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10-4.同。~芋虫の見た目だが、お獣の趣味はない~

~~~~四世は頼りになる。なお、三世や夫人は契約してるわけじゃないので、お願いは聞いてくれない。


 では解析は済んだので、ぷちっと圧し潰しまして。


 結晶は崩れ去り……宿業の光も消えた。


 ん。変な呪いの発動もなし。宿業自体は、やはり強くはない。



 警戒は解かず、方向を転換。


 そのままクラソーのいたところへ戻る。



『…………終わったか』



 座って、壁に背を預けている結晶。そしてその膝にわんこ。


 ……場違いになごみそうになった。いかんいかん。



 場違いというなら、そこに巨大芋虫がいることの方か。



『君、ずいぶん辛そうだな?』


『倒したなら、大丈夫だろう。


 少しだが、治ってきている。


 そちらは大丈夫か』


『ボクは攻撃は受けていない。大丈夫だ


 あなたも、傷は治ったようですね』


『ああ。娘、名は』


『ハイディ』


『サクラだ』



 珍しい感じのお名前ですね?



 というかこの声。女性か、この方。


 よく見ると、毛並みがめっちゃ整ってる。


 こだわってブラッシングされてる感がすごいある。



 銀と灰の混じったような、綺麗な毛。


 しっぽが大きくて、もふ感がすげぇ。



 しかし、やっぱり……小さいよなぁ。


 人の大人くらいは、ありそうなサイズのわんこだけど。


 普通魔物は、もっと巨大だ。



 ……犬型、そしてこの大きさ。


 その種は、本の中の記述で、見たことがある。



『人の間では、猟犬、とだけ伝わっている方ですね?』


『その呼び方は知っている。だが意味はない。


 今代はどのみち、私だけだ』



 呼び名……種族名に、意味が、ない?



 っ。まさか。単独、完成体。


 たった一匹で一種となる魔物。


 ドラゴンやバジリスクを上回る、とんでもないやつだ。



 ただ邪魔(ヤマ)とは違い、繁殖自体はする、らしい。


 代替わりの時に。


 どうやっているのか、詳しいことは分かっていない。



 死なないわけではなく、そして死ぬと次の個体が現れるという。



 猟犬はただでさえ特殊な種らしいのに。


 単独完成体でもあるのか……。



 猟犬には、伝説がある。


 魔力の関係で、ボクは眉唾だろうと思ってたけど。


 人と寄り添う、魔物なんだとか。



 …………どうやって飢えをごまかしているんだろう。



『クラソーから魔力の供給を受けていると考えますが。


 それ、足りるんでしょうか?』



 考えられるのはそれだけだが。


 クラソーは結晶ができている関係で、そんなに魔力はないはずだ。



『くく。まったく足りぬ。


 おかげでほとんど力が出ない。


 ま、味には満足している』



 おおう。魔力が足りなくても動けるのかよ。


 しかも理性を保ったまま。


 変わり種……というかそれもう、魔物の摂理に逆らってんだろ。



 世界は広いな。


 ボクの常識を覆す存在が、まだまだいそうだ。



 なんとなくクラソーを見て。


 ……まだしんどそうだな。



『クラソー。まだかかるなら、今後の方針を話したい』


『結晶体を倒したなら、こちらはもう用はない。


 脱出したいところだが……』


『出入口がわからんのか?』


『それは分かっている。


 門番がいる』



 ……君がそれを問題にするとか。


 どう考えてもやべぇ奴かよ。



『ボクもここに用はないし、そこから脱出したい。


 門番については、どう見積もる』


『とにかく固い。残念ながら、刃が通らない』


『ボクが知っている最高硬度は、四年前のディックだ。


 そこから考えてどうだ』


『上回る』



 そりゃちょっときついな。


 サンディの目は、それなりにインターバルもあるし。


 結晶で完全に防御されていたら、防がれる可能性はある。



『厳しいか』


『正確に測れないとコメントし辛い』


『せめてもう少し魔力があればな……』



 ん?魔力?


 もしかしてサクラさんに何とかしてもらうのか?



『魔力なら用意できるが、波長とか指定はあるのか?』


『どういうことだハイディ。お前は魔力なしだろう?


 精霊はその機構でなんとかしたと考えたが、魔力は生成できまい?』


『よく知ってるな。スノー情報か?』


『そうだ。それで?』



 食いつくな。魔力の有無で、かなり差が出るのか。


 よし。



『とにかく用意はできる。


 ただ君の魔力波長に合わせろ、とかだとちょっと時間がかかる』


『…………サクラ』


『量があれば、我慢してやるさ。


 ハイディ』


『わかりました。少々お待ちを』



 右手の赤い腕輪をいじる。


 こいつには、いくつかこう、玉のような装飾がついている。


 ボクはそれにあれこれ、機能を入れてるんだ。



 少し機構を組み替えて。


 車外の空間に、緑の魔力光が溢れ出す。


 それが、徐々にサクラさんに収束していく。



 ふふん。サポート能力なら大したもんだぜ、ボクの発明は。



『ふむ?思ったより悪くないな。


 酒のようでもある』


『味を意識した波長ではありませんが。


 誰でも飲める水、のような魔力にしています。


 酒も良いものは水に近くなりますし。


 だから、そのように感じられるのかもしれません』


『興味深いな。


 量も十分だ。


 この量で10分ほど供給を維持できるか?』


『はい。同じ供給速度でなら二時間ほど。


 その後はちょっと充填が要ります』


『…………ハイディ』



 犬の黒い瞳が、ボクを真っ直ぐに見る。


 車内にいるのに、不思議と目が、合った。



『なんでしょう?』


『私の伴侶にならんか?』



 ぐっ。危うく吹くところだった。


 クラソーは撃沈した。吹いてる。



 というか芋虫を犬が口説くな。絵面がバグりすぎだ。


 しょうがねぇ、真面目にお答えしよう。


 どうも……それなりに本気のご様子だし。



『魅力的なお誘いですが。


 売約済みです』


『くく。人にも見る目のあるやつがいるようだな』



 随分お誉め頂いているような……?



『おい、サクラ』


『契約は守るとも。


 だが私が伴侶探しをしているのは、言ったであろう』


『そいつは、お前とは同性に当たるはずだが』


『くく。そうだ。いい女じゃないか』



 さすがに同性のお獣様に、見初められる覚えはないんじゃが……?



『興が乗った。行くぞクラソー』



 え、もう?確かにだいぶ魔力は注いだけど。


 って、ゆっくり行く気みたいだ。それなら道中で十分かな。



『……わかった。


 ハイディ、我々に任せろ』


『くく。どれ、少し恰好でもつけてやろう』



 いやそんなことされてもなびきませんからね?


 彼らが歩き出す方向に、ボクもアクセルを踏み、芋虫を進める。



 正直肩を竦めたい気分だった。

次投稿をもって、本話は完了です。


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― 新着の感想 ―
[一言] ストックの明確なライバルは魔物かあ・・・しかも同性・・・繁殖の方法によっては共有できるか?
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