてる。



 まったく。


 帰ってきた二人はともかく、明らかに君たち、着替えた後があるぞ?


 もうちょっと落ち着いて出て来なさいよ。



 ボクはひとまずカツをしっかり食べさせていただき。


 付け合わせの野菜も堪能し。


 立ち上がった。



「よぅし欠食令嬢ども。体重増えるくらい、揚げを食わせてやる」



 四足以外の肉もあったし、野菜もたんまりだ。


 夜食でその身に肉を蓄えるがいい!



 それが、ボクを心配して来てくれたみんなへの。


 礼ってものだろう。



 …………ありがとう。


 ただいま。


ご清覧ありがとうございます!


評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 甘葉はキャベツかな?一部の野菜マジで漢字だとわかんねえやつありますよねえ。そして最近葉物野菜がたけえキャベツ以外
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ