A-5.同。~さらなる発想を募る~
~~~~せっかくだからボクもお茶いただくんだった。コーコンスさんのお茶はおいしい。
「話し戻すけど。生体検知は手伝ってもらうとして。
あと何かないかな?」
「マリーちゃんよね?攻撃魔導は難しいなぁ」
マリーは超過駆動での魔導起動はできるが、まともに当たらない。
制御がへたっぴなのだ。
ただ。
「そこは君とマリエッタ、ミスティとメリアあたりと、同じだと思えばいいよ」
「マリーちゃんは運転手……ダリアちゃんが乗るのね?」
「そう。必ずそうとは限らないけど、砲手はいると思っていい」
「じゃあ、フロック入れましょう。ダリアちゃんならある程度いけるし。
あれなら制圧力抜群よ!」
エイミーが得意とするオーバードライブ、『怪鳥 の 軍勢』。
文字通り、鳥のような魔導が無数に飛んでいく技だ。
一つ一つを別の属性や役割にできるため、制御は難しいが便利。
ダリアが使うなら、牽制に持ってこいだろう。
ダリアは大技の印象が強いが、小技の方が得意である。
制御力はミスティの方が上だけど、あれはミスティが極まってるだけだからね……。
今のところボクの知る限り、魔術と魔法と魔道具を同時起動できるのは、彼女だけだ。
エイミーは単一種の魔導の連続・高度制御は得意だけど、多数種は難しいそうだから。
ミスティはこっちで再会してから、一緒に戦闘する機会は少ないけど。
あれで結構な使い手なんだよねぇ。
「そうだね。使ってもらおうか」
「じゃあ書き起こすわ!」
「ボクが清書するから、後で寄越すように」
「うぐぅ。ハイディのレビューはきっついのだけど」
それはたぶん、エイミーをこれまで面倒見て来たマリエッタのが甘いだけだ。
なんとか丁寧に、動くものになるように根気よく付き合ったのだろう。
エイミーの式は、はっきり言って滅茶苦茶である。
時にそれで動くことがあり、本気でわけがわからない。
何せフロックは、彼女がその場改造したものだ。
センスが溢れすぎている。
だが改めて書き起こさせると、動かないものが出てくる。
「君が一から書いたのは動かんじゃろうが。
言っとくが、ダリアに見せたら大変なことになるからな?」
「ふぐぅぅぅ」
ダリアは機能の一つ一つまで、意図をレビューする。
「設計意図は何か」
「どうしてこの方針で実装しようと思ったのか」
「別の方法で実現できないとする根拠は何か」
等、延々と聞かれる。
彼女のあれは、ブレイクスルーのきっかけになるから、とても助かるんだけどね。
一つ一つに意図が、意思が、命が吹き込まれ、形になる。
ま、彼女のとこに持ってくのは、慣れてるボクの役目だ。
「ハイディ、リヴァイヴァーはいれるのよね?」
「うん。あれはいれるよマドカ。マリーからの要望でもある」
「ということは、エルピスでできるっていうのより、もっと過激に使えるわよね?
こう、矢玉にしちゃうとか」
その発想はなかったわ。
射出して遠くに飛ばして破損しても、聖人の力で復帰してくっつくのか。
マリーは投げるのが得意だから、そういうのはよさそうだな。
……いや、かなりやばい攻撃手段になるんでは???
射出する初速によっては、砲撃になるぞ……。
壊れてもいいなら、そういう使い方もできる。
一度だけ見た、クラソーの剣。
引き金を引いて起動する、魔導の銃弾。
銃の機構……爆発の魔導ならある……魔力流を利用して……。
射出……対象指定……壊していいならいっそ……。
「あら。いい着想が得られたようね?ハイディ」
「っとすみません、ワッシーさん」
「いいんですよハイディ。いつだって、人の閃きは美しい」
「ありがとうコーコンスさん。
エイミーとマドカも」
「いいのよ、役に立てたなら嬉しいし」
「私も。こっちもやっておくから、出来上がるの楽しみにしてる。
マリーちゃんのだもんね。がんばらなきゃ」
「ん。じゃあちょっとまとめながら、次を聞きに行ってくるよ」
だいぶ聞けたし、いったん整理したほうがいい。
次は……ダリアかなぁ。
おっと。
せっかくだから、さっき聞いたことを二人にも尋ねるか。
「エイミー、マドカ。質問があるんだけど」
「いいわよ何でも聞いて!」「ハイディが質問なんて、珍しいわね」
「そうでもないさ。ゲームのことなんだよ。
神器ってあったかい?」
マドカは首をひねっている。
エイミーは。
「2にはあるわよ。お金とるし、役にたたないみたい」
「そうなの?3にはないみたい。
でもこの世界には、普通に神器あるわよね。
どうして?」
「1のときも、お金とる産業廃棄物みたいのだったらしくてさ。
こんな便利じゃないんだよ。
だから3で消されたんじゃないか?
ならいっそう発展させて、度肝を抜いてやるとしようかね」
誤魔化すように言って。
「じゃ、またね二人とも」
今度こそ、研究室を後にする。
確かに、エイミーの口からはするっと出て来た。
マドカが悩んだのは、インプットされた知識をさらった上で、ないと結論したからだろう。
こんなに簡単にわかるものを、違った答えを返した奴がいるわけだが。
どういうことだろうねぇ。
どういうことだ、といえば。
エイミーとマドカはどしてここにいたし?
この二人も気が合うのか、たまに一緒なのを見かけるなぁ。
いや、単純にワッシーさんとコーコンスさんのお茶に誘われただけかもしれんけど。
◇ ◇ ◇
「魔力流に沿って動く、流体的防御魔術?
いいでしょ、やってみるわ」
さっすがダリア大先生!
それで。
「なんでマリーはその。
どっかいったの」
ここはいわゆるガレージだ。
隅にはエルピス、あと何台か単車や神器車が置いてある。
ボクがここまでのことを話したら。
マリーはどっか遠くに走って行った。
…………奥からちょっと笑い声が聞こえる。
「私だって正直爆笑したいけど。
まぁマリーのためだし、ぶっ飛んだものが出てくるのはありがたいわ」
そこありがたがんのかよダリア。
「俺はわくわくが止まらないがね、ハイディ。
早く見てみたいところだ。
ジドゥ、ケル、お前たちはどうだ?」
「当然製作には関わらせてくれるんでしょう?腕がなります」
「ええ、お願いしますジドゥさん」
「あなたの神器は、本当に常識を破壊しますね。
最高です」
「ありがとうございます、ケルケンソさん」
この辺の人たちは、パンドラきってのメカ好きだからな。
いい話ができそうだ。
次の投稿に続きます。




