2-3.同。~聖なる呪いとなるものの~
~~~~もはや諦めた。デートは邪魔されるもの。邪魔をぶっ飛ばして楽しむものだ。
四年前。
連邦南端ミマスの街で襲って来た、魔道具を使った連中がいた。
あれと同じものを使用しているのだろう。魔力を感じる。
ただこう……なんだ?あの顔を覆う妙な布。
ミマスの時の連中とは、また違う?
それに……妙に、強いと感じる。
人のそれじゃない。どちらかというと、魔物に近い。
人型の魔物。
覚えは……まさかあれ、か?
いつか、キース宰相に説明した、イミテイションエイプ。
それが呪いで、人を魔物に変える。
おいおい……それが数十人?街中に?
連中、明らかにボクを狙ってる。
ならば。
不審に思われないよう、ゆっくりと北門に向かっていく。
奴らもついてくる……気取られては、いないな。
街中で暴れられたら、とんでもない被害が出る。
門から出て逃げ、追って来たところを倒す。
それしかない。
大丈夫。
備えは、万端だ。
外壁の門は街に入る方は混んでいるが、出る方は昼時ともなれば落ち着いたものだ。
朝一と、夕暮れ時が混むんだったかな?
兵士の方にご挨拶し、そのまま外へ。
外壁門外の入場待機列を見ながら、街道を歩いていく。
密かに、左手の腕輪を回しておき。
列の最後尾が遠くなってきたところで。
袖を咥え。深く息をし。
雷光をまとって、一気に駆けだした。
右手向こうに、小高い丘が見える。
まずそこを飛び越え、向こうで準備。
片をつける!
って一人追いついてきたぞはっや!?
やっぱ人間の速度じゃない!
かなり強い魔物と同等だ!!
左手からもう、一人追いついて、迫ってくる。
そいつが……掬い上げるように腕を振るってきた。
この動き、ボクを掴んで捕える気か!
ここ、は!
「ぎゃんっ」
手足を掴まれないようにしつつ、腹で甘んじて腕を受ける。
痛いめっちゃいたい!だがただではやられんぞ!!
勢いにのって自分を吹っ飛ばしつつ――雷光をそいつの腕に流す。
雷獣套路、要訣四。跳び捌きの型だ!ちょっとは効いたろう!?
錐もみしながら飛び、迫る丘に受け身をとりつつ激突。
幾度か地面を跳ねながら、向こう側へ。
奴らの視線から、一瞬外れた隙をついて――
「『涅槃の彼方より、来たれ』!!」
中空にまだらの空間が現れる。
中から中型の神器車――間に節がある長いクルマ――が飛び出してきた。
装甲がすべて展開され、濃い……蒼いボディカラーの魔力流を纏っている。
さっと運転席に乗り込み、ロック。
そして早速だが、飛ばすぜ!
「っし、まずは振り切る!」
こいつはセブンドア、ホーネットタイプという神器車だ。
くっそたっかいんだけど、おねだりして買ってもらった。ストックに。えへへへ。
正確には、材料を買ってもらって、しかも工材作ってもらって、自分で製作したんだけどね。
つまり!
思いっきりアクセルを踏み込む。
それから左手を……浮かび上がっている球体から出ている、シフトレバーに添える。
アクセルをふっと緩め。レバーを、右斜め前、水平まで倒す。
溜まり込んだ魔力流が一気に噴射され、青い神器車が残光を残して走り去った。
車体に取り付こうとしていたやつらが引き離され、目標を見失う。
ふふ。新機能ももりもりってことさ。
こいつはロケットスタートに魔導を乗せた――言わば閃光の先駆け。
ボクの必殺技、『紫藤に 輝け 』を自己解析。
これを再現する魔導を編み込んだ……光速軌道だ。
そう、完全な光速移動。
このサイズの物体がそんな移動をしたら、周りがとんでもないことになるが。
魔素や魔導のふわっと原理で解決している。
奴らの方へ車体を回して、向き直り。
シフトレバーをニュートラルに戻し、アクセル。
吹かしてはレバーを横に回し。数度それを繰り返す。
そうするうちに、魔力流が青から……赤へと変わっていく。
フラッシュスタートは、呪装火砲の起動キー付きだ。
手間が減り、素早く対応できるようになっている。
あちらの一人が気づいたようだ。
向こうは豆粒みたいに見える距離だが。
この新しい愛車なら……こんな間合いなど、一瞬だ。
さぁ。ここからは、ゴールまでノンストップだ。
新たな神器戦車の戦いを、見せてやろう!
「――――いくぞブルービー・ネモフィラ、閃光となれ!!」
次の投稿に続きます。




