A-10.同。~魔を討ち払う、勇者の鎧なり~
~~~~つい盛り込めるだけ盛り込んでしまった。
「ビオラ様、見えます?」
「あのくらいなら平気」
「『マリー、残りの掃討を始めてくれ。
切り札も切ってほしいが、任せる』」
『かっこよく決めてやりますよ!』
サヴァイヴァーの右手の中に、刀が形成されていく。
刀として撃ち直した聖人と同じ形状のものだ。
背面の噴射口がさらに火を吹き、速度を上げて小さな魔物の群れに突っ込んでいく。
一振りで何体か掻っ捌かれた。
「ハイディ」
「ストック?」
「接近戦は必要なのか?」
「必要。接近『された』場合の対処能力が要る。
そもそもに神器車だぞ?遠距離にずっといられるとは考えにくい。
速度では魔物の方が上だし、魔導師もそうだ」
「あーまぁ、そうだな?そうだな」
ご納得いただけたようだ。よしよし。
お、サヴァイヴァーが先のものよりも長く大きな砲身を作り始めた。
やる気か。残りが結構直線状にいるしなぁ。
『荷電粒子砲、発射!』
砲身から一瞬、魔力流の光さえ消え。
次の瞬間、レールガンに勝る大爆発が。残りの魔物を飲み込んだ。
「ハイディ、あれ」
「獣の矢を解析して、つけてみた」
ボクは生身で撃てるからな。
撃って計測・解析し、実装してみた。
「『ダリア、残敵』」
『ないわ。このセンサー便利ねぇ。
フロック、かなり制御しなくても当たったわよ』
よしよし。
実はサヴァイヴァーの一番優秀な部分は、ここだ。
いろんな人のアイディアによって、センサー部分がほんとすばらしい。
使用者が使いやすく、そして邪魔にならないいいものに仕上がった。
防御、復活、そしてこのある種の電子戦能力。
生き残りにその力の中軸を置いた、ある意味神器車らしい神器車だ。
ついでにとんでも攻撃性能がついてる。それだけである。
「『そりゃよかった。気を付けてお帰り』
所長、以上です」
「いいわよ。正式採用しましょ。
それで?」
「マリーより出力の落ちる人向けのものを、同コンセプトで開発しようかと。
ま、人型魔道具とは路線が異なるので、共存可能だとは思いますが……」
「やったるわ!絶対すごいの作ってやるんだから!!」
エイミーはやる気で大変結構。
「ハイディ、どの辺りを運転手のターゲットにしてるの?」
「パンドラを余裕をもって動かせる子、までです。
色付き結晶を前提とし、販売はしません。
一機試作して、量産は待った方がいいでしょうね。
過剰戦力です」
「そうね。試作をプロジェクトにして頂戴。
ああでも、優先度は落としてね?
あなたは他にも大事なことがあるんだから」
「はい。他の子に任せてみようかと。
例えばまぁ、クルマの欲しそうなボクの娘やその友達、とか」
「「「「ほんと!?」」」」
「量産試作、ワンオフの一台ができてる。
ここからのスタートですから、弄るのにちょうどいいでしょう。
どうでしょう、ビオラ様」
「任せるわ。
ああ……私自身は、とてもいいと思ってるわよ?」
「ありがとうございます。
詳細はまた後日詰めようか。
『マリー、お疲れ様。ダリアも』」
サヴァイヴァーが戻ってきて、無事着陸した。
車両形態に戻っていく。
そして二人が降りて来た。
「んあー!楽しかった!やっぱり最っ高のクルマです!」
「…………クルマ?クルマとは」
「ヘタレさんは水差さないの!」
「むぐ。ヘタレは返上したぞ」
「ハイディからも指輪もらっといて?」
「なぜ隠してるのに知ってるんだ!?」
「ご両親の前で思いっきり自慢したって、聞きましたよ?
そこの小姑さんに」
「スノー!?」
「ば、マリーばらすな!!」
「ストック。ボクと結ばれた証を知られるのは嫌か?」
「い、いやそんなことは……」
「ふふ。だからヘタレだっていうんですよ。
堂々としてればいいのに。ねぇ?ハイディ」
こら。抱き着くなマリー。
…………君随分育ったね?
前の時間じゃ、もっとがりっがりじゃなかったっけ??
ちょっと食糧事情が改善しすぎたか。そうか。
あれ?ストック。その赤い光は……。
「よし。では今から汚名を挽回しよう」
「落ち着けストック。
汚名を返上するか、名誉を挽回しろ」
「大丈夫。私は冷静だ。
――――今すぐそこをどけマリー。私の場所だ」
「マリーがどいても君がいていいとこじゃないから。
人前だから。落ち着けやどこが冷静だ」
「私だって人前でイチャイチャしたいんだー!!」
「ぶっちゃけた!?ちょ、誰かストック止めるの手伝って!!」
その日は珍しくなんかわちゃわちゃして。
その後、謝ったり落ち着いたりなんだったりして。
みんなで楽しく飲んで騒いだ。
マリーとダリアは、ずっと嬉しそうだった。
…………お待たせ。マリー。
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