D-4.同。~ちょっと真面目な学園よもやま話~
~~~~正直なところ。ストックは嘘をつくのがとても下手だ。かわいい。
よし。
あまり先回りで世話は焼くべきではないから、触りだけにするか。
「あー。あそこ決闘制度があるの知ってる?
貴族文化としては普通にあるものだけどさ。
それが制度化されてるの」
「聞いたことあるよ。クエルは?」
「僕も一応。何がまずいんです?」
「あれね。結果が、精霊契約に基づいて強制されるんだ。
勝ってもいい気分のことなんて全然ないしさ」
「受けなければよいのでは??」
「公衆の面前で申し込まれて、かつそれを生徒会連中が聞いていた場合。
まず逃げられない。学園で居場所がなくなる」
「おぉもぅ……」
シフォリアがとても引いてる。
ほんと、あれが厄介なんだよねぇ。
ボクは別に負けたりゃしないんだけどさ。
勝った時の対処を考えないといけない。
大概は接近禁止だったけど、事情が複雑だとそれだけじゃどうにもならなくてなぁ。
「一人でいないこと。下手に手助けしたり立会人を引き受けないこと。
あとは、武力があることをあまり見せないことかな?
ボクの失敗から学ぶと、そうすればあまり吹っ掛けられないと思う」
「それでも『あまり』『思う』ですか……」
ボクは失敗しかしなかったので、残念ながら確実な手という保証はできんのだ。
「変な奴はいるし、そういうのに奇襲強襲はされるからね。
首を狙ってくるならまぁ、返り討ちにするだけなんだけどさ。
決闘申し込みはこう、殺気があるわけじゃないからわかり辛くてねぇ」
「お母さまには、受ける理由がそもそもないと……。
なのに向こうがやってくると……」
「勝ったらこう、いろいろ言うこと聞かせてやればいいんじゃないですか?」
「やだよ。関わりたくない。
ド平坦なボクに出合い頭告白即求婚、断ったら決闘だよ?
そういうのが……うん。年三人くらいのペースで来た。
他の理由での決闘奇襲も、まぁそれなりに」
「いやお母さまに惚れるのは普通だと思うけど……。
でもそのアプローチは私もやだなぁ。引くわ」
「決闘奇襲ってこう、圧の強い言葉ですね……」
ちょっとシフォリアの美醜観念がよくわからない。
ボクやぞ?君たちの知ってる大人姿も覚えてるけど、魅力どこさ??
「目立たなければ襲ってこないと思うけどね。
おかげでボクは、やたら奇襲警戒がうまくなったし。
最接近距離の対応ばかり上手になったよ」
「え。奇襲はともかく後のは……?」
「そりゃ押し倒されたりもしたからさ。
怖いし、頭が真っ白になるし。
だから意識がなかろうと、四肢がもがれていようと。
とにかく反撃即脱出できるように訓練したよ」
「「えぇ~……」」
あいっけね。あまり怖がらせてはいかんな。
けど四肢をもがれるってのは、例えじゃないんだよね……。
相手魔導師だかんな。
一応、治癒の魔導でちゃんとくっつくんだけど。
なお、ほんとに強要が成立した場合、やった側は即死だ。
精霊の処罰は重いからね。
やられた側は、だからって許せるものではないが。
余談だが。
ボクの武……魔素を揺らす点きは、その頃に大いに磨かれた。
無力化はもちろん……殺さずに痛い目みさせるのに、実にちょうどよかったからだ。
学園側は、そうした私闘や犯罪染みたものにはちゃんと介入はする。
けど、現場到着が間に合わないことだって多い。
事後解決はしっかりしてはくれるけど。
完全に安全とまでは言い難い。それは学園外だってそうだけどね。
ただ王国の中で言うと、あそこは比較的危ない方だ。
ダンジョンの次、くらいかな?
各所の街や村は、逆にとても安全だ。
幼児が二人で歩いてたって、危険は何もない。
学園は国外の、しかも力ある人間が結構来るから、治安が悪くなりやすいんだよ。
だから、外国人は学園からは自由に外に出してもらえないんだしね。
「まぁボク以外にそう乱れたとこは、あまり見たことがない。
精霊の加護もあるし、比較的安全な学園だよ」
「それ魔境よりは、ってつきません?」
「諸外国よりは、と言っておこう」
ぶっちゃけ、どっかの地球とやらのさる国に比べれば、治安なんてどこも蒸発したようなものだ。
暢気にしてられるのは王国だけ。連邦もところによっては危ない。
ほら、エイミーと三人で出歩いたら即スリにあって、誘拐にまで発展したろ?
あのくらいはよくあることなんだよ。
ダリアやマリーと一緒のときは、そもそも顔と名の知れた彼女たちを地元を歩いたから安心だったが。
初めて行く場所、幼児二人と少女の組じゃ、そら襲われる。
「先の通り、目立たなければ大丈夫だよ。
あと、友達とはなるべく一緒にいることだ。
一人にならなければ問題ない。
対処は教えるが……トラブルは、起こらないのが最良だ。
何かあると、どうしても大変だし、疲れる。
だから、君たちも何かあったら相談すること。
一人であたると、本当にしんどいから。
いいね?」
「「はい」」
ん。素直で大変よろしい。
「ま。ボクがそれでも通い続けたのは、勉強と、必要に迫られてもあるけど。
やっぱり一番は……」
穏やかに寝ている、彼女の頬をそっと撫でる。
「この子がいたから。
本当にお世話になったし、頼りになったし。
いつも楽しかったよ」
本当はもっとイチャイチャしたいんだけどなー?
お顔に疲れが出てるね……。肌が荒れるほどではないけど。
頑張ってるんだね、ストック。
「こ、これは僕らお邪魔というやつでは……」
「何言ってるんだいクエル、ここはじっくりと」
「もし残るのなら、シフォリアは礼法の再講義だが」
「失礼しました!」「あ、失礼いたします。おやすみなさいお母さま」
「ん。おやすみ」
二人は慌てて仕事部屋を出て行った。
そこまで急がんでも。また今度じっくりやったるか。
って……おやすみ?もうそんな時間か?
ああ、ほんとだ。採光用の透過窓、ここには作ってないから気づかなかったや。
もういい時間だ。
ごはん食べてないけど……ストックが起きたら、何か作ってあげようか。
皆のとこに話を聞きに行きたいけど。
それはまた明日だな。
ふふ。きっと詳しく聞いてみれば。
皆を困らせたわけでもなく、困ってるところを助けようとしたんだろうね?
君はいつだってそういうやつさ。よく知ってるよ。
やりすぎちゃうのが玉に瑕ってやつだな。
だから……君はボクが、必ず助けてあげるからね。
安心してストック。
君の隣が、ボクの居場所だ。
ご清覧ありがとうございます!
評価・ブクマ・感想・いいねいただけますと幸いです。
(感想というか言い訳等)
四度目の展開……になりませんでした。
ストックは二章登場組とは、まだそれほど交流できていないからです。
マドカ、アリサ、マリエッタの三名から特にコメントがなかったため、このような話になりました。
次回から三章の投稿となります。




