表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
414/518

11.学園アウラ寮~パンドラ。振る舞い合って、無事を祝す

――――ボクは今までそれが、よくわからなかったけど。これが「家に帰ってきた」感覚、なのだろうか。


 帰り着いてすぐ転送路で学園に乗り込んでみたら、ストックたちはまだお待ちだった。


 というか学園長がご一緒だった。


 なんでリィンジアのお部屋に、この方が。



 ご高齢ゆえ髪はすでに白く、しかしその芯の入った姿勢を実現するお体は、若々しい印象すら受ける。


 暗い緑の瞳は不思議な光沢感があり、そのまま宝石のようでもある。


 アレイディア・ローズマリー学園長。南方領ニキス家の方だが、当主はすでに辞しており、先代にあたる。



「ハイディ。無事でしたか」


「はい。連絡なく行方をくらませ、申し訳ありません。


 皆も、待たせてごめんね」



 一見厳しいお方なんだけど、ふっと柔和なお顔や声を漏らされることがあって。


 ゆえにだろうか。ボクの中では、とても優しい方として印象付いている。


 今もこう、明らかに無事を喜ばれた感が……おっと。



「ストック。人前」


「ん」



 脇から抱き着いてきたストックは、ボクの言うことを無視してさらにしがみ付いた。


 そっと頭を撫でる。



 ウィスタリア、リィンジアは苦笑い。


 ダリアは……おや、ほっとしてる。ごめんね。



 他の子は来てはいない。


 なおパンドラに戻って、ビオラ様に会ったので少し事情は話している。


 向こうにも、ボクがいなくなったという点は伝わっていたようだった。



 しかし……この状況。


 ボクを門に落とした子、あのまま大人しくしてるとも思えない。


 その上で学園長がいて、皆が待機している、ということは。



「学園長がここにおられるということは、あの子捕まったんですね?


 その状況で、よくいろいろ我慢したねストック。えらいよ」



 ストックが頷くようにボクの肩に顔をうずめて……こら。


 嗅ぐな。吸うな。頬をすりすりするな。



「改めて。あなたが無事で何よりです。ハイディ。


 あの子……メザイヤさんは、魔道具を取り上げた上で、監視下に置いています」


「ありがとうございます、学園長。


 ああ、ボクの方からも提出しておきますが、無駄に終わりましたね」



 布包みをダリアの方に差し出す。


 結局この部屋から持ってって、持って帰ってきたことになる。



 ダリアはボクの手から受け取ったそれを、学園長に渡した。



「他害、私闘を取り押さえたといったところですか?」


「そうです。ご禁制のものの所持もなし。


 ダリアがとってくれた魅了の魔導痕跡も、あくまで学園が取り締まっている範疇」



 ってことはやっぱ、ボクを門に落とした後、ストックたちにも襲い掛かったか。


 あれはご禁制じゃないの?っていうと、そもそも開発されたとは初耳だ。


 うちでは製品化してないし、その式はボクとダリア、ミスティの三人で管理している。



 頭の中で、なので。盗むのは不可能だ。


 読心の魔導とかは、ないんだよ。



 しかし……状況は芳しくないな。



「学園としての処罰はできますが、大したものではありませんね。


 正直。悪質さ、先の懸念の方が大きすぎる。


 刺激はしたくないが、野放しにもできない。


 かといって、身柄を確保し続け、あるいは適切に罰することもできない。


 難しいですね。


 取り調べはしてるんです?」


「聴取はしてますよ。概ね状況は聞けています」


「動機は?」


「魅了の魔導の使用証拠を取られたため、当人たちを消してうやむやにしよう。


 そういう短絡的なものです」



 あーうーん。12歳だしな。そんなもんか。


 追い詰められたし、力では明らかに敵わないし。


 しかし。



「その言い方だと、皇子に指示されてやったように聞こえますが」


「メザイヤさん本人はそう言っています」


「で、皇子は馬鹿々々しいと取り合わない、と」


「そういうことです」



 ほのめかして差し向けた。


 場合によっては、精霊魔法も使ったな。


 ん?となると。



「彼の残留魔導除去は?」



 ほんの少し、学園長の口角が上がった。



「だからあなたを待っていたのですよ、ハイディ。


 この子たちを押し留めてでも、ね」



 ダリアを見る。


 肩を竦められた。



 こやつがいて、まだ未対処ということは。



「魔素を深く汚染された、と……。


 それは治癒の魔導では治りませんしね」



 人体の魔素そのものにある種の変更を加え、人を操る手段というのは、存在する。


 ただその人自身に結構抵抗力があるため、完全とはいかない。



 時間経過でいずれ消える類のものだが、魔素そのものが変更されるからねぇ。


 その状態そのものは、体からは「正常」と認識されるため、魔導等でぱっと治療するのが難しい。


 魔素に再変更を加えてもいいが、それは治るというより、おとなしくさせるとかそういう感じだ。



 一番いいのは、魔素そのものを全部いったん出すなりなんなりすることなんだが。


 外部からはそういうことをする方法は、ない。


 ボクはできるけど。



 学園長に、ボクがそういうった技術・知識の持ち主だと話したことはない。


 ならダリアの提案か。



「話が早くて助かります。ハイディ。


 今から会ってもらいますが、大丈夫ですか?」



 大丈夫か、とは。都合じゃなくて……嫌じゃないか、というところかな。


 この方は学生をちゃんと学生として扱うから、えらいよなぁ。


 前の時もそうだったが、ボクを特殊なものとして扱わない。



 能力なんかは、ちゃんと認めてくれるんだけどね。



「話はもう聞けてるんでしょう?


 出会い頭に気絶させるので、問題ありません」


「大変結構」



 学園長が、今度ははっきりと、目元口元で笑顔を浮かべた。



 ……あれ?このお顔見たことある。


 実はすごいおこでは?

次の投稿に続きます。


#本話は計5回(約10000字)の投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] そりゃあ学園内部で公爵当主を他国の皇子風情が明確に暗殺しようとされたんだからキレるよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ