A-4.同。~かつての検討を乗せる~
~~~~別に君の先を越す気はなかったんや。君の着想があったから、辿り着いただけやで。
「私は役に立てそうですね。
人……というか、生物を検知するのでしょう?
エイミーの言っていた、検出通知機能で」
「そうですコーコンスさん。
接近報が欲しいところでして。
ああ……でもそうか。
人体じゃなくて、生物全体にして、魔素の有無で魔物かを区別すればいいのか」
コーコンスさんはリザード族。
鱗のような肌になり、色も青い。
なお、マーマン族というのもあり、ボクは正直リザード族と区別がつかない。
あまり出身氏族のことを尋ねたりすることもないので、関係ある人はデータだけ記憶している感じ。
この方は生物関連の研究が多い。
その都合上、薬師と医師の資格を持っている。
確か魔都、共和国、王国、連邦、帝国のものを持ってたかな……。
聖国は国の資格発行がないので。
つまり全部だ。
勉強・知識の収集に余念がない方でもあるんだよね。
ちなみに二人とも女性だ。
穏やかな淑女である。
「素晴らしい。検知し、その結果に区分を乗せて通知ができればいいですか?」
「そうですね。ほしいデータはその二つ。
ユーザーへの表現は、別に検討しましょう」
「エイミー、手伝ってくれる?」
エイミーがむくりと起き上がってきた。
「はい、コーコンスさん!」
「あら、エイミーをコーに取られてしまったわ」
「シー。この子はマリエッタのものです。そうでしょう?」
「そうね」
コーコンスさんとワッシーさんが、優雅にお茶を飲みながら微笑んでおられる。
「ワッシーさん、いろんなものの検出やってみましょうよ!
同じ魔導でも、結構違いが出ますし」
「わかったわエイミー。ふふ。早速手伝うことになったわね」
エイミー。それダンジョンに魔物とか眷属検知に行ったりするってことかい?
行くんだろうなぁ。割とビビりなのに、やるとなったら覚悟の決まる子だし。
そういえば、こういうとこマリーの逆だなぁ。
エイミーは前向きだけど、腰が引けてる。でも進む。
マリーは後ろ向きだけど、とても前のめりだ。
だからあのひねくれものが素直に「お友達」って言ってるのかもなぁ。
「エイミー、それ人はともかく、眷属とかならダンジョンでしょ?
都合が合えば私も行ってあげるけど、マリエッタとかにも声かけなさいよ?」
「大丈夫よマドカ!クルマさえあればへっちゃらよ!!」
「油断するなしエイミー。
最低でも、クルマがばらされても、君らを助けて逃げかえれる人間を連れてけ」
「クルマ……いやいや、壊されないでしょ」
「壊されるよ。ダンジョンには稀に、スローポークって特殊な魔物が突然出る。
魔力流と魔導が効かない」
「え”」
懐かしい。ミスティとこの時間で再会したときのことだ。
魔導も効かないし、ミスティにとっては天敵だよなぁ。
今は呪層火砲もあるから、倒せないってこともないけど。
「ハイディ、呪層火砲で倒せるんじゃない?」
「うん。ただ早くしないと、地面を叩いて車体をひっくり返してくる。
上下ひっくり返ると詰んじゃうかもしれないから、気を付けたほうがいい」
「なるほど。もしかしてハイディ、戦ったことあるの?」
「あるよ。結構遭遇してる」
「えぇ~……」
マドカが微妙に引いてる。
「…………あたし気になるのだけどハイディ。どうやって倒してるの?それ。
魔物、なのよね?」
「はい、ワッシーさん。だから素手は無理なので。クルマで轢きます」
「「「「轢く」」」」
「弱点があるんだよ。そこになんとか体当たりすればいい。
ああエイミー、自分でやろうとするなよ?
ボクもできるだけであって、あんまりやりたくはない」
今のところ、成功率100%だけどね。
マリエッタならできそうだけど、エイミーじゃ難しかろう。
「ハイディ、アルに運転習ってたってだけはありますね……。
私も存在は知ってますが、あれを轢くんですか。
首ですよね?」
コーコンスさんが不思議そうにしている。というか引いてる。
パンドラの人らには、呪いの子を始め、いくつかの情報は共有してある。
何もかも話してないけどね。
ボクが皆と前の時間で知り合い、という点は言ってあるんだよ。
大変お世話になった、ともね。
ふふ……やっとお礼が言えて、ちょっと嬉しかった。
「首です。それなりの広さがあればジャンプしますし。
そうでなければ、普通に轢いて転ばせたところを狙います。
転んだ頭は狙いにくいですけど、何度かやってれば、倒せますよ」
神器車はちょっと浮いてるから、地面に伏せられてると当たらないことがあるんだよね。
単車の場合はタイヤ状の魔力流が出て接地するけど、魔力流なのであれで轢いても意味がない。
車体を当てないといけない。そこがちょっと難しい。
「地面を叩いてくるのは、どう対処するんです?」
「壁か天井を走ります。同じ面じゃなければ、振動が弱まって転びません」
「「「「?????」」」」
そんな不思議なことかなぁ?
クルマの魔力流には、微妙な吸着力みたいなのがあるから、割とそういう走り方ができる。
マリエッタが単車で屋根を跳ねまわったのだって、そうだ。
この吸着力がないと、着地したら反動ですごいことになるからね。
次の投稿に続きます。




