7-4.同。~ヒロインvs悪役令嬢。決闘勃発~
~~~~むしろエイミーはまだ告られてはないんか?それはそれで僥倖だな。
もちろん、普通はそんなこと簡単に起こりっこないんだけど。
年十回ペースで襲撃されたら、ボクとしてはそう判断せざるを得ない。
自衛のためにも、ボクは対人最接近戦をいやというほど鍛えた。
組み伏せられて、仮に手足がなくて、おまけに自分は意識がなくても脱出・生存できるくらいに磨いた。
それ以上の状況だと、もう損壊されすぎて死んでるだろうから、想定はしていない。
しかしほんと……あんな好かれる要素のない女だった、ボクですらそうだったんだ。
世の美人さん方は、本当に危ない目に遭われてるんじゃないかなぁ。
たまーにそれらしき現場に遭遇することもあって、さすがに助けるんだけど。
普通に逆恨みされるんだよね……場合によっては、両方から。
意味が分からない。明らかに強要のやばい現場だったのに。
「というわけで、エイミー先生は気を付けてね。
もうご飯食べられる?」
「うん。ちょっとモリモリ食べたい」
「ん。じゃあしっかり食ってけ。ボクらと一緒に出ようか」
「ありがとう、ハイディ」
さて、ではキッチンでもう一仕事だ。
エイミーがめっちゃ食べる気なら、気合いを入れなくては。
◇ ◇ ◇
その、ね?
ボクやっぱ呪われてない?
今朝の今で、修羅場に遭うとは思わなかったわ。
登園してみたら、リィンジアとウィスタリアはもう寮を出た後で。
追いかけるように、一つ目の講義の教室に向かったら……。
「わたくしに付きまとうんじゃありません!平民!」
廊下でめっちゃ騒ぎになってる。
遠巻きに結構人が見てるなぁ。
ボクらもある意味、そこに加わってしまったわけだが。
場合によっては止めに入らないといけないので、密かに袖を咥え、息をしておく。
ギリギリまで粘って一緒に登園してきたスノーも、隣で同じ体勢に入った。
クエルとシフォリアも教室の方向が一緒で、居合わせたわけだが。こっそり戦闘態勢をとっている。
ストックは静観の構えだが、動けるようにはしていてくれてるな。
エイミーもいるけど、後ろであわあわしてる。
ある意味一番危ないので、そこらへんにいてくれたほうがありがたい。
「っ。でも、私、心配で……」
「あなたに心配される謂れが、どこにあるのです!
わたくしはロイド公爵令嬢!リィンジアよ!」
「ですがっ。ずいぶん、お顔色が……」
「それは認めますが、平民に気遣われる謂れはないということです。
理解しなさい」
リィンジアが、縋るウィスタリアを振り払って廊下を歩いていく。
「ッ。同じ平民、でも。ハイディ、の言うことなら、聞くのに?」
俯くウィスタリアから出た、言葉。
リィンジアが足を止めた。
…………まって。そこでボクに飛び火させんのやめて?
「ハイディは己をかけて、わたくしに身の証を立てました。
信に値する人間です。
あなたのそれは、わたくしに自分の不安を押し付けているだけです」
ウィスタリアの肩がびくっとなって。
これは……危ない兆候な、気が。
まぁボクにとっては、彼女のご家族が無事だったことの方が大事だが。
素直によかった。
こっちの事情もあるけど……ちょっと君が戻ってきたことを、嬉しく感じてるよ。
「あなたという人は!いつもそうだ!
私というものがありながら。ありながら!」
なんか情念燃やしちゃって……いや宿業漏れてない?この子。
赤い光はその、衆目の前ではですね、大変まずいと思うのですが。
「何の話です。あなたが私の何を知ってるというんです!」
あれ。リィンジアが結構食い気味だ。
……ひょっとしてあれか?
この子、何の事情も知らされずに、魔都から聖国ロイド家に放り込まれたのか??
「なんでも知ってる!リィンジアのことなら!!」
「では答えなさい、平民!わたくしはどこの誰です!」
それ聞いちゃうのかー。
つい、スノーたちと顔を見合わせてしまった。
周りは意味の分からないリィンジアの言葉に、かなりざわついてる。
「………………ませ……」
「はっきり仰いなさい」
「言えません!それはっ」
何となくだが、その時。
ボクはリィンジアが、静かにブチ切れたのが分かった。
「ならば決闘です、平民」
あっ。
「けっとう……どうして」
「私が勝ったら、あなたの知るわたくしのことを教えなさい」
「…………私が受ける理由が、ありません」
「あら。わたくしにそれだけ執着するのに、何の理由もないというの?」
すげー挑発しだしたぞこの令嬢。
「わたくしに、薄汚い劣情でも催してるんでしょう?
ああ、だからそれを理由になんて決闘できないのね?
その汚れた感情で!わたくしに付きまとうな!!」
なんだこの煽り。君ほんとに12歳か?
ウィスタリアの目に、明らかに火がついた。
あーあー……滅茶苦茶だよこれ。
「……私の思いが汚れてなどいないと、決闘で証明いたします。
負ければ、お傍に寄るのを控えます」
「そう。何を望むの?」
「……私が負けなければ、あなたのそばにいることを、お認め頂きたい」
「いいでしょう」
「結構!その決闘は正式なものとしてッ!
王立魔導学園生徒会が預かりますッ!!」
誰や。
次の投稿に続きます。




