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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第二章幕間.聖暦1086年秋~1090年冬-みんなでわちゃつく日々-
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C-7.同。~フライング再会~

~~~~まさか芋を出されるとは。魚や野菜、肉もたっぷり食べた。よかった。


 案内され、個室の一つに通された。


 個室と言っても、小料理屋くらいの広さがあり。


 部屋の中に、調理スペースが普通にある。



 座敷かと思ったが、四人掛けの四角いテーブルだ。


 給仕の方に椅子を引いてもらって、座る。



 カウンターの向こうにあるキッチンに、男性の料理人が数名。



 そして……黒く髪波打った髪、黒に少し赤のかかった目の少女。


 奥から暖簾をくぐってキッチンに入ってきた彼女は、髪を括り、布を頭に巻いた。


 装いは他の料理人の方と同じ。背は少し高いけど、年の頃はボクと一緒に見える。



 その。



 なんで、ここに、いるの?


 ちょっとだいぶ、予想外だし。


 わざわざ会わないように、予定、外したんだけど。



 思わずベルねぇを見る。



「紹介するね。その子がハイニル。私の妹」



 ハイニルと紹介された子――ハイニル・ロール常任議員がカウンター向こうで頭を下げた。



 つまりここベルねぇのおニューの実家か!?


 やられた!!善意だし、予想外だ!!!



「ハイニー。その子たちが話してた、ハイディとストックね」


「ハイディです。初めまして」



 なんとか平静を装って挨拶する。



「ストックだ。ハイニルと、そのまま呼んでも?」


「はい。本日は評議員でなく、料理人としてお持て成し致しますので。


 こちらもハイディ、ストックと呼ばせていただいても?」


「かまわな……どうしたハイディ?」



 ダメだ。首筋を伝う汗を抑えられない。



 いや……これは。未来の彼女にいいって言われたからな。


 初対面の今、言った方がいいだろう。


 後で出すとこじれる。



 息を深くし。


 覚悟を決める。



「『目箒』」



 カウンターの中……だけではない。


 見えない各所から、仄かな緊張が伝わる。



「皆さん、関係の方のようだ。


 後で話すとこじれるので、今お話したいのですが」



 ハイニルの少し切れ長の目が、ベルねぇやギンナ、ストックを見て。



「構いません。呪いの子とは伺っていました。


 しかし一同、その名を告げた経緯は聞きたく思います。


 ――――御屋形様」



 ぐ。この扱いに慣れないから、言いたかなかったんだけどよう。


 というか、会うならもっと後だと思ってたから……油断した。


 今回はお会いするスケジュールから、ボク逃げてたんだけどなぁ。



 隣のストックの目が、少々痛い。


 ベルねぇとギンナからも、めっちゃ説明を求める視線が来ている。


 しょうがねぇ。



「ストック。前のコンクパールに至るまで、ボクは船を降りてから丸三年だ。


 それにしちゃあ、少々鮮やかだったと思わないか?」


「ん?それはまぁ、ハイディだしそんなもんだと思っていたが。


 ……人手があったということか?」



 察しが良くて助かります。



 さすがにボクでも、あの期間で半島を生かしつつ殺す手を、一人で打つのは無理だ。


 計画と実行は全部自分でやったが、情報収集の手が必要だった。


 伝手ができたのは完全に偶然だったが。



「そ。王国寄りだった共和国の重鎮と結びつきが深かった、忍の一門。


 箒衆って一派なんだけど。


 王国が滅びる折、諜報戦に負けて落ち延びたこの子たちを、ボクが拾った。


 経緯は――――襲われたところを、返り討ちにした」


「…………ほぅ」



 ハイニルの目が鋭く――青みが混じり、濃い紫になった。


 しかし、この程度の殺気はそよ風みたいなものだ。


 彼女が本気なら、気配の前に首が飛ぶ。



 忍とは、元は武術の一流派だそうだ。


 …………特に箒衆は、脳の魔素制御を得意とする。



 ボクの技に非常に近いものを使う。


 特に幼くして忍頭となったハイニルは、超人的な魔素制御の技術を持つ。


 単純処理能力なら、ボクを上回る。



 今は先の通り、王国寄りの重鎮、すなわちカール・ロール氏に着いている。


 養女であるのも事実だが、いろいろあって先代を失ったところ、一門ごと拾われたそうだ。



 そしてその恩義に報いるため、持てる力をいかんなく発揮。


 昨年あたりに常任議員にもなったはずだ。



 常任議員に選ばれるのには、前提として高い情報処理能力がいる。


 由来は魔導でもなんでもいいんだが。



 それがまぁやたら追われたり負けたりしてるのは、強すぎるからなんだよなぁ。


 箒衆にしろ、ロール家にしろ、共和国内の主流派ではない。


 なのに常任議員を二人も抱えていたり、影響力が大きかったりで目をつけられやすい。



 カール氏本人が、政治にあまり関わらないせいもあるが。


 政治に深い関係を持つのに、ここには政治に長けた人がいないんだよな。


 公選議員あたりはともかく、常任議員は政治力関係ないからね。



「神器船クレッセントの責任者として、王国滅亡の事件中心にいた当時のボク。


 これを捕えようとしての動きだったみたい。


 で、全員をぶっ飛ばした後。行く当てがないっていうから仕事を頼んだ。


 報酬は魔物肉の定期提供。君らの武は、対人はともかく対魔物は厳しいからね。


 どこも飢饉で食糧不足だったから、それで契約してもらえたよ」



 この子たちの武は、魔物が苦手だ。


 倒せないだけで、対処はできる……魔境だって一人駆けできるんだけど。


 魔物を倒して食料を入手する、って真似はできなかったから、それをボクがやった。



 ボクは前の時間では神器使いだったから、これはお手の物だった。


 目元をさくっと切れば、特大の肉の塊の出来上がりだ。


 魔境を往き、狩りをするの自体は大変だけど。



「筋は通っています。そこまではいいでしょう。


 ですが、名を預けるとは思えません」



 そう。契約くらいは、報酬があって他と利害が被らなければ受けてくれる。


 ただ、先の名前、は特別。


 時を超えても、変わらぬ忠を誓った証だ。

次の投稿に続きます。


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