C-2.同。~彼女たちの目指すところ~
~~~~控えめに言ったけど、意識飛んでるんじゃないかと思った。ベルねぇ。そんなに?
一方、王立魔導学園では好成績を収めており、マリー、エイミーと並んで講師となった。
まだ初等部なんだが……ベルねぇだけはすでに教壇にも立ち、精力的に活動しているとのこと。
目標となる学園考査1950点に今年は届かなかったが、1900点強までをマークしている。
1950点以上の三年連続取得を在学中に達成するつもりだ。
この点数を満たすと、永世教授として一気に教授職に至れる。
研究室も与えられ、一定の予算ももらえる。
各試験の10%は、各分野の専門家の「頭の中当て」だ。
200点のうち20点はそういう問題なので、10科目試験で200点。
つまり1800点から先は、各分野の最先端を網羅していないと話にならない。
そして実際の問題は、先端研究を理解している、が前提であって。
正解する方がおかしい問題しか出ない。
しかも総記述式。偶然の正解はあり得ない。
当然、わかるやつはその分野で、その人に並ぶと評価できる。
それを三年連続で全分野でとられたら、そら学園は白旗上げるしかない。
今までの学園の歴史では、18~20歳の間に達成する人しかいないそうな。
それも、史上まだ10名程度しかいない。
先々代の学園長がそうで、以降はまだ出ていなかったと記憶している。
在学中の達成は0。
ベルねぇがとれば、そりゃ話題性抜群。
そして潤沢な予算も得られるから、それで自身の力をさらに研究できる。
彼女は「二択なら正解の方がわかる」という資質を持っている。
これを解析し、何らかの方法で再現することで。
共和国の永年議員となるつもりだ。
共和国の議員は、選挙で選ばれる公選議員、持ち回りの役選議員、そして常任議員の三つが主で。
それに加えて、現在二票だけ「永年議員票」というのがある。
偉大な業績を残した議員の、投票基準を魔導で解析、保管。この基準をもとに行われる投票だ。
当然、本人にも十分な報酬と名誉が約束されている。
そして基準が真っ向から対立する現行の二票に対し、120年出ていない3票目が加わると。
共和国の政治は、かなり根底から覆ると言われている。
「必ず正解がわかる」というその仕組みが明らかになり。
これが永年議員票に加わる、となると。
その栄誉、まさに王と呼んで相応しいものになるだろう。
そして王国の高位貴族の娘である、ギンナを傅かせるつもりなのだ。
ぶっちゃけ結婚したいだけなら、永世教授だけでも十分なのは十分なんだが。
ギンナは、ベルねぇを王にしたいのだ。
そのため、ファイア大公家の力を積極的に利用しつつ、裏でベルねぇの政治活動を手伝っているらしい。
なので最近は、二人して共和国にもよく来ている。
一応、パンドラの転送路の一つと、ロール家所有の転送路が結ばれてるので、行き来は簡単なんだがね。
「……ベル」
遠い目が長いベルねぇの袖を、ギンナが引っ張ってる。
そんなに趣味がかわってらっしゃるのか。君のお父さまとお兄さまは。
「はっ。ごめんごめん。
ハイディもストック様も、おなかすいたよね?」
「すいたが、もう様はいらないんだぞ?ベル。
君は共和国民になった。私とはある意味、対等だろう」
「ふふ。じゃあストック。何から食べたい?」
「そうだな。最初は丸羽からでどうだ」
お?最後に回されると思ったけど。
……なんか企んでるのか?
「じゃあ行きましょうか。
今日は朝から動いてて、私もおなかが減ったわ」
「はい、こちらですギンナ様!」
ボクには何も聞かれず、ベルねぇが案内を始めた。
やっぱ何かあるなぁこれ……。
ストックは素知らぬ振りをしているけど。
なお、ベルねぇはギンナのことはいまだに様付けだ。
何かこう、思うところがあるんだろうな。
この街の名はロードⅩⅢ。13ある共和国都市、最後の一つ。
西端の水源近くにあり、昔は水運もやってた、そうな。
今は外洋に出られないとか、聖国とは行き来が少ないなどの理由で、あまり行われていないとか。
丸い外壁に囲まれたこの街は、ちょっとごちゃごちゃしている。
道は整備されているが、通りは広くない。
馬車道としては十分なんだが、あまりクルマ向きではないんだよな。
なので街を回るときは、基本徒歩になる。
前の時間も来たことはあるけど、そこがちょっと不便なんだよね、ここ。
街並みはその時と、あまり変わりがなさそうだが……。
あの時はいたるところに、外国人お断りの札が立っていた。
食料を始め、半島全体が困窮しかかっていたので、共和国は自国民保護を優先していたのだ。
そりゃ王国も連邦も滅んだあとだからね……無理なからん。
結局、共和国らしい飯は何も食べられなかった。
帝国や聖国に比べればおいしいのはおいしいけど、高くて無個性な感じだったなぁ。
食べられるだけ、ありがたくはあったけど。
あの頃は、魔境でなんとか魔物を狩って。
ばらしたのを必死にクルマに詰め込んで。
安全圏で食べる、くらいしかなかったからね。
他にまともな食糧確保手段がなかった。
共和国と帝国のダンジョンは国に管理されてて、外国人は入れなかったし。
聖国はそもそも、ダンジョンに魔物が出ない。
食べ物を潤沢に得たければ、魔物ひしめく魔境を往くほかない。
おいしいから、その点はほんとよかったけど。
あれで食えたものじゃない食材だったら、さすがに生きるのを諦めていた。
次の投稿に続きます。




