3-4.同。~それは遊戯を続けるための、布石~
~~~~自分がゲームを降りられたと思ったら、別のやつが始めやがった。わけがわからねぇ。
ウィスタリアと、リィンジア。
彼女たちは、魔都の別々の街で最初に確認されている。
リィンジアはすぐ、聖国のロイド公爵家に養子に出された。
ウィスタリアはその後も魔都に残り、今は神器船クレッセントの所属となっている。
余談だが、クレッセントは二年ほど前に作られ、魔境航行を始めたらしい。
この動きも、追跡している。今は帝国東部寄りをうろうろしているはずだ。
構成員は、魔都の神殿由来の人間が多いそう。
もちろん魔境航行をしている以上、結晶をもった神職がいる。
旧世代神器船だから、最低でもプリースト相当……おそらくは神主・東宮が。
ボクらにとっては敵に違いないんだが、今のところ破壊活動をしているわけではないので、監視しかできていない。
なお、マドカやアリサがいた船は、これとは別だ。
そっちも調べはついているが、クレッセントの別働隊と考えてよさそうだ。
他に、旧世代の聖域をいくつか所有していることも調べがついている。
運営の資金は……聖国と帝国から流れてるようだ。
そこまでは、もうわかっている。
話を二人についてに戻すが。
リィンジアもウィスタリアも、当然だが年がおかしい。
彼女たちが確認されたのは3年ほど前だ。だが二人は今、12歳だろう。
これはマドカやアリサのような、色付き結晶に魂が受肉したケースだと、ボクらは判断した。
しかもそれは偶然ではなく。
我らが敵、神主・東宮――『揺り籠から墓場まで3』のプレイヤーの分身役の仕業の可能性が高い、と。
結晶を操るのは奴の技らしいからね。
ま、来歴が変な二人がいるってこと以外は、証拠も特にない。
ストックがボクの後に見た女――ウィスタリアが、今学園にいる子と同じという保証はない。
でも彼女は、境遇にそぐわぬ礼を見せた。
自分で語った身の上もおかしかった。
あれは最初のゲームにおけるウィスタリアのそれ、じゃないのかな。
ゲームでは詳しく語られてないところもあるけど、演説した内容自体は一緒だ。
彼女こそが、その元祖たる存在。
始まりのウィスタリア。
そうでない、という反証は今のところ、ない。
その前提で、動いておくほうがいいだろう。
で、その辺を考えるとだね。
リィンジアだって近い存在じゃないの?という気がするのさ。
「話を戻すが。
聖女ウィスタリアと、聖女リィンジアがいたんじゃないか?
聖教が差しているのは、一応両国のものともウィスタリアだが。
聖国が真に信仰しているのは、リィンジアの方、とか」
「リィンジアが、呪いの徒ということか?」
「それなら辻褄くらいは合うかな?ってくらいだけどね」
「勘、か」
「勘だよ」
ちょっと顔を見合わせて。
にやりとする。
「ま、それがわかったからって、どうってこともないけどね」
「あー……そう、か?そうか」
東宮の狙いに察しがついた、くらいだ。
あの二人が出て来た以上、ゲームに近い未来に戻すことを、奴らは諦めていない。
そのために何をするかも、見当がついている。
まぁそいつについては、奴が結晶の力を扱うとわかった時点で。
すでに対策を始め、もう出来ている。何の問題もない。
「そうだよ。ウィスタリアもリィンジアも。
今日会ったばかりの学友だ。
それ以上の入れ込みは、今の時点でする気もない」
「その点については同感だな」
おや、何かあっさりした情緒だな。
「ふーん?」
「……なんだ」
「いや、もちょっとは執着があるのかな?と思ってたからさ。
そんなに違うんか、ボクと彼女は」
ストックはちょっとむっとしかけて。
それ以上の感情が、その下から出てきたようで。
愛おしげにボクを見た。
「何もかも違う。
はっきりと挙げるなら――あれは普通の女だ」
まぁ言われて見れば、そうかなぁ?
こう、いろいろと複雑な執着がありそうだったけど。
それは普通の感情だ。いかれちゃいない。
ボクみたいな、とんがった変態とは違うね。
「はぁ。それはダメなんか」
「お前という、私の閃光と比較しろと?
無茶を言うな」
そしてストックは変態が大好きと。
「ハイディこそ、リィンジアには何か感じたか?」
「んー?悪役令嬢って、ほんとはああいうのなんかなー?って」
正直ちょっと初々しいなと思いました。
こう、本人が悪ぶっているというか、なんというか。
ありゃちょい悪くらいだけど、ああいうのが普通っぽいと思う。
ストックのそれは……違うよね。
いい人が、悪「役」を覚悟キメて演じてた感じ。
最高にかっこよくて。
何としても、助けたかった。
「そっちの方がいいのか?」
「ボクはストック以外はやだよ」
「ふふ。そうでなくては」
次投稿をもって、本話は完了です。




