A-8.同。~その名は不死者~
~~~~マリーとは、結構これからいろいろやることになりそうだ。頑張れ、友よ。
「ほー。で、できたのがあれ、と」
「まぁね」
「赤い普通のモンキーボックスに見えるが?」
「見えるねぇ」
フレームは緑、ボディが赤だ。
なおボックス自体はビリオンに近い。
もっとなめらかな流線形だけど。
外からは見えないけど、すでにマリーとダリアが乗り込んで、準備済み。
魔境でやるわけにもいかんので、パンドラの上部……屋上で試乗となった。
といっても、試験のためにマリーとダリアには十分動かしてもらってるけど。
今日はお披露目というやつだ。
ストック以外にも、パンドラの面々は勢ぞろい。
午後遅く、まだ強めの日差しが照り付けている。
その中で、逸るようにたびたびマリーの愛車が気炎を上げている。
「名前は決まったのか?」
結局、ストックはこいつができるまで忙しいままだった。
だからほとんど関われていない。
ふふん。今日は驚き役に徹してもらうぞ?ストック。
「サヴァイヴァー」
「生存者?」
「そう、不死者」
さ。デモンストレーションの開始だ。
ビオラ様の方を見る。
「じゃ、見せて頂戴」
ビオラ様の手を、スノーがめっちゃがっつり握ってる。
人前だっつーの。
まぁこう、この子はとんでもないものが飛び出すのが怖いんだろうけど。
ボクは眼鏡……サングラス状の透明なやつを取り出し、かけた。
つるのところの先、スイッチを入れて。
…………よし。雑音がとれてきた。つながったな。
「はい。『マリー、聞こえる?』」
『ばっちりです!』
彼女も同じ眼鏡をしている。
ウェイブグラスと名付けた魔道具。
ジドゥさん、エイミーと一緒に作ってみた。
短距離無線通信による、音声通話が可能だ。
魔石神器の貼り付けにつかっている、短距離無線の応用である。
そんなに長距離はいけないが、中継機構を入れた神器経由で、それなりに安定した音声通話が成立する。
つまりまぁ、パンドラとエルピスの間とか。パンドラとあのサヴァイヴァーの間とか。
「『じゃあよろしく。走行テスト、飛行テスト、戦闘テストの順ね』」
『わかりました!』
「まてハイディ。クルマで設けられない試験項目の名が出たが?」
「それがあるんだよ。クルマが飛ばないなんて、誰が決めた?」
「お、おぅ」
ストックが引いてる。珍しい。
『不死者、行きます!』
赤い神器車が、パンドラの屋上を爆走する。
結構なスピードのノリだなぁ。
というかデモも兼ねてるからって、飛ばさなくても。
加速して一気に屋上の端の方まで行き。
一度Uターンしてきて、停車。
また発進。
うん、よどみない。
「『ダリア、ど?』」
『揺れもない、負担もないわ』
結構。
「『マリー、パンドラの上部魔力流をどける。そこから飛べ』」
足元から制御し、魔力流に干渉。
「オーバードライブ。『神力 災害』」
重魔力照射鏡の作成応用で、マリーたちが出られるように穴を開ける。
こうしないと魔力流同士が干渉して、止まっちゃうからね。
『では!【涅槃の彼方より、来たれ】!』
神器車の前後に、同じような神器車が出現し――ばらける。
サヴァイヴァー自体の装甲魔石神器も展開。
互いの魔力流が、特殊な制御で引き合っていく。
互いに引き合い、走行しながら徐々に整っていく形。
形がちょっと特殊で……あー。地球で言う、ホバークラフトってやつだろうか?
ああいう形状をイメージしてほしい。
後部の二つの噴射口が火を吹き、加速。
パンドラから――――飛び立った。
「飛んだー!?」
素直な驚きをありがとうストック。
なお下部にも近い噴射口があり、背面のとここので出力を得て、飛んでいる。
どう飛んでいるのかは……実はボクは分かってなくて。
この辺は、アっさんにお願いした。飛ばしたいって言ったの、あの人なので。
んむ。加速、減速、上昇、下降、旋回も大丈夫そうだな。
通信も切れてない。安定している。
「『マリー、ダリア。ど?』」
『運転する分に問題はないです。
直感的に動かせますしね』
『こちらも、なんでこれ静かで揺れないの?』
その辺は、実はケルケンソさんだ。
船に揺れ防止を入れた話をしたら、思いつかれて実装してくれた。
「『仕様書にかいてあるから、また解説してやるよ。
マリー、そろそろいいだろう。次だ』
皆さんは淵まで移動しましょう」
マリーが飛び立った方ではなく、近い淵の方に皆を誘導する。
一応人が落ちないように柵を立ててあって、その手前までくる。
ボクらの上をサヴァイヴァーが、後ろから前へ飛び去って行った。
次の投稿に続きます。




