1-3.同。~懐かしき哉、学び舎~
~~~~リィンジアがほほえましすぎる。ストックとはえらい違いだ。ボクの好みではないけど。
「皆様、時間です。講堂にご案内いたしますので」
ストックが割って入ってきた。
「失礼いたしました、ストック様。
ウィスタリア。式の挨拶は大丈夫?」
「は、はい!ばっちりです!」
胸を張り、手で叩いた。
内ポケットに原稿入れてるとか、かな?
「なぜこの子が!?」
「貴族がやると、そこに学園が肩入れしていると角が立つのです。
なので、毎年平民の中の優秀者に打診が行きます」
ストックが解説してくれた。
リィンジアがウィスタリアを睨んでるけど、ルールだから諦めろ。
やっぱり正直帰りたい。
いや、この全方位噛みつき気味なお嬢様は別にいい。
むしろほほえましい。
問題はまぁ……お察しの通り、この二人の来歴とか、諸々だ。
事前に聞いていたよりは、穏やかなスタートになったけど。
今年は荒れるのかなぁ。やだなぁ。
◇ ◇ ◇
クストの根を倒し、研究所パンドラが正式に発足し、四年余り。
その間もいろいろあった。
そうして今年、この年の初め。ボクら最年少組が、王立魔導学園初等部入学と相成った。
ボクも今年の6の月で、ようやく13歳になる。
時間を戻る前、22まで生きて。
そこから4つに戻り、はや……8年近くか。
立派な三十路ってやつだな。
前の時は、学園は高等部から入った。16になる歳からだ。
初等部の歳の頃はいろいろ忙しかったし、用もなかったし。
学園来るどころじゃなかったからなぁ。
今に関しては……あんまり入る必要性はないんだけど。
まぁ他の子は普通に通う気だったので、ちょっと学生するか、くらいの気分で来た。
のんびり勉強できるなら、ボクとしてはありがたい話だ。
今日はその入学式だ。式典、各種説明、入寮者にはさらにいろいろとあって。
講義自体は明日から。当面は、科ごとに決まったカリキュラムを受ける。
夏季休暇後の後期からは、そこは自由になるそうな。初等部だからか、丁寧だな。
学科は、魔法科、法術科、魔術科、魔道具科……そしてボクらの入った、経営戦略科の五つ。
昔は普通科って言ったらしいよ?何が普通なの?っていちゃもんついて、変わったとか。
確かに経営や戦略を学べる講義ががっつりあるが、それを科の名前にするもんかねぇ。
式典は、魔法棟三階の講堂で、一時間ほど行う。
訓示とか挨拶とか、いろいろ。
内容はともかく、こういう儀礼は大事だ。
学園は四つの学科棟で構成されている。
それぞれ四階建ての校舎で、それが上から見るとひし形になる形で建っている。
四校舎の真ん中は中庭。ここは広いサロンとして使われている。
サロンは、寮や学科を跨いだ交流に、よく使われている。
学科別はそれぞれの学科棟、寮別はそれぞれの寮の中にも交流できるとこがあるからね。
魔法棟は南東側。北東が法術棟、北西が魔道具棟、南西が魔術棟だ。
また、寮がその周りを囲むように8種16棟建っている。
この国の領……ファイア領とか、モンストン領を模した形だ。
二棟ずつ、初等部用と高等部用に分かれていて、高さは四階建て。
一階が共用設備で、二階から三階が学年別の部屋となっている。
ボクが今朝、歩きながら左手に見ていた建物がそうだ。高等部棟の方だね。
最初がアウラ寮。領土じゃなくて、精霊の名前がついてる。
次がウンディーネ寮で、その向こうにはシャドウ寮。
ウンディーネとシャドウの間に、学園の門がある。
なお、アウラ寮とサンドマン寮の間から抜けた西には、転送設備がある。
中型以上の神器船との転送路が、大量に入ってる施設だ。ボクが今朝出てきたとこ。
転送路自体も多いが、一つ一つの行き先を切り替えたりもするため、管理が大変そうだ。
神器船パンドラからの通いはおかげで楽ちん……だが。
三階への階段、結構だるいな……。
学園生活じゃ結構上下階移動はするんだが、毎回これが面倒でなぁ。
「こちらです」
講堂自体は、階段を上がり切ってわりとすぐのところにある。
開けっ放しの扉から、リィンジア、ウィスタリア、そしてボクの順で入る。
案内人のストックは一番最後。
講堂はすり鉢……扇状になっていて、講壇が底。
階段状に据え付けの椅子と机が並んでいる。
ゲームの記憶というか、その元の「地球」にも、似たようなものがあるなぁ。
大学っつーとこでよく採用されてるらしいやつ。
しかし広い。
1000人くらいは入れるんじゃないかな?ここ。
一応、全学生が入れる部屋なんだっけ。
声が端まで届かないから、講壇に魔道具の収音機器置かれてるし。マイクってやつ。
プロジェクターっていえばいいのかな?天井から薄い画面がいくつか下がってる。
画面の脇についてるのは、たぶん拡声器だろうなぁ。
ここはゲーム『揺り籠から墓場まで』の世界らしいのだが。
ファンタジーRPGソーシャル乙女ゲームという分野を、たまに無視したものがあるよね。
こういうものもそうだけどさ。魔導があるからって、何してもいいってもんじゃねぇだろ。
次の投稿に続きます。




