7-3.同。~学園の危険な恋愛相談~
~~~~ついに正式要請としてきたかー。二人は前から関わりあるし、本人たちはいいんだ。いいんだけどね??
確かに、二人の婚姻話が出たら、そら多少は厄介だ。
オリーブはただの平民だしね。
共和国に貴族制度はないから、身分差があるって話じゃないけどさ。
常任議員だからなぁ……結婚するってことになったら、普通に共和国に行くことになるぞ?
オリーブの父親の、カワさん……カワーク社の社長に、どう説明したらいいものやら。
「正直、親和性の高い組み合わせなんで、要警戒ですね。
オリーブのエイミーを見る視線は普通だったので、気質はストレートでしょう」
この子の豊満さは、男女問わず目が吸い寄せられる。
ストックを始めとした同性愛者は、遠慮がちに割と見てる。
女だから許されるもんじゃないぞおおん?と思うので、過ぎてると思ったら注意はしてる。
「それが何の安心材料にもならないのよねぇ。
リコって確か」
「はい。彼女はガチです。ボクが好みなんだそうですよ?」
「あら、良い趣味ね」
所長の趣味は産廃なので、ダンクしておくとして。
まぁ安心材料にならないのは、確かに。
ストレート……?ほんとにぃ?みたいなのが多すぎるしね、ここ。
片方が同性愛者というのは、ボクとストック、あとエイミーとマリエッタのとこだけだが。
でもパートナー以外には、まったく興味がないんだよ。
正直、こっちとしては、この兆候はありがたい。
「同性愛者が大量に入ってくるなら、まだ考えることもありますけど。
こういうケースが増える点については、別にいいのでは?」
というか、リコはむしろくっついた方が安全になるとすらいえる。
さすがにボクに手は出さんだろうが。
「どうして?」
「変に惚れた腫れたして人間関係がこじれない」
ビオラ様が、とても納得のいったお顔をされた。
「あー……。そうね。普通の環境だと、そこは大きく問題になる。
外で男に引っかかったりするくらいなら、いっそ組になってくれたほうがいいのね」
「前の時間、クレッセントでは大変でしたからね……」
「いきなり蒸発したりね。刃傷沙汰を持ち込んだり。
ああいうの疲れるのよね」
二人でつい、ため息をつく。
「ビオラ様たちの前の船は、そんなだったんですか……」
「どこもそんなで、それが普通よエイミー。
ここが非常に穏やかなの。
男性クルーたちもほぼお相手持ちで、仲睦まじいし。
ゴズロウさんとこ、今度三人目ですって」
「あれま。じゃあ備品周りは改めて点検しましょうか。
お祝いも出しましょう」
ゴズロウさんはうちの経理担当。ほかにも何人か手伝いがいるけど。
奥さん、お子さんも、パンドラに住んでもらってる。
クルーのお相手が、職員であることもないこともあるが。
いずれにせよ、特別何か事情がない限り、家族ごとここでお抱えだ。
部屋っていうか、家にできる空間余ってるしね。
なので最初は20人余りで発足した当船も、その三倍くらいに人数が膨れ上がってる。
四年で三倍だと、かなり少ない方ではあるけど。
「そう……ああ、言われて見ればそうかぁ。
学園も結構、そういうことあるし。
教職員もたまにあるし、学生ならもっとだわ」
エイミーが何かうんざりしている。
「皆、お相手探しが目的だったりするしね」
「私、恋愛相談持ちかけられることとかあるのよ……。
どうしろっていうの……」
「どうしろっていうことは、同性愛じゃないんだね?」
「そーなのよー!私に男女の機微なんてわからないのにっ」
それははよ結婚しない君も悪いんやで。
まぁエイミーの場合は、それ以前かもしれないけど。
「それなら、適切な相談先を紹介しろ」
「ハイディを紹介するけど、いいの?」
「なんでや」
大人しくビオラ様の膝でごろごろしていた、スノーが吹いた。
なぜそこに飛び火した。
「それこそハイディなら、『適切な相談先』に再分配するでしょう。
適任じゃないのあなた」
「ビオラ様……恋愛相談なんて9割地雷でしょうに。
だからエイミーに累が及ばないように、他所に押し付けろって言ってるのに。
うちに呼びこんでどうする」
「「「そうなの?」」」
なぜ三人で声が重なった。
「相談の半分は、口説くための言い訳。もう半分は真剣。
でも相談したってことは、その問題への関係の構築になる。
いざというとき宛てにされるし、場合によっては逆恨みされる。
エイミー、ほとんどは男性からの相談でしょ?」
「当たり……」
「その多くは、とても魅力的な君を、間近で鑑賞したいだけだよ。
一対一で会わないように。前も言わなかったっけ?」
「言われた。気を付けるわね」
この子は「両方大丈夫」寄りな同性愛者だ。ダリアに近い。
そのせいか、自分の感情や同性愛自体にはちゃんとした視点を持ってる。
ただ恋愛自体に聡いか?っていうとそうじゃない。
男性を一人振って、女性と結ばれた、くらいだからねぇ。
本人の性格もあってか、ちょっと警戒心は薄めだ。
「さすがハイディ。歴戦の兵は違うわね?」
「ビオラ様……逃げ回ってただけですから、ボクは」
「だから培われた教訓なんでしょ?」
「ええ。相談から告白は序の口です。
二人っきりの閉所だと、本当に危険ですよ。
常に退路は確保しておいたほうがいいし、人気の有無は大事です。
同席者がいると警戒されるので、伏兵を用意しておいたほうがいいですね」
「つわものだわ……」「つわものね……」「姉上ェ……」
「ちなみに、ただの相談の方がやばいです。
知らないところで痴情が縺れると、あとで刺しに来ますよ」
「「「うわぁ」」」
あまり思い出したくないが、朝食の場だし、これでも控えめに言ってるんだけどね?
次の投稿に続きます。




