A-9.同。~神の身の如く空を駆け~
~~~~驚き役がいい仕事してくれて、ボクはとても満足だ。
『では行きます!
災厄よ、箱より出でて――――。
広がり!
天に舞い!!
獣となれ!!!』
今日は獣ではなく、人だけど。
まさにそれは天に舞うようで。
全体ほとんどが小さくばらけた後。
それぞれをつなぐように魔力流が結び。
極小の神器がその周りを覆い。
武骨で。しかしスリムで。
確かに人型と呼べる。
新たなマシンになった。
「ロボだーーーーー!?」
ストックは反応がとてもよろしい。
後でご褒美をやろう。
ん?なんでエイミーは膝から崩れ落ちて……。
「馬鹿なああああああああああああああああああああ!
負けたああああああああああああああああああああ!!」
なんだその悲鳴は。
「悔しい!かっこいい!くおおおおおおお」
あー、うん。何かこう、意欲につながればいいねぇ。
「『じゃ、そのまま今日の魔境掃討はお願い。
一応、ボクらから見える方が掃討範囲ね』」
『はい!』
言葉数は少ないが、マリーはだいぶテンションが上がっているようだ。
魔境の魔物掃討は、このパンドラの大事な業務だ。
エングレイブ王国から正式に請け負って、付近の魔境で実施している。
今のところ予定の効力を発揮しており、満足いただける結果になっているはずだ。
基本的に、船自体を動かせるものが担当となって、ローテーションしてやってる。
ビオラ様、スノー、ボク、ストック、ギンナ、メリア、マリー、エイミーだね。
マドカとアリサ、クエルとシフォリアもできるけど、彼女たちは予備扱い。
ミスティやマリエッタは結晶出力が心もとなく、できるだろうけど控えてもらってる。
まぁやるっつったって、パンドラから全門フルパワーで超過駆動して、魔導発射するだけ。
それでだいたい一方向が、地平線まできれいになる。また湧いてくるけど。
今も下に、みっちりひしめいてる。これが魔境ってもんだよなぁ。
王国の西方と南東の魔境は、全然魔物がいないんだよね。
ここは王国から見れば北西にあたるとこ。
スピリッティアが建ってるとこより、だいぶ北。
聖域ドーンもこの辺までは掃討してないから、結構いるんだよ。
サヴァイヴァーがカッとんで行って、滞空。
その右腕に、四角い魔石神器が集まってきて、棒のように連なっていく。
衝撃干渉のための砲撃口が形成され。
『魔力流投射砲、発射!』
筒の先端から、それなりの大きさの魔石神器が発射され。
轟音を立て、地上に破壊痕を残した。
なお、魔境の地形はどういうわけか、破壊されても数日で割と復旧する。
「…………地形が変わったんだが」
「しばらくすりゃ戻るだろ。
『マリー、高空射撃に切り替えて。
もっと広範囲を巻き込むはずだ。
そのまま、装弾を討ちつくして』」
『わかりました!』
サヴァイヴァーが高度を上げる。
んむ。身軽な感じの動作で見てて美しい。
一応、空中接近戦も可能だし、マリーには試してもらってる。
この辺は少な目だが、空飛ぶ魔物もいるからね。
ああいうのも、ちゃんと撃ち落せるようになってる。
高いところに滞空したサヴァイヴァーが、レールガンをまた発射。
地上にクレーターがいっぱいできる。
『ん……終わりました。
なんか弾多くなかったです?』
「『改良はうまくいったようだ。
弾頭破砕後の復帰時間を短くしたんだ。
最初に撃った弾が、復活して再装填されたんだよ。
もう全弾戻ったんじゃないか?』」
『あ、ほんとです!これ弾切れほとんどしませんねぇ』
「『このままもう少し改良するよ。
ダリア、お待たせ。制圧試験だ。
少しだけ残してね』」
『わかってるわよ。【七の輪よ】』
ダリアが、魔導制御でサヴァイヴァーの機能を起動する。
ブロック状の大小の魔石神器が、サヴァイヴァーの周りに展開していく。
土星の輪って言ったら、イメージが伝わるかね?
そしてあれは、ダリアの発明した補助魔術陣がベースになっている。
『【怪鳥 の 軍勢】』
その一つ一つが、無数の鳥となって飛び立った。
地上を一直線に――魔物に当たるよう、目指していく。
当たった魔物は、融けるようになくなっていった。
「おいハイディ」
「なにストック」
「魔物の魔導抵抗はどこにいった」
「あるよ?抜いてるだけ」
「……さすがダリアだな」
「威力は誰がやっても同じだ。
ダリアがさすがなのは、制御の方。
うち漏らしがほとんどない」
あの魔導式じゃ、こんなに倒せないんだけどね。
実はあれ、神器を中核とし、魔力流が展開。その内側に小さな鳥がいて飛んでる。
史上初、魔力流を打ち出す魔導、といってもいい。
魔物は皮に魔導抵抗や防御力が集中しているので、内側を攻撃すると効果が大きい。
魔力流で皮を破り、内部で魔導を炸裂させるのだ。
その結果、いい感じに目にまで内側から届くと、倒せる。
フロックの魔導そのものが、着弾時に燃え上がるような炎を出すようにしてあるんだよね。
これで倒せる。幾度か実験した通りの結果だ。
もちろん、普通にやるとその神器回収無理じゃろ?ってなる。
そもそも、途中でたぶん壊れる。
サヴァイヴァーは全部復旧して戻ってくるから、この運用が成り立つ。
ほどほどに残った魔物に向けて、サヴァイヴァーが降下していく。
あれだけいたのに、もう数えるほどしかいない。
次の投稿に続きます。




