6-5.同。~妹は剣を極め、恋に落ちた~
~~~~そんなにも美しいものが見れたんだね。ちょっとびっくりしたが、連れてってよかったよ。
「君に会うためじゃなかったけど、私も。それでいいや」
シフォリアが左手の指を、クエルの右手に絡めて行く。
その顔に浮かぶ微笑みが、とても穏やかで。
「この子、飢えて即身仏になったんだって。
私、適当にあのクソ神主斬ってただけなのに。
もう格が違うよほんと。尊敬しちゃう。
…………大好き」
短めの言葉に、シフォリアの思いがたくさん詰まってるのを感じる。
「クエルもそうだねぇ……優しいけど、自分の身を犠牲にする子だった。
自分がお姉ちゃんだからって。
私が、妹なんだって、譲らなかった、せいかもだけど」
この子らはお互いが合意の上で、クエルが姉、シフォリアが妹となっている。
おなかから出た順序なら、逆なんだけどねぇ。
その点は、この二人の未来でもそれぞれ変わらないみたいだね。
「でもこのクエル、ちょっと頼もしすぎる。
ほんとにお姉ちゃん……を通り越して。
もうお父さまみたい。
なんでもできて。とっても強くて。
私に会うために、死すら乗り越えて来てくれた人。
お姉ちゃんとは、ちょっといっしょにできないなぁ」
シフォリアが、泣いたように笑う。
この子にとっての「お父さま」――ストックは特別だ。
今ここにいるクエルは、そこに並ぶのか。
「だからもう、この人をお姉ちゃんだって思うのはやめにしたの。
お姉ちゃんは、死んじゃって。
私は――――このクエルと一緒に、生きていく」
力強い、寒気すらする……闘気を感じる。
「私が頑張らなきゃ。クエルは大丈夫なんだから。
私だって、クエルと一緒にいるためなら。
きっと……死だって乗り越えてみせる」
本当に、二人の言葉が……ボクの胸にとても刺さる。
ボクがストックに抱いていた、恐れと強い思い。
死んでほしくないという、当たり前で、胸を締め付ける気持ち。
同じだけど、ボクにはない言葉で、語られる二人の意思。
この子たちは、確かにボクの子だけど。
でもきっと。もう手が届かないくらい――高いところにいる。
美しい。
ボクは静かに、自分の倫理観をぽいすることを決めた。
そういうのはあれだ。
また腹を痛めてから、拾いなおして考えよう。
この子たちにそれを向けるのは、無粋ってもんだ。
「ん。わかった。ボクが背中を押したようなもんだ。
最後まで面倒みよう」
「「お母さま……」」
すごいほっとしてるし。
ちょっと不安だったのかね、さすがに。
「ストックは何かある?」
「いや。さすが我が妻となる女だ。今日も最高だ」
それは嬉しい一言なんだが……ちょっと言及しておかないとな。
「ああ、それなんだけど。
形だけじゃなくって、本格的にボクが旦那で、君が嫁になりそうだ」
「「「は?」」」
「ストップがかかった。
二人を認める以上、未来に戻られるわけにはいかない。
なので、最初の子はボクが産んじゃダメだ。
二人に兄弟がいないのははっきりしてるから、それで回避できる」
「あー……やっぱりそうすることになるか」
ストックとはだいぶ話し合ってるし、すぐ通じたようだ。
「え、どゆこと?」
「君らに、年下のお兄ちゃんかお姉ちゃんができるってことさ。
まだ何年も先だがね。
だがそうすれば君たちの方とは、未来が変わる」
「戻らなくて」「よくなる?」
「マドカとアリサがいて、呪いの子が存在する以上。
概ねそれで合ってるはずだ。
何年か様子を見つつ、指針として定める」
二人が互いを見て。
それから……おっと。めっちゃ抱き着かれた。
君らの方がでかいんだから、ちょっと同時はきっついわ。
でもいくら大きくなっても。
必ず、抱きしめてあげるからね。
ボクの愛しい娘たち。
正直めっちゃ複雑だけど。
ボクも君たちのこと、祝福するよ。
「この辺は、スノーやビオラ様が骨を折ってくれる。
その分は、お仕事で返すように」
「「……はい!」」
ん。良い子たちだ。
約束通り、いっぱい抱きしめてあげる。
ご清覧ありがとうございます!
評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。




