7-6.同。~決闘者たちの実力を推し量る~
~~~~文化は否定しないが、ルールに組み込むのはやりすぎだろ?
「あんた、また決闘に……くく。逃げられないわねぇ」
うっさいわ。
ダリアはボクの前の時の在学中は、もう学園は卒業後だったわけだが。
船で愚痴るボクの話をよく聞いてくれたので、いろいろ知っている。
「余り笑っては悪いぞ、ダリア。もうハイディは呪われておるの」
メリアは一しきり笑い終わったのか落ち着いた……と思ったが、まだおなかを押さえてる。
そんなにおかしかったのかよぅ。
「ほんとね。今回のなんて、ほっとけばいいのに」
「ほっといたら刺されそうだから、しょうがなかったんだよ。ギンナ」
肩を竦める。
「くっ、だめもう……あんたを巡って、ぷぷ。痴情の、もつれ……」
ダリアが机をだんだんしながら、めっちゃわろてる。
おのれ。違うがそうとれなくもない。
対象はボクではないが、痴情の縺れであることは疑いようがないし。
「いうてやるな。洒落にならん」
「ダリアは知らないでしょうけど、ほんとにそういうこともあったものね。
ストックは知ってる?」
「私も巻き込まれたんだよ、ギンナ。知ってる」
「お母さま大人気」
「違うんだよシフォリア、そうじゃない。
ボクを挟んで、縺れた痴情で決闘したあほがいるんだ。
意味がわからなかった」
逆恨みとストーカー?みたいなのがごった煮になったような事件だった。
思い出したくもない。
「ボク狙いの場合は、決闘以前にきっちり逃げ回ったから。
ただこう、予想外のところから突然来るんだよ。
本当に全然、関係ないところから」
「お母さま、呪われてますね……」
「私らが通ってる学園と、実は違うところなんじゃ」
確かに前の学園は住所が違うねぇ、シフォリア。
そのせいだといいなぁ……。
ああ……卵油のおにぎりが染み入る。
メリアはほんと、お料理上手になったなぁ。
あ、こっちはアリサが作ってくれたのだな。うまうま。
「ん。食べやすくて助かるよ。ありがとう三人とも」
「英気を養って頑張ってね、ハイディ」
「私らも見に行ってもいいのか?」
「いいよ、マドカ。アリサ。
万が一の時は、止めるのに加勢して。
観客席からだと、魔導の防護があって。
直接は飛び込めないけど」
「私が魔導を割って、それから突入すればいいか」
「そうして。たまにそういうことあるし、乱入しても怒られない」
立ち合い人や介添え人が止められない、という事態は、たまによくある。
危険な魔導を行使しにかかる場合もあって、危ないんだよねぇ……。
もちろん、観客席を守るための防護魔導を壊すのは、良いことではないが。
ここ数年でその破壊の力をものにしたアリサなら、いい感じに部分的に壊して突入してくれるだろう。
この子の力の真価は、壊すことそのものではなく「狙ったものだけ壊せる」という点にある。
アリサの力は、例の魔晶人に対する、有効打の一つだ。
外を砕いて、取り込まれた人だけを助け出せる。
「ハイディが止められないなんてこと、あり得るの?」
「予想外はどこからだって起きる。備えはしておくに限るよマドカ。
特に、あの二人は戦力予想がついてない。
ストックも知らなかったし。
1000年前の聖女も、その辺は詳細があいまいだし。
例のゲームの情報は抑えているけど、そこからは乖離があると見るべきだ。
そしてあれは……十分に鍛えてる」
基本、二人とも歩いたり立ってたりしてぶれがないんだよね。
年齢を加味すると、かなり鍛えこんでると見て良い。
出現の時期から考慮すると、猛然と鍛錬したと考えたほうがいいな。
それに。
ウィスタリア役のボクがこんなのなんだから、本場ウィスタリアやリィンジアだって、とんでもな部類だと見たほうがいい。
ゲームの情報は宛てにならない。レベル?とかステータス?とかがMAXの状態での想定が最低限だ。
それ以上の超常的な何かを持ちだすことは、普通にあり得る。
「そだね。ウィスタリアは、芯がしっかりしてた」
「たぶん、リィンジアって子は生物として人間の枠をはみ出てる。
かなりの膂力の持ち主だよ、お母さま」
ほら来た……なんだよ人間の枠からはみ出てるって。意味がわからん。
ウィスタリアも同等と見たほうがいいだろう。
悪役令嬢ってのは、主人公のライバルなんだ。
ライバルが強いなら、主人公だって強いと見たほうが無難だ。
けど。
「抑えられる?」
「「もちろん」」
頼もしい娘たちだこと。
この子たちがいれば、きっと大丈夫だろう。
ご清覧ありがとうございます!
評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。




