7-5.同。~名誉の戦いにしょうがなく立ち会う~
~~~~くそう。斜め上から決闘が降ってきやがった。二人とも、冷静さを欠きすぎだろう。
急になんか生えてきた。
長髪でひょろ長い男性……高等部、かな?
見覚えない顔だけど、まさか……。
「第三者の立ち合いは、この生徒会書記、コール・ゴングが努めます!
お二人、二名まで介添え人をご指名ください。
決闘の詳細を詰め、これを見届けるとともに。
結果の証人となり、保証する。大事な方です。
もちろんッ!決闘とは名誉のやり取りであり、命のやり取りではありません!
お二方を含め、安全を担保できる方をご指名ください」
しまったなぁ……生徒会に聞かれてたか。
奴らは基本的に皆高等部だし、ボクらの次の授業がある教室はすぐそこ。
そして初等部向け経営戦略科の講義。来るはずないと、高をくくりすぎたか……。
そうでなけりゃあ、管に撒いてうやむやにもできたんだが。
こいつらに正式なものと認められたなら、外野からは止められない。
その前に、無理やりにでも二人を止めるんだったか。失策だ。
めんどくさいんだよねこの学園の決闘……。
貴族文化として、そういうものはどこにでもあるけど。
精霊ウィスプでの契約まで持ち出すから、ここのはたちが悪い。
しかも、普通は貴族と平民でなんて決闘しないんだけどさ。
ここは平等を謡ってるから、平気でそういうことやりだすんだよね……。
ああ、いやだいやだ。
しょうがねぇなぁ。
「スノー、ボクらでやるから。
ストック、クエル、シフォリア。いいね?」
四人が頷く。
さすがに王太子は巻き込めない。こちらで片をつけよう。
そしてボク、ストック、クエル、シフォリアが人をかき分け、前に出た。
「リィンジア、ウィスタリア」
「ッ!!」「いいタイミングね。ハイディ。聞いてた?」
「ええ。ご指名は任せます」
「ではストック。お願いできる?」
「引き受けよう」
「あとは……そちらの先輩。よろしければお名前を」
「いいですよ。僕はクエルです」
リィンジア、素早い。
……先取られちゃったから、あと二人しか残ってないし。
そもウィスタリアは入学二日目の平民で、まだ友達もいないわけで。
すげー目つきでボクを睨んでから。
「お願い、します。ハイディ」
「いいよ」
「えっと」
「おっけー。私はシフォリアね」
「結構!では昼に介添え人を交えての宣誓を、生徒会室で行います。
決闘は放課後、魔道具棟向こうの決闘場を使用します。
それまでの私闘は厳禁!両者控えるように。
では、私はこれにて失礼」
礼をし、コール・ゴング……さんが立ち去る。
確か王国の子爵令息だったかな?
ん?何か今、小さく笑い声のようなのが……。
振り向くと、人だかりの向こうに。
金髪がちらりと見えた。
…………そういうことか。
◇ ◇ ◇
生徒会室は魔法棟の二階にあり。
そこで決闘内容の宣誓を行った。
まず基本的なルールの確認。
そして改めて、互いに賭けるものを述べ。
その内容で作られた契約書に、記名する。
ここで宣誓したものは、あとで何としても取り立てられる。
介添え人がまず働きかけ、ダメなら契約書が使われ、精霊ウィスプが介在する。
ボクからは一点だけ、そっと契約書の間違いを指摘し。
修正された上で、両者内容の合意に至った。
リィンジアは、勝てばウィスタリアから自身のことを聞きだせる。
つまり、負けたウィスタリアはあらゆる手段で、その情報を吐かせられる。
ウィスプが出て来た場合は、彼女の記憶情報が書面に抜き取られるだろう。
確か、あまり良い気分のものではなかったはずだ。
ウィスタリアは、負ければリィンジアに近づけなくなる。
その範囲も、現実的なものが前例から適用された。
負けなければ逆に、リィンジアは彼女の接近を拒めなくなる。
これは遵守する気がないとみなされたら、ウィスプが強制力を働かせるだろうな。
物理的に、厳密に、距離を調整させられる。
こんなの、よくやるよほんとに……。
そこから、介添え人が両者の説得を試みる。
ほんとに決闘する?大丈夫?って確認するわけだ。
決闘した結果で起こりうること説明し、意思を確かめる。
いい勢いで説得は突っぱねられ。
二人は契約書に自分の名を記した。
正直、心底めんどくさい。
ボクは前の時間、この決闘で「逃げられない」状況に追い込まれたことがあり。
いい思い出がまったくない。
勝っても何の旨味もないのに、真剣にやらないとどこで罠に落ちるかわからない。
これがなけりゃあ、学園は割と楽しいところだったんだけどなぁ。
ストックがいなかったら、途中で来るのやめてたかもしれん。
そうしてウィスタリアとは別れ。
ボクとシフォリアは昼遅めに研究室に戻った。
幸いにもお昼は、メリアやマドカ、アリサが用意してくれていた。
そしてメリアとダリア、ギンナに笑われた。ダリアは爆笑だ。
おのれ。
次投稿をもって、本話は完了です。




