表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
400/518

8-2.同。~すべての淑女の祖よ。女の希望よ。立て!~

~~~~言っちゃなんだが、同性愛にまともに悩んでる人、見たの久しぶり……スノー以来?


 ボクは密かに嘆息する。


 じれったいが、まぁ人の悩みは様々だ。


 だがそれはそれとして――――そこで淑女の祖にうじうじされるのは。



 気に食わない。



「ちなみにボクはストレート、ストックが同性愛者だ」


「は?」


「ストックを気持ち悪いなんて思ったこと、一度もない。


 同性を性的に見てしまうことも含めて。


 ああ、ストック以外は男性でもダメだ」


「なによ、それ」


「そういうもんだろ。君だって、女なら誰でもいいのかよ?」


「そんなわけないじゃないの!」


「その通りだ。好きな人以外ダメってのが、当たり前で。


 性別の話は、その次だ。


 逆に考えるな。


 それともまさか君、ストックでもよかった、とか思ってるのか?」


「ち、ちがっ」



 口滑らせてるし。余裕ねぇな。



「…………でも、こわい、のよ。あんたほど、割り切れない!」


「ボクだって怖いわボケェ。呑気なやつめ。


 この半島では、一秒先に相手が死んでることがあるって、自覚足りないんじゃないか?」


「ッ!?」



 顔が青ざめてる。


 そのくらいの修羅場は、経験があるか。



「惚れた女がすぐそこにいんのに、怖いとか言ってる場合か。


 あの子は君の望みを、その賭けを承服したんだぞ?


 そばにいてもいいと言ってくれる相手に、何を迷う」


「でも!リィンジアは!私に、寄るな、と」


「そんなことは言っていない。


 本心を隠し、秘密もりもりですり寄る君が鬱陶しいだけじゃないか」


「うっと!?」


「君が彼女を、性的に見ているのはあちらにはバレバレなんだよ。


 で、それでもそばに寄るなと、一度でも言われたか?よく思い出せ」


「…………言われて、ないわ」


「あまつさえ、この決闘での景品はなんだ。


 あんなの、そばにいていいって公言したようなもんだろうが」



 嫌ならそもそも、賭けを承服しない。


 もちろん、絶対勝つって驕りがあるとか。


 そうしてでも秘密が知りたいっていうなら、話は別だが。



 立会人として話したときのリィンジアは意外にも、怒ってるけど冷静で。


 ボクの目には、そういう愚鈍には映らなかった。



 もちろん、この点は介添え人として、リィンジアに確認済みだ。


 本当にあの景品でいいのか、と。


 ()()()()()()()()()()()()()()が、それでもいいのか、と。



 同性愛者が生理的に受け付けられない人だって、そりゃいるだろう。


 そうだったら、非常につらいことになる。お互いにもっと傷つけあうことになる。


 そう説明しても、彼女は「二言はない」と言い放った。



 まだ会ってたった数日。


 それでも別に、リィンジアはウィスタリアが嫌ではないのだ。



 だが一方で、正直第三者から見ても、この子の態度は鬱陶しい。


 そりゃあの調子であれこれ心配されたら、嫌な気分にもなろう。


 ウィスタリアはちょっと、気持ちが先行しすぎてて、相手が何も知らないってことに考えが及ばないんじゃないかな。



 きっと、寮でもあの調子だったんだろうしなぁ。


 そりゃリィンジアは切れるだろうよ。



 しょうがねぇなぁこいつは。


 めんどくさいやつめ。



「ウィスタリア」



 顔を上げる彼女の目が、迷っている。


 ただただ、否定し、怯える色だったその瞳が。


 光を求めている。



 ならば。


 星の輝きを見ろ。



 ボクの宿業が、溢れ出る。



「一瞬だ」


「へ?」


「君にだって、技があるんだろう。


 その必殺の一撃に、何秒も使うか?」


「いや、使わない、けど」


「ならばそれと同じ、刹那の時でいい。


 怖いものに、立ち向かうのは。


 勇気を、振り絞るのは」


「い、っしゅん……」


「身の上も、秘密も、何もかも忘れろ。


 今そこに、あの子のそばにいるための、最高のチャンスがある。


 集中しろ。


 その怖さを打ち破るために、ありったけの勇気を振り絞るんだ」



 彼女の目から、余計な光が消えていき――――。


 その奥に、小さな炎が灯る。



「どうせ彼女しか目に入らないんだろ?


 だったらこれは、いい機会だ。


 決闘中は、どれだけ見たって怒られない。


 気持ち悪いと、ののしられることもないだろう。


 大事なものから、目を離すな。


 君の情動すべてを集中し、息をしろ。


 一瞬でいい、閃光のように――その業を研ぎ澄ませ」



 ウィスタリアが立ち上がる。


 彼女の呼吸が、深く深くなっていく。



 赤い光が、静かに漏れ出す。



「あの……っ!?」



 高等部とみられる方が、決闘場側の扉から現れ……ウィスタリアを見て引いた。



「呼び出しお疲れ様です。


 行こう、ウィスタリア」



 頷く彼女を、先導する。


 ウィスタリアの後ろからは、なんかめっちゃ笑顔のシフォリア。



 さぁ、聖女と謡われた女よ。


 すべての淑女の始祖よ。


 宿業が溢れるほどの、君の情念。



 見せてみろ。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] これでウィスタリアがぼろくそに負けたら笑う
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ