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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第二章幕間.聖暦1086年秋~1090年冬-みんなでわちゃつく日々-
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C-8.同。~かつての共犯者、その本懐。そして肉の三……?~

~~~~その。いい子、なんだけどねぇ。正直ちょっと苦手だった。こう、控えめに見えて前のめりで。


「あー……それ言わなきゃダメか。気が進まないなぁ」


「言ってください」



 まぁそうだろうようでも気が進まないんだよう。



「惚れたって言われたから、断ったんだよ。


 そしたら。では代わりに、とその名を贈られた」


「「「「惚れた!?」」」」


「…………そう、でしたか」



 …………ハイニルはガチな人です。


 ストックよりもさらに、恋愛なら女性じゃなきゃダメってはっきりしてる方。



 たびたびボクを見る視線が妖しかったし、怖かったのでお話した。


 そしたら先の流れとなった。


 なんでボクなんかをそう思ったのかは、さっぱりわからない。



 ちなみに、忍が名を差し出す、という風習は他の一門にも存在するのだそうだが、形骸化しているとのこと。


 差し出す名を、普通は持っていないからだ。


 だが箒衆は別だ。その奥意で、「魂の名」を自力獲得するらしい。



 そして名を差し出した相手に、忠誠を誓うんだと。


 正確には名っていうより……合言葉なんだけど。



 「目帚」というのは合言葉で、名ではない。


 この子の魂の名は、<リコ>という。



 なおリコって名前は、普通に使うこともあるそうで。


 「目帚」の方が、この風習に属する……。


 特別な相手にしか教えない名称、なんだそうだ。



 なかなかにややこしい。



「もちろん、名前の方も知ってるが。そっちも言っていい?」


「はい。もう特にお疑いはしておりませんが」


「ん。じゃあよろしくリコ。


 ボクは伴侶もいるし、君が万が一、またそうなっても答えてあげられないけど。


 できれば今度は、ちゃんと仲良くしたいね。前は忙しかったから」


「ええ、御屋形様――――ハイディ」



 彼女の瞳が元の、赤の差す黒目に戻った。



「で。ここまで言って申し訳ないんだけど。


 ボクの事情で、『目帚』の名は一時君に返上したい」



 ……また殺気が濃くなった。


 けど、当のハイニル――リコは涼しい顔だ。



「我々をパンドラに招くわけにはいかないから、ですね?」


「そうだよ。カール氏に仕えてるんでしょ?


 その状態の君たちを、王国の研究所には入れられないもの。


 忍びの風習は特殊だ。周りを納得させられない」


「はい。お立場は承知しております。


 …………いつまでお預かりすれば?」


「少なくとも、常任議員は辞めておいで。


 何か目的があってなってるんでしょ?」



 前の時はこの子は常任議員ではなかった。


 少なくとも、ボクが巡り合ったときは。



「…………本懐は果たしたく思います」


「前の時間のときは、君のそれは聞いてないんだ。


 ……まだ仕込みがありそうだし、その間に聞かせてくれない?」



 頭首が穏やかに接する様子を見て、周りは調理に入っている。



「畏まりました。


 そう大したものではないのです。


 聖女様を――――再びこの地上に、と」


「なるほど。ストック、たぶん違うから待ってね」



 口を挟もうとしたストックに抑えてもらう。


 ストックの中でつながったのはつまり、ボクを聖女にしようという話だと思う。


 すごいいきり立ってるし……なんだどうした。



 けどここは共和国。聖女派の人間が言うなら、それは。



「二人はたぶん、ハイニルから聞いて知ってるんだね?」


「うん」


「そうね」


「ストック。1000年前の聖女は、一般的には竜神山という聖国の山で没したとされる。


 だが経典の記述はそうじゃない。


 『お隠れになった』となっている」


「…………亡くなったときの表現じゃないのか?」



 ん?ああいや確かにそういう言い回しもあるけど、めっちゃ古語だぞ?


 あ、でも……ゲーム元の地球ではもう少しある言い方なのか?


 このクレードル半島では、もう使われていない千年単位で昔の表現だ。



「そういう表現もあります。年代的にも、まだ使われていたころかもしれません。


 ですが、言葉の意味そのままではないか、とも言われているのです」


「いや隠れたって……生きてはいられないだろう」


「そこがわからんという話さ。


 で、この子はそれをテーマに常任議員になった以上。


 革新的な内容を発表し、指示を得たと考えられる。


 合ってる?」


「はい。本当にただ、どこかに隠れたというのは資料から証明しました。


 ただどこにお隠れになったのか、また今どのような状態なのかは不明です。


 そこを調査し、可能ならお帰りいただく。


 それが私が常任議員を務めるにあたっての主題です」


「そうか。となるとまぁ……王国と共和国がもう少し仲良くなって。


 常任議員の君が、その命題を研究したいという名目を持てば、パンドラに来れるかもね?


 調査はともかく、その先はどっかで腰を据えて研究したいところでだろうし。


 まぁそれだけだと、名はまだ預かってもらうことになるけど」


「ふふ。御屋形様は手厳しいですね。


 ですがご提案は謹んで頂戴いたします」


「お、ハイニーもウチくるの!?」



 ベルねぇの家はここやで。



「簡単ではないと思います。政治的な折衝、交渉で時間もかかるでしょう」



 話す彼女をしり目に……何かベルねぇとギンナが視線を交わして頷いた。


 何をする気だね、君たち。



 お。なんかカウンター向こうでも交錯が。


 ひょっとしてそろそろできてきたかな?



「『預かり』である以上、こちらも返してもらえるように努力はするよ。


 パンドラに来るのは、その一環だな。


 まぁ確かに少々時間がかかるだろうけど、ゆっくりやってほしい。


 どうせ、調査の方だってまだ続けるんだろ?君らはそれが本分だし」


「はい。格段のご配慮、ありがたく存じます。


 ではそろそろ」



 そして牛鳥料理を振舞われたわけだが。


 ボクは……こっからしばらくの記憶がない。

次投稿をもって、本話は完了です。


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