C-5.同。~目に見える者たちへ、手を尽くして~
~~~~アルコール入れてぐいっとやりたい。うまい。
「どうして神器が作れるのか?だね。
魔結晶と他の物質がくっつくのは、謎なんだよ。
しかも融合の解除までできる。
だが、仕組みがわかっていない。
これを解明する」
このテーマを選んだのは、マリー自身の力にも関係があると思ったからだ。
結晶もないのに神器を扱い、自身がオーバードライブすることすらできる。
遠隔の神器をも自在に起動する、神に愛された女。
彼女の力は、神器という謎の先にある。ボクはそう予感している。
まぁ今は……もう一つ大事なテーマがあるから、そっちが先になってるけどね。
早くしないと、ドーンや連邦の人々が、周りから認識されなくなる。
これについては、スノーに手伝ってもらって、少し前進している。
あの子はビオラ様と違って、役から外れるのは確実だが、まだ「コニファー王女」なのだ。
彼女が役から外れて認識されなくなるのは、11の誕生日前。まだ先だ。
もちろん、それを待ってたら間に合わないので、先に予想を立てながら研究を進めている。
役とは何か。人の認識とどうかかわっているのか。それがカギになる。
「それは……人体との結合も?」
「メインじゃないけど、そこもわかるね。
結合解除の治療法は、また別に研究しないといけないけど」
「わかったら世紀の大発見じゃない……」
ギンナとベルねぇが引いてる。
「そうだよ。マリーが助教になれるくらいには、ね」
「むー。ハイディ、なんでマリーちゃんばっかり手伝うんです?」
ああ、それはそういや言ってなかったか。
ボクはそれぞれの事情は把握してるけど、皆はそうでもないだろう。
「そこはだね。
ボクとストックは問題なかろ?
ミスティとメリアも、メリアが10歳になったら正式に婚約だ。
君らは道ができた。今そこを歩んでる最中だ。
で、マリーとダリアの、特にマリーがまずい」
「聖国のひも付きだから、ね?
あそこは難癖付けそうだし」
「そう。だから、王国ががっつり抱えるだけの理由がいる。
そのための研究と助教の椅子」
「そっかぁ。確かに自分でとなると、マリーちゃんかなりかかるだろうし。
永世教授は……時間が足りないだろうし」
がんばってとれないこともないが、マリーは早々にそっちには見切りをつけた。
これはベルねぇとの目指すものの違いだ。
ベルねぇは、研究の先に別のものが控えている。
永世教授は足掛かりであって、その先も含めてとにかく速度が必要だ。
マリーは、研究職そのものが目当てだ。
ぶっちゃけ、聖国を追い払って、マリーを娶れればそれでいい。
永世教授だって最低三年かかるんだから、同じ期間で実績あげても得られるものに違いがないのだ。
あと、やらせてみた感じ、研究向きという面もあるね。
そのまま仕事にしてやっていける感じだ。
助教になった後は、好きにやらせてもいいモノ見つけてくると思う。
ベルねぇは不正解を排除する悪癖があるので、あまり向いてはないかなぁ。
正しいだけを追ってたら、見つからないものがあるんだよね。
「ベルねぇは、実際の研究の段に入ったら手伝ってあげるよ。
どっちみちパンドラとの共同にした方がやりやすいし。
だから今回みたいに、うちとして共和国と繋ぎを作りに来てるんだしね」
「え”。私たちのためにわざわざってこと?」
不思議なことをおっしゃいますなぁ。
「ん?そうだよ?
ボクが何かするのなんて、ストックを除いたら友達や家族のためくらいだ」
ま、そのボクに自由にやらせてくれてる、ビオラ様のおかげでもあるけど。
ほんとに何でもは頼まないけど、このくらいはわがまま言ってもよかろ。
パンドラや王国の利益にも、ちゃんとなるしね。建前ってやつはばっちりだ。
「ハイディ、前はそうじゃなかったと思うけど」
前って……ああ、クレッセントか。
あそこじゃ確かに、ほんと誰彼構わず世話を焼いていたからなぁ。
ありゃ自分が持たん。もうやらん。
「ああいうのはもうやめた。
見えない誰かのためにがんばってやっても、徒労だ。
それなら目の前の人を大事にするよ。
見返りなんていらないけど、足元疎かにするとひどい目にあうからね。
で。マリー向けは2-3年で終わらせる。
その後はそっちの準備に入るからね」
「そんなもんでできちゃうの!?」
ある意味もうできてはいる。
ただ、他の人でも明らかな形にするのに、時間がかかる。
ベルねぇの驚きは、これから探すと思っているからのものだろう。
「もう当てがついてるし。計画も細かく立ってる。
マシンタイム……設備の解析にかかる時間があってね。
これが結構長いから、どうしても時間はかかるんだけど。
それを基準に、もう最後の発表まで線は引いてあるよ。
再現実験プロジェクトの打診も始まってる」
「ええぇぇぇ……始まったばっかりなのに」
「ゴールが見えないのに始めちゃだめでしょ。
ベルねぇもそうするんだよ?」
「ん……覚えとく」
素直でよろしい。
「ストックは最近留守にするそうだけど、何をしているの?」
ギンナが話を変えた。
ボクも気になる内容だなぁ、それ。
「私か?内緒だ。まぁスノーの仕事だよ」
スノーの?
思い当たるのは神主絡み……。
あるいはボクが前に言った、イベントやサイドストーリー絡みか?
ぱっと思いつくのは、魔境の主・邪魔だな。
まさかアレを狩り回ってるとか……?
やりかねんな。
だが言っちゃなんだが、ストックがそれを手伝うのは、意外だ。
ボクの出した懸念だから、積極的に取り組むのは一応わかるんだけど。
別にストック本人が出なくてもいいよな??
だってあれ、ビオラ様がエルピスで出てけば即粉砕だぞ。
他の人間は出番がない。
となると……ストックがもし手伝ってるなら、何か他に仕事がある。
なんだろうなぁ。
こいつがわざわざ、日をまたいでまで外に出るなんて、よっぽどなんだが。
帰ってくると甘えっぷりが激しいし。そこまでするほどのことなんかね。
次の投稿に続きます。




