7.1の月5の日。魔導学園。決闘、宣誓。
――――おい、それにボクを巻き込むな。巻き込むなったら。
6、7曜日が明けて、再び学園への登園の日。
今日も朝から忙しい。
日が昇る前から、ボクは動き回っている。
この休日の間に、クエルとシフォリアのことは、パンドラ内では共有を始めている。
ビオラ様とスノーがボクの実家やらと話し合った結果。
即OKとなったからだ。
決断早い……早くない?
なんでや……と思ったんだが。
王家精霊による祝福が、同時に複数になされていることは。
なんと過去に事例があるらしい。
一般の書には記されていないんだと。
王国は一時、半島中を支配下に置いていたこともある。
ゆえ、王家精霊との契約者が複数組存在し、それぞれ統治していたことがあるそうな。
現在は、独立した国々にそれぞれの地域を任せており。
王家精霊の住処たる王都が一つになったから、一組になってるだけ……なんだとか。
そういや王家精霊の情報は秘匿されてたしなぁ。
そりゃボクも知らんわけだ。調べても出てくるはずがない。
さすがに姉妹と思しき人間が選ばれた、というのは初みたいだけど。
これは逆説的に、選ばれたのだから姉妹ではない、という結論になったみたいだ。
とはいえ、二人とも来歴が不明な人間ではある。
だから王国の王家ではなく、旧王都の領主におさめるくらいがちょうどいいんだろうな。
次代の王家たる二人……スノーとビオラ様が即位し。
それから間をおいて、クエルとシフォリアが旧王都領主となる方針だそうだ。
結婚はいつしてもいいわけだが、下手に子どもが生まれてもよくないので。
いろいろ準備しつつ、様子を見るつもりだ。
できれば、父母の結婚よりは後にしてほしい。
どういう立場で君らを祝えばいいのか、さっぱりわからん。
今のままだと……職場の同僚か?
さて、そんなホットな話題でむしろ炎上しかかってるパンドラの朝。
食堂は相変わらず戦場の様相を呈しているが。
昨日から、戦士が二人増えている。
最近は食べ専を決め込んでいた、クエルとシフォリアの参戦だ。
クエルは元々、多少やってくれていた。
シフォリアはできるけど、「クエルに世話されたいから」大人しくしていたみたいだ。
今はたぶん……互いに何でも一緒にやりたいんだろう。
こういうとこは、ボクとストックの娘だな。
お相手と並び立ちたいのだ。
相手が素敵だと思うほどに、じっとしていられなくなる。
キッチンから食堂にお皿を持ってくと、何やらマドカが悶々としてる。
友達が急にやる気になったので、自分も!って気持ちなんだろうな。
まぁ、君やアリサだって手伝ってくれる方だしね。
できることは一通り教えてあるし。
だがダメ。
どのみち、そんな人数キッチンに立てません。
六人なら、一応ぎり行けるけど。今日は大人しくしてなさい。
「マドカ。君は勉強に集中。
あの二人はやることができたから、まぁ修行みたいなもんだよ」
ほら、あれだ。頭に花嫁ってつくやつ。
「ん……わかってるけど。その。
せめて」
めっさうずうずしてらっさる。
四年ですっかり、前向きで、積極性の高い子に育ったなぁ。
「休暇中の当番は、増やしてあげる。
それでどう?」
「ありがとうハイディ!」
「成績に依存して変動させるから、がんばれ」
「んぐ。がんばる」
いい子だ。
空いた皿を持って、キッチンに戻る。
学園考査以外も、習熟度の確認試験は存在する。
前後期一回ずつだ。それで講義修了単位がもらえるかどうかが決まる。
まぁだいたいの人間は、後期に学園考査も受けるけどね。成績優秀だと、単位はいくらか免除される。
そも1000点取れてればいつ卒業してもいいんだから、さもありなんだ。
というわけで、これで前期成績ががくっと逝くようなら、夏季休暇のマドカは勉強付けである。
ゆっくり勉強だけしてていい期間なんて貴重なんだから、ぜひ頑張っていただきたい。
学生なら勉強しなくちゃね。
ボクも仕事はするが、たっぷり学業を満喫するつもりだ。
単に卒業とかその後を鑑みれば、そりゃ講義受ける必要すらないけどね?
最先端の研究者たちが、生講義してくれるんだよ?そりゃ行くさ。質問もたっぷり携えて。
他の人の時間もあるから、あんまりしつこく聞いたりはしないけどね。
先の5曜日は、そういう楽しい時間があんまりとれなかったからなぁ。
今週から、楽しい楽しい学園ライフの本格始動だ。
野菜を切る速度だって、早くなろうってもんよ。
「お母さまの手が見えない……」
「私、まだ斬撃速度甘いわこれ……」
うっそやろ。君の方が万倍は早いだろうにシフォリア。
まぁたぶんこの子の場合は、素の速度が速いんじゃなくて、何らかの法則に依存したものなんだろうけど。
「そう思うなら手を動かしな。
自分の食べる分がなくなるよ?」
「「はいっ」」
いいお返事。朝から気合い十分だ。
ガッと切ったので、揚げやら盛り付けやらをストックに任せ。
次の皿を持って、食堂へ。
当分はキッチンは大丈夫だから、配膳し、片づけてっと。
「おはよぉ……」
おや、食堂に追加で誰かが入って……って彼女しかいないか。
次の投稿に続きます。
#本話は計6回(約12000字)の投稿です。




