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【完結】逆行した幼女と令嬢は車で旅に出る~ボクは4歳で攻略されたので、乙女ゲーや王子たちは今更来てももう遅い~  作者: れとると
第二章幕間.聖暦1086年秋~1090年冬-みんなでわちゃつく日々-
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C-6.同。~肉の二:パン粉での揚げ各種~

~~~~見えない誰かのために。そういうのはもっと、責任ある方の仕事だ。ボクのじゃねぇな。


 …………お。


 音が変わった。


 そして油から上がり、冷まされ、切られて断面を見せていくそれ。



 皿に盛られ――――。



「まずは四足のカツからだ。ほかにもいくつか、四足に限らず出して行く」



 出て来た。



 茶色でパン粉をまぶし、揚げた――カツ。


 地球で言うならトンカツってやつだ。


 匂い、色。そして……わずかに踊るような衣。いいね。



 付け合わせは甘葉の千切りか。


 これがなくっちゃな。



 ん?何のソースもない。


 これは。



 皿を受け取り。


 躊躇いなく、カツを一口。


 ――――やはり。



 肉は噛み応えがあり、染み出すような旨味がある。


 肉汁というより、これは脂だ。


 下味もついているが、柔らかめ。



 メインはこの、パン粉。


 うまい。さすが麦――否、パンの国。


 仄かな甘み、食感。素晴らしい。



 そして確かに油のうまさを感じるのに、まろやか。


 これはいくらでも入るやつだ。



 甘葉を間に挟み、次に移る。


 いい。味変も考えるところだが、この一枚はこのまま食したい。



「ハイディ、何もつけないのか?」


「言ったろ?ボクは最初と最後は一番好きなものにすると。


 これで正解だよ。


 パン粉がたまらない。


 次からは、ソース各種も試したいね」


「……お嬢ちゃんも揚げるくちか?」



 およ。店主に聞かれた。



「拙いながら。


 このパン粉は仕入れ先が聞きたいくらいですね……」


「自家製だ」


「ん、もしかして麦からですか?」


「そうだ。だがこの国は土地がやせてて、あまりうまく育たん。


 王国産の麦を食べたことがあるが、あれは最高だった。


 いただいた種を改良してここまでたどり着いたが、及んでいないな」



 なんと。



「それはもしや、北東領ライム家の、噂の黄金麦では?」



 王国では麦の生産は少ないが、高品質種を作っているところがある。


 それが北東メラルド侯爵領のライム家の、黄金麦。


 またはライム麦と呼ばれる種だ。



「おお、知ってるか。食べたことは?」


「あります。パンにしたものを、一度だけ。


 あれの常食は危険ですね……」



 正直、小麦粉のような何かでできてるんじゃないの?と思ったくらいだ。



「同感だ。このくらい調理した形で、ちょうどいいだろう。


 が、あれで作りたくても、輸入するとちょっと店に出す値段じゃなくなっちまう」



 ギンナとベルねぇの方を見ると。


 二人、こくりと頷いた。



「まぁいい。今は食べてくれ。


 王国民だって聞いたが……口に合うかね」



 出て来た皿に乗っていたのは――まさか!


 平べったい、丸いパン粉揚げの……芋揚げか!!マッシュの!!


 王国民のソウルフード!下手なものを出すとマジ戦争になるやつ!!



 いわば「コロッケ」というやつだ……これを出すとは。



 だがこの男、同じものをギンナにも出したことがあるだろう。


 この子の舌をうならせたということだ。


 なんと挑戦的。そしてすでに香りからして蠱惑的だ。



 出て来た皿を引き取り。


 箸で持って。


 一口。



 さくり。



 …………やはり主体はパン粉。


 芋は王国産じゃないな。


 だが丁寧な仕事だ。ほろりとした食感。甘味。



 そして……この香り。


 なるほど。これか。


 油が違うんだ。



「しっとりとした、いい芋揚げです。


 きっと、誰も争いにならない。


 皆、納得するでしょう」


「そうだな。優しい味だ。


 ソウルフードとは、こうあるべきだろう」



 それぞれ特色のあるものを求めがちな、王国のマッシュ。


 あれもいいんだが、これが原点と言われても、納得する。


 いい腕だ。



 うまい。



「最高の誉め言葉だ。


 じゃあ次を出して行こう」




  ◇  ◇  ◇ 




 食べ終わり、先に店を出て待つことしばし。



「さすがに食べ応えがあったな」


「半分埋まったよ。うまかった。


 何より、いくらでも入った。


 それがすごい」



 かなりの量を食べたはずなんだがなぁ。


 もちろん、店の一日の供出量は全部いただいた。


 ああ……もう夕暮れ近いな。



「お待たせ」


「良いお話もできたし、次にしましょうか」



 二人が出て来た。



「次は楽だよ。何せお隣」


「隣って……」



 長大な塀の向こうに、屋敷のようなものが見える。



「お高いけど、おいしいから」


「今日は貸し切りにしてもらったけど。


 払いは大丈夫?」


「「余裕」」


次の投稿に続きます。


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