5-3.同。~地獄帰りの娘たち~
~~~~ネフティスの防護は魔導。奴らには効かない。切り札はあるが……。
『『は?』』
門……ではない。
はっきりと向こう側に、パンドラの内装らしきものが見える空間から。
ボクの娘が明るい声とともに、飛び込んできた。
『シフォリア!クエルも!?』
シフォリアに続いて、クエルも出て来た。
二人とも、制服じゃなくて普段着てるような――ボクらと似たような服だけど。
ってそうじゃなくって!
シフォリアが出たところが、奴らに近すぎる!
ボクがスマッシュの構えをとる。
けど、結晶の一体の姿が霞んで――――
シフォリアに差し掛かったところで、粉々になった。
いつの間にか、彼女の右手には、一本の刀が。
確かマリエッタに打って貰っていた、雪白という一刀……。
今、どこから抜いた?
「――――明神払刀。不動剣」
もう一体、シフォリアに飛び掛かったやつも、バラバラになる。
……剣閃が、まったく知覚できない。
「――――菩薩掌」
いつの間にかいなくなってたクエルが、両の掌を二体の結晶にそれぞれ当てている。
こちらも、粉々になった。
魔素を乱しているわけじゃない……ストックの極震発勁とも違う。
彼女の武の原理が、理解できない。
じゃなくって、粉々はまずかろう!?
『ちょ、二人とも!こいつら人を……』
「緑のは人食べてないから、大丈夫ですよお母さま」
そうかよ!?
『そういう情報は共有しろあほっ子!
紫藤に、輝け!!』
残り一体を、駆け寄って点き回し、倒す。
……魔素はあるが、確かに手応えはなかった。
魔物を素体に使っているのだろうに、何も残らず砕け散った。
…………残敵は、ないな。鎧の知覚にも引っかからない。
「うわはっや。見えない……」
「今何で砕けたの?わからないんですけど……」
腕輪を回し、変身を解く。
「ボクの方がドン引きじゃ。
力隠してたのは知ってたけど、完全に極まってるじゃねーか」
「「えへへへ……」」
喜ぶなし褒めてねぇ。褒めてるけど。
ストックも変身を解き、ネフティスを連結してくれている。
「ハイディ。まずはこの人たちを」
「うん。乗せて運ぼう。それから――」
空間を裂いて、帰ろうとしている二人を向いて。
「クエル、シフォリア。今日は家族四人でドライブだ。
いいね?」
「「…………はい」」
◇ ◇ ◇
入り口に戻ると、通報が行ったのか国防やギルドの人がいた。
その人たちに六人を引き渡し、話を聞く必要があるならパンドラへ、と案内し。
ご納得いただいたので、ボクら四人はドライブに出た。
外にいた冒険者の人には、めっちゃお礼言われたけど……。
正直、痛い思いさせちゃったので、バツが悪い。
スマッシュからのブレイク……どうにかスムーズにならないかな。
今後も同じことがあるなら、何か手段を講じておいた方がいい。
それはそれとして、この件については。
こちら側でも、ちゃんと情報共有しといた上で。
国防省や冒険者ギルドとは、後日スノーやビオラ様経由でお話だな。
というわけで四人、今はコンクパールを登っている。
山道だが、特に揺れはない。
「お母さまの運転、ほんと静かですね……」
「そ?君も結構うまかったじゃないか。クエル」
「そーそー。私なんてガッタガタだったし」
「シフォリアのは、そうはならんだろって運転だったな……。
私が最初に動かしたときだって、そうではなかったぞ」
ストックの最初、は前の時間の時だな。
ボクが石になった後、ボクが残した神器車で旅したそうだから。
…………山の中腹くらいに停めたはずだけど、初心者がよくあそこから降りれたな?
なお、娘たちは昨年15になった折、成人契約をしたのでそのときに運転させてみた。
車両契約もしてね。
ネフティスの後部を分離し、好きにやらせてみた。
シフォリアは確かに今は下手だけど、この子はアクロバット走行がうまくなる口だな。
癖がアっさん……ボクの運転の師匠に似てる。
クエルは慎重派。何度か事故ったら、マリエッタ並みにうまくはなると思う。
「お母さま、その……」
「ん」
「あいつらの位置は、僕がわかるんです。
地上に出たら、すぐに。
今まではそれで、倒していました」
「ダンジョンの中だとわからんと」
「はい、そこは……」
「私が、勘で」
シフォリアは見れば真実を見抜き、勘も鋭い。
「で。自分らの問題だと、周りには知らせてなかったと」
「えっとそこは……」
「スノー叔母様にお願いしてて。
私たちに、やらせてほしいって」
ふーん?
でもちょっと、大きく構え過ぎだな。
多少強大ではあろうけど、あの結晶体を全部この子らが引き受ける理由は、なかろうに。
スノーのことだ。
言っても聞かないと思って、ある程度任せていたのかな?
ま。君らにも、きっと意地があるんだろうな。
次の投稿に続きます。




