4.1の月2の日。魔導学園。再会と、神器学。
――――昨日おらんかったやろ君たち。どこにおったし。
ねっむ。
ボクは睡眠はコントロールできるが。
ちょっと昨夜は刺激が大きかった。
ストックとイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャして。
大いにストック分を補給してから、ひと眠り。
明るくなる前に起きて、ルビィ邸を出て。
そのまま国境を抜けて、荒野へ。パンドラへ戻った。
寝坊助どもを叩き起こしながら、朝食を食わせ。
終わったらストックと二人、支度して転送。学園へ。
学園が始まるから、しばらく仕事は控えめにできるようにしたが。
用事自体は結構まだあるなぁ。
まぁ今日は授業+αくらいか?
「大丈夫か?」
隣のストックがちょっと心配そ……じゃない。こいつも眠そうだ。
キリッとしてるけど、目が揺れてる。
「君と同じくらい」
「なら今日は行けそうだな。
アウラ寮にも寄るのか?」
「ん。経営戦略科の二人は回収しないと。
他の子は大丈夫だけどね」
「ああそう……もう出てきているな?」
アウラ初等部寮の表まで回ってきたところで。
寮の外に、リィンジアと、ウィスタリアがいる。
落ち着かないリィンジアをウィスタリアが宥め、怒られているようだ。
「二人とも、おはようございます」
「おはよう。大丈夫ですか?リィンジアさ……おっと」
なんかダッシュで詰められた。
「あなたは、何か、何かご存知では……!!」
すがるような、目。
……転送路経由で、第一報が届いたな?
ボクが何か知っているわけは、ないんだが。普通は。
ただこの子は、どうしていいかわからないだけなんだろう。
そっと、肩に手を置いて。
「ボクが、君のご家族は無事だって言ったら、信じる?」
「そ、それは……」
「じゃあ、無事だったらボクを信じて。
何かあったら恨むといい」
その赤い目を見て、言う。
リィンジアが少し気圧されたように引き……そして口元を引き絞った。
「そうさせて、いただきます」
そして一人、つかつかと校舎に向かっていく。
「あ、リィンジア様!?」
ウィスタリアが慌てて駆けだそうとして、ストックに一礼。
そして向かうが……ついでにボクを睨んでくこたぁないんじゃね?
「めんどくさい。追いかけよう」
「そうするか」
昨日と同じ講堂に来た。
今日の最初の一講義目は、全生徒向けのものだ。
初等部高等部、科を問わず受けられる――注目の授業。
前の方の席は埋まってるし……と思ったら。
後ろの方で、我ら経営戦略組が固まっていた。
あれ?なんでエイミーまでいるんだろ。
「みなさんおはようございます。
エイミー講師は、ご自分の講義があるのでは?」
「だから今のうちに来たのよ。
ちょっと紹介したい子がいて」
エイミーが二人ほど、連れている。
お、い……知り合いだぞ。
そういやエイミーには、紹介したこたぁねぇか。
「二人とも魔道具科の子なんだけど。
そういえばさっき聞いた話だと、こっちの子は知ってるわよね?」
「お久しぶりです、ハイディさん!」
ああ、覚えているとも。
小型神器船エルピスを一緒に作ってくれた、王国西端シャドウの街のカワーク社。
そこの社長の娘さんだ。
「覚えてるよ、コワク」
「あ、オリーブって呼んでください!」
どういうこった。
エイミーを見ると、片目をつぶられた。
尋問はまたにするか。
「わかったよ、オリーブ。よろしく」
コワク・カワーク……オリーブはボクと同い年だ。
髪は緑で、赤い目。ボクより体格いい。ストックよりは小さいくらい。
「で。この子はハイニ「リコです」ああ、はい。
リコ。…………あれ?もしかして、知り合い?」
「そうだよ。今度説明する」
リコは、同い年。今はボクと背丈は同じくらい。もう少し女性らしい体型をしてる。
黒く少し波掛かった髪は相変わらず。ただ前よりちょっと短くしている。
黒目に赤が差してるのも同じ。
そして……ほんの少し、手首に緑の結晶が見える。
そう、こやつは……共和国常任議員にして、忍一門・箒衆の頭、ハイニル・ロール=リコ。
前の時間で、船を降りた後のボクの手足となってくれた子だ。
今生で再会し、ある縁からよく仕事を依頼していたが。
なぜここにいる。常任議員の身分はどうした。
「で。エイミー先生。
わざわざボクに紹介した理由はなんだね?」
「そのぉ。ちょっと気にかけてあげてほしくて」
「はぁ」
気のない返事をすると、エイミーはずずずいっと間合いを詰めて来た。
ちょっと柔らかいの当たるから、もう一歩下がろう元皇女。
マリエッタに言いつけんぞ。
「コワク……オリーブは知ってるでしょうけど、過魔力化症で目が離せない。
リコはドーンの巫女を目指してたんだけど、多発魔結化症なの。
注意してみてあげて」
そういう触れ込みなのかよ。
なんだその設定。
次の投稿に続きます。
#本話は計5回(約10000字)の投稿です。




