C-4.同。~共和国の麦を味わい、次へ~
~~~~これはいいやつ。腕のいい方だ。ぜひお招きしたい。
「ほい。エールレッド。お嬢ちゃんたち二人でいいんだな?」
「「はい」」
まずは一口。
――――これは。
「うまいな」
「うん。一度アルコールを抜いているはずなのに、いいエールだ」
「ああ違うんだよ。最初からアルコール抜きのを作ってる」
「「!!??」」
びっくりして、思わず顔を上げた。
「秘伝の製法ってやつさ。酒は勝手に作っちゃ駄目だからな。
ああ秘伝っていっても、うちじゃなくて、俺が作ったものだけど」
よし。この人をパンドラに連れて帰ろう。
ストックと密かに頷いた。
たぶんこれは、アルコールを入れたら入れたで、いいのを作ってくれる。
なんてこった。こんなとこに腕のいい酒造者がいるとは。
「さぁ次の皿だ。たっぷり味わっていってくれ」
もちろんだ。
エール片手にこれほどの焼き鳥とは。
最高じゃないか。
◇ ◇ ◇
ベルねぇとギンナが少し店主とお話して。
こちらに戻ってきた。
「おいしかった」
「満足だ。
さすがにあまり量は食べられないがな」
「腹二分ってとこ?」
「「そう」」
おなかを満たすほど食べるのはさすがに大変だ。
けど、屋台はのれんを下げた。
今日の分は食べきらせていただいた。
まさに、丸羽鳥を余すところなく味合わせていただいた。
満足だ。
せっかくの丸羽なのに、卵がないのはいただけないが。
それは……たぶんストックが何か、企んでるんだろう。
「じゃあ次は、たっぷり目に食べられるところにしましょう。
四足の――揚げ専門店です」
ほほう。
このボクを揚げ専のとこに連れて行くとは。
ずいぶん自信があるのだな?ベルねぇ。
これは楽しみだ。
いつも食わせている揚げで、舌が肥えているこの二人が。
なお食わせたいと思う、うまい店。
いいね。実にいい。
腹が鳴るのを抑えるのが、大変だ。
少し歩いたところの店で、引き戸を引きながら、ベルねぇがのれんを潜る。
…………ここ、木造だらけで明らかにどっかの国みたいな風情なんだけど。
共和国は、文化由来が謎なところがあるよな……。
「来たなベルっ子。ほんとに全部食ってくんだろうな?」
扉には貸し切り、の札がかけられていた。
ここも、ボクら向けで一日分使ってくれるようにしてくれるのか。
ベルねぇたちの配慮に感謝だ。遠慮なく食べられる。
「はい。まだおなかだいぶ空いてますし、大丈夫ですよ」
言ってなかったかもしれないが、ベルねぇとギンナも食べる勢だ。
ボクたち8人はうち5人が、大食乙女ということである。
あとビオラ様も……ボク以上に食べるんだよね。
なお近年加わった7人もたいがい食べる。
……いや、全員よく食べる。
彼女たちのおかげで、調理負担は爆上がりだ。
なんでみんなあんなに食べるの?
マリーとダリアくらい慎ましやかでもいいのよ?
「よし、じゃあ揚げたてを出していく。
じっくり行くから、しばらく待っててくれ。
ああ、カヤさん。お茶だけ出してあげてくれ」
「はいはい」
女中さん?の給仕がカウンターの四席にお茶を並べていく。
まだ熱々だ。しかも量が多い。
これは……少しずつ飲んで。冷めた頃に揚げが来るな。
そして口の中を、さっぱりさせてくれるやつだろう。
こちらは手洗いをさせていただいた上で。
カウンター席にベルねぇ、ギンナ、ボク、ストックの順で座る。
「ストック、そのお茶はあと。香りだけ楽しんでおきな」
「ん?わかった」
ちょっとカウンター向こうで絶賛揚げ中の店主に見られた。
何かこう……ターゲッティングされたか?
「そうそう。後でさっぱりさせてくれるので。
熱々も口の中に広がる香りがいいですけど。
冷めた時が濃くて美味しいです」
「そうなのか……ん。確かに、これはいい」
ストックが少し口に含んで、熱さをのけながら楽しんでいる。
ボクもほんの一口。……とても濃い香りだ。
緑茶というんだったか。これは地球でもあるものと同じ名称だ。
茶葉の発酵で色が変わるんだったかね。
ボクらが普通にお茶と呼んでるのは、いわゆる紅茶だ。
さて。
揚げのいい音でも聞きながら、しばらく雑談でもしようかね。
「そういえばハイディ。
あれ以来、またあなたも何か作ってるの?」
おっと、先にギンナに聞かれた。
「あれ」とは、マリーのクルマ――人型神器・不死者だ。
マリーは最近もあれで元気に、魔物掃討を行っている。
普通にダリアとドライブにも出てるみたいで、とても楽しそうだ。
お土産や土産話をよく持ってくる。実にいいね。
「ん、んー?作ってはいないよ。製作は娘たちに任せてる。
ボクは研究」
「何研究してるの?
最近のハイディ、ずっとマリーちゃんと一緒だし」
なぜそこで拗ね気味なんだね、ベルねぇは。
次の投稿に続きます。




