B-4.同。~ハイディの光に灼かれ済みの女たちのコメント~
~~~~おのれストック。さらっと地雷を置いていきやがって。
「では続きまして。王太子内定の王国第二王女様!」
公式には、ボクが王族入りしてないので第一王女なんだがね。
ボクは今の……パンドラ職員という身分のままだ。
準備ができたらシルバの爵位をいただき、家を興すことになっている。
王族には復帰しない。
まって。その子、ボクの妹なんだけど。
『あ、姉上と!?あ、ではなくハイディ、と想定しろと。
ん、んー。んー……恋人ねぇ。ちょっと恋人、自体が私、想像つき辛いのだけど。
今のビオラのような立場だと思えばいいのかしらね。
それなら…………ひゃ』
「この後、スノー叔母様はしゃがんですごい悶えてらっしゃいました。
しばらく続きます」
「おのれスノー!!」
なんでストックはそこでいきり立つん?
あと、クエルとシフォリアはボクの娘なので、血縁上はスノーの姪にあたる。
『…………はぁ。ちょっと落ち着いたわ。悪かったわね。
あの人は私の憧れなのよ。少々刺激が強いわ。
ビオラと比べて?その比較は無理ね。
ビオラはまさに私の伴侶。妃よ。そばにいることが、無上の幸福となる。
姉上はドキドキするけど、いろんな意味でするけど、ビオラとは違うわね。
その……好きなのはすき、よ?』
「スノーめぇぇぇぇぇ!!」
「はい、短めですがここまでです。
ストックお母さまは、リアクションが面白かったので飛ばします」
「なぬ!?」
「じゃあボクね。
まぁ姉妹だしねぇ……そりゃそうだろとしか。
抱いている感情が憧れってとこもポイントかね?」
「ん?何かまずいんですか?」
「理想と現実は違うものさ。あの子が見てるのは、理想のボク。
そしてビオラ様という現実だ。
そっちが幸福だというんだから、あの子は現実を選んでるんだよ」
「ほほー。コメントありがとうございました!」
ま、いいお姉ちゃんではいてやろう。
とはいえ、特別なことなんてしてないんだけどな。
ボクのどこに憧れる要素があったし、スノー。
「では最後、我らが所長、ビオラ様!」
『ふふ。言っちゃっていいの?まぁ大丈夫ね。ハイディは。
ごめんなさい、ストック。
愛しているわ、ハイディ。大好きよ』
ダンッと音がした。テーブルにめり込む勢いで、ストックが突っ伏してる。
…………おでこ大丈夫かな。
『だって、あの子は私の希望。共に戦う仲間。
ああ、私が勝手にそう思ってるだけど――ハイディはわかってくれている。
そう、確信してるわ』
ええ。あなたはボクと一緒に戦ってくれる、戦士です。
あのふざけたゲームとやらの、運命と。
あなたがくれた名は、ボクの誇りでもある。
『脳の魔素を制御できるといったあの子。
本当は他の子から教わったそうなのだけど。
でも見た時、違いは一目瞭然だった。
活路を見出すために、いろいろやってきたけど。
この子こそ、私の求めていたものだって、すぐわかったの。
なのに……先に死んでしまって、本当に申し訳なかった。
でも再会して、やはりハイディこそが希望だと想いを強くしたわ。
だってあの子、あのくそふ……んん”。クレッセントを一人で切り盛りしたのよ?
私にはできなかったことだわ。それをやってのけ……結末を自ら変えて、切り開いた。
だから私、ハイディの望むものならすべてあげるわ。何としてでも用意する。
ないとは思うけど――私自身を、望んだとしてもね?
スノーに謝って。国を出てでもそうする。
あの子の手を引いて、船を後にする勇気がなかった私は……そうしてでも、ハイディの力になりたい』
そんなに考えててくれたなら、我がままいっときゃよかったな。
こんな船一緒に出ようって。
そんな可能性は、今から望むべきではないけど。
ちょっと未練を感じる。きっと、楽しい道行きになっただろう。
『ふふ。そしてそれと同じくらい、スノーも大事。
一目見て惹かれた。
まぁ私は年だし、離縁済み、娘までいる。相応しい相手だとは、思わなかったけど。
選んで、くれた。時を超えてまで、復讐も、約束も、全部果たして。
あの人こそ、我が伴侶。我が王。
比較して?んんー。まぁそれはちょっと難しいわね。
もしどちらかを、という状況になったなら。
私は二人を選ぶ。もう、諦めない』
…………万が一ボクが、ビオラ様がいいって言ったら。
スノーとボクを連れて逃げるということかね?それは。
やりそうだなぁ。あの人結構、滅茶苦茶だし。
「お母さま」
「ん。まぁそういわれるくらいのことは、したつもりだよ?
同じ戦場に立つことは、滅多にないけどね。
我が師にして、長く共に戦ってきた、戦友だよ」
「良い関係ですね!……?ストックお母さま、何か?」
ストックががばっと起き上がった。
「ビオラッ、お前もか!!」
「はい。コメントありがとうございました」
「流された!?」
すっかりリアクション担当にされてるねぇ……。
おでこちょっと赤くなってるな。
冷たいものは今近くにないし、後で冷やしてあげよう。
「で、聞けて満足できたかい?クエル」
「はい。みなさんの人となりが知れてよかったです。
その。未来ではあまり……関われなかった人もいるので」
ちょっと濁したのはやはり、10歳前後から死者がでているから、と見るべきか。
「そりゃ何よりだ。今後十分世話になるといい」
「はい!お時間いただき、ありがとうございました」
クエルがお辞儀して――腕輪を回収して、出て行った。
素早い。取り返せなかった。
「…………あぁ!?腕輪持ってかれたぞ!!」
「そうだよ気づくの遅いよストック。
君の管理が朴訥だったのが悪いということで、しばらく持たせておこう。
そのうち、シフォリアが残りを持ってくるだろうしね」
「――――!ちょっと在処を確認……」
「ダメ」
ボクは繋いだ手を固く握りしめた。
「はい、でぃ?」
そして彼女の赤い瞳を覗き込む。
「お仕置きがまだだぞ?ストック」
――――逃げちゃだめ。
囁くと、手で顔を覆って身悶えようとしたので、抱き着いて防ぐ。
「や、ちょ、ハイディ!?ひ、ひとま……」
「人いなくなったよ?
だから、さっきのつづき」
「あ、こら吸うな嗅ぐな食むのは禁止ぁぁぁぁ……」
最近、留守が多い君が悪い。
胸の内を全部喋れとは言わないけど。
君はボクのものだ。離さないからな?
ご清覧ありがとうございます!
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