A-6.同。~製作陣と詰める~
~~~~人の閃きは美しい、か。きれいな響きで、とてもいいね。
ドライバーのアル……アっさん。この人は聖国出身らしい。
ボクの運転の師。
法衣でも着て大人しくしてれば、かなりの美形で通るんだろうなぁ。
でもこう、本人はとてもロック寄りな人だ。
髪も少し染めてるみたいだし、着てるの作業着ってかツナギっていうか。
なぜだ。
シドゥさんとケルケンソさんは魔都出身オーガ族。
犬歯が牙になったり、角が生えたりする。
ジドゥさんは角があるほう、ケルケンソさんは牙があるほう。
そしてオーク族並みに大柄。もっと筋肉質だけど。
でもお二人とも、荒事より道具弄りが得意だ。
それぞれにテーマをお持ちで、研究もしてる。
アっさんもそうだ。
魔力流を始めとした、流れ……流体研究が専門。
かっこよさそうだから始めたそうだが、内容はガチだ。
宇宙のことも詳しかったし、割と他分野わたって深い知識を修めてる。
「あー、笑った笑った」
マリーが戻ってきた。
目指すところが決まったせいか、最近のマリーはちょっと落ち着いている。
行動は相変わらずこうだが、人前からは逃れようとするあたり、エイミーとは雲泥の差だ。
だがちゃんとした淑女は、そこでにっこり笑って腹の内で爆笑するんやで。
「お帰り、そんなに面白かったか」
「ハイディ最高」
「みんなが出してくれたアイディアやが?」
「それを実際作ろうとしてるところですよ。
普通、笑い飛ばしません?」
「ボクはエイミーの人型魔道具だって、笑わんかったぞ。
アイディアはむしろ、笑えるもののほうが革新的だ。
そこに、実現されてない何かがあるってことだからな」
もちろん、作られてないことには理由がある。
それはやめといたほうがいいって代物なら、ブレーキをかけるが。
単に技術的に無理だから作ってない、ってものなら。やってみなきゃ損だ。
「感心します」
「我々はそこのところ、膠着してますからなぁ」
「いやお二人とも、そんなお年寄りみたいなこといわんで?
説明したとおり、今のボクは25くらいだぞ?」
ジドゥさんもケルケンソさんも、そしてアっさんもまだ30前のはずだ。
「歳の話じゃなく、同じものばかり作ってたもので」
「パンドラでは、やっと意味あるものが作れそうです」
そういや二人とも、魔都で魔道具や神器の量産に関わってたはず……。
ほんとは試作とか開発がやりたくて、それで前のときはクレッセントに入った。
が、滅茶苦茶な組織だったので、さすがに辞めてしまわれた。
ボクに開発の基礎を教えてくれたのは、このお二人なんだよなぁ。
「じゃ、これが第一号ってことで」
「魔道具も組み込んでいいんですか?」
「場合によっては、神器機構に組み込む形で実現します。
というか、結構魔導自体は使うので。
式や制御次第では、分離して魔道具で組み込んだ方がいいかもしれません」
「なるほど。ならいくつか出してみましょう」
まじか。そりゃありがたい。
ジドゥさんは魔道具専門で、通な奴をおつくりだったりしたからなぁ。
楽しみだ。
「神器はほぼ製造だけになるでしょうが……この機構を弄れるのは嬉しいですね。
無数の神器で一つの機能を為すとは」
「ストックの発想ですね。
フェニックスといい、リヴァイヴァーといい、たまにすごいもの出してきます」
「おお。そのあたりも彼女ですか。
工材にも詳しいと聞きますし、一度お話したいですね」
「聖域は計画がまとまったら手を離れるので、直に帰ってきますよ」
ケルケンソさんは神器が専門。
工材も詳しいから、ストックとは確かに、話が合いそうだ。
そしてストック。まだしばらく忙しいんだろうな……。
あんまり帰ってこなかったら、迎えにいってやる。
ストック分は定期的に補給せねばならんのだ。
「ハイディ。俺も何かしたいところだが」
「ああ、じゃあアっさん。かっこいいデザインよろしく」
「俺好みでいいのかよ?」
「マリー?」
「ぜひ!」
そこんとこ、趣味が合うようで何よりだ。
いやまぁ、普通にアっさんはセンスいいデザインをするから、大丈夫だけど。
いろいろ知ってるせいか、無難なものから個性的なものまで、顧客の要望に応じたものが出せる。
前の時間で知った、意外な特技だ。
「あ、私は?」
「マリーは細かいヒアリングをするから。
しばらく毎日時間とって」
「あー。じゃあついでに勉強見てください」
「わかった。学校はど?二人とも」
二か月近い夏季休暇期間が終わった。
なのでダリア、マリー、ベルねぇはパンドラの転送路で学園に通っている。
王立魔導学園は新王都スピリッティアに引っ越し予定だが、まだしばらくかかるらしい。
新王都側に学園施設を建造し、使えるようにした上で、転送路を結び直し、学生を移す。
まぁ王都引っ越し段階で、計画はされてたらしいから。
三人が通ってる間には、移動になるんじゃないかなぁ?
マリーだけは三年で学生終わりだけど、その後教師になるからね。
「変わりなくよ」
「ないですねぇ。ああでも、寮よりやっぱりここの方がいいです」
「それはあるわね。パンドラは快適だわ」
「なんだ、寮は合わなかったか?二人とも」
「アウラ寮はちょっと手入れが行き届いてないもの」
「ああ……そうだった。
シルバ領が滅んでるから、領地から支援がないんだよな。
他の寮は、対応する領の援助があるけど」
次の投稿に続きます。




