4-3.同。~神器学。我が研究の粋~
~~~~なんか気づいたら、皆が雑に身内にされている。言っておくが、ボクの発案ではない。
それにしても、いろいろ無茶してるとは思うんだが。
王家が後見について、全力で支援しているためか、よく考えるとおかしいことが次々実行されている。
シルバは復興したてで人材不足ゆえ、こういう滅茶苦茶な芸当で人材を流されているのだ。
そうしてでも復興したい、という王国の意図もわかる。
精霊の力と総神器構造の豊富な魔力で、旧シルバ領とは比較にならない鉱山資源が出るし。
いやほんと。なぜ鉱物が出るんだよ。神器船から。
いろんな思惑が絡んで、急速に復興しつつあるシルバ領とシルバ家。
幾人かは、本家に養子入りしてはいるものの、いずれは分家を作って出ることになる。
おそらく、ボクとストックが結婚し、次代の話になり始めたら。
なお、王国の精霊とは契約に魔力がいるし、精霊と契約できないと分家は作れないのだが。
アウラは特殊な精霊ゆえ、魔力なしのエイミーでも契約が可能だ。
ボクとストック以外については、その下が……まだ確認はしてないものの、たぶん難しいが。
アウラと契約できそうな子を養子に迎え、盛り立てて行くことになるだろう。
講師になってる人間がやたら多いのも、その辺に理由がある。
「一応ボクからも言っておくけど、さっきのエイミーもシルバ姓だし。
パンドラの所長もシルバだから」
「え。じゃあその所長さんが、シルバ公爵なんですか?」
「違うよオリーブ。シルバ公爵は理由があって公には出ていない。
だから内緒。ボクも答えられない」
「はぇ~……」
なんか感心された。された?
ま、未成年だからね。ちょっと言えないのですよ。
お、講堂の扉を潜って、ホワイトブロンドの女性が入ってきた。
「さ、もう一人のシルバが来たから、席に着こうか。
今日は挨拶と触りくらいだろうけど、疑問があったら書いておくといい」
皆、慌てて席に戻った。
ボクもストックと一緒に、最後列に並んで座る。
ダリアは面倒を見るといった手前か、二人の近く――と見せかけて、講壇が見やすい位置へ。
マリー鑑賞して過ごす気だな、これは。
リィンジアは隅っこ。少し空けてウィスタリア。
ボクらの前には、固まって友達やらが七人ほど。
……多い。多くない?
「みんなはど?寝不足だったりしない?」
「平気よ」「実はちょっと」「……まぁ大丈夫だ」
順にギンナ、スノー、メリア。
おいそこの妹。
っていうかよく考えるとギンナとメリアも答えおかしいだろ?
「「「「そんなことよりおなかすいた」」」」
高等部の欠食児童どもはもっとおかしいだろ??
確かに娘たちと友達のマドカ、アリサはまぁ育ちざかりかもしれんけどさ。
今朝君らの腹に消えた大量の野菜や炭水化物はどこいったの??
豆と卵と肉も食ってったろ?どうなってるの???
「間食用のお弁当は、この後にしなさい。
次は購買が開くから駆け込みなさい。
昼は弁当にし、午後は食堂に行くように」
「「「「はーい」」」」
素直なのは大変よろしい。
弁当を二個持たせておいてよかった。
なお初等部通いの時を思うと、それではまったく足りない。
「初等部児のおかんみが強いな……」「強いわね」「姉上だし」
「君らは後で研究室来ても、間食は渡さんでいいんだな?」
「「「ごめんなさい」」」
素直で結構。
結局、あんま食べないのって家ではダリアとマリーくらいか?
あとミスティか。彼女は甘味以外は普通だ。
なぜパンドラには大食乙女ばかり集まるのか。これがわからない。
各人のカロリーがどこに消費されてるのかは、もっとわからない。
さて。
そろそろ準備もできたようだし。
我が助教授の講義、拝聴するとしよう。
『みなさん、初めまして。
別の講義で会ったことのある人たちは、おはようございます』
マリーはすでに、学園で教師経験がある。
ただし、この講義は新しく設けられたものなので、また別だ。
『今年から開講した、神器学講義を担当する、マリー・シルバです』
神器学。
ボクの作った学問だ。
もう少し前に成立はしているんだが、今年度から学園のカリキュラムに組み込まれた。
『神器はいまだ学問足りえない。ゆえ、神器を科学することで学問とした。
それがシルバ公爵――本学永世教授の神器学です。
ご本人は、ゆえあって公式の場に立てません。
私は研究チームの一員として、神器学を広める立場にあります』
そうそう。とったんだよ永世教授。
前の時間では、二回しかトライできなかったからね。
学園考査は、20歳以下なら受講料を払って誰でも受けられる。
試験を受け、三年連続で1950点を取得できれば、晴れて永世教授の座を得られる。
ずるなんてしてないよ?前の時間では、その時期の試験は受けてないしね。
ただ、学園と連携している最新の研究施設にいれば。
勉強なんてし放題だ。前だって二回はとってるし、楽勝だよ。
ボクは見聞きしたことは、忘れないからね。
というか、とらないと神器学立ち上げられなかったからなぁ。
論文を出すついでにとった。
とったときは、内でも外でもちょっとした騒ぎになった。
先を越されたと、ベルねぇやマリー、ついでにエイミーはしばらく落ち込んでいた。
ダリアは爆笑していて、ストックはすっごいドヤ顔だった。二人は前の時から知ってるしね。
その上で、みんなでお祝いしてくれた。ちょっと嬉しかった。
外向けについては、シルバ公爵の事情と一緒で、内緒だ。
学園長とかにはもちろん、話は通ってる。
ただ、神器学教師はマリーに務めてもらうことになり。
代わりといってはなんだが、研究スタッフの一員だった彼女は、晴れて学園助教授になった。
おかげでダリアとも結婚できたわけで。
そもそも、ボクの永世教授取得の理由の、半分はそのためだ。
でも悶々とするものがあるのか。マリーは酒を飲むと、この件で時々絡んでくる。
君、酔わんやろが。
「どんな方なのかしら、シルバ公爵」
ちょっと呟きが聞こえたけど。
ごめんねリィンジア。こんなちんちくりんです。
次の投稿に続きます。




