X-3.同。~また、次の使命の時まで~【スノー視点】
~~~~正直、奴らが王国の敵に回ったという前の時間は、悪夢だったろうな。それを制したという姉のことは……もう考えたくもない。
これで次回作からの戦力投入、『アーカイブ』による事件再現の発生はなくなった。
クストの根の殲滅により、ある意味根本的な解決も成った。
ヴァイオレットとミスティが中心になって進めている計画も、順調だそうだ。
だが3の……東宮が野放しというのは、よくはないな。
結晶兵周りの改造技術は、その作品が初出。つまり、奴の管轄だ。
西宮は東宮の用意した手ごまを、使っていたにすぎない。
なんとか、追い詰めねば。
神主がいなくなれば……請け負ったこちらの仕事は終わりだ。
地球からの干渉も、止まるだろう。
最初は1の神主……中宮を消して、それで終わりかと思ったのに。
少し長い旅路に、なったものだ。
だが。
隣のビオラを見る。
悪くない、旅になった。
「そう難しい顔をなさらないで、我が君。
問題があるなら、それは然るべきところに投げましょう。
例えば、彼ら」
ラリーアラウンドの連中を、ビオラがそっと見る。
「例えば、我らが紫」
姉と……その伴侶か。
あと多少、ヴァイオレットも当てにしろ、ということか。
自分で何もかもやろうとするのは、悪い癖、だな。
「姉上は嫌がりそうだが」
「喜ぶことを提示すれば、あとは勝手に全部やってくれますよ」
「あと何すれば喜ぶんだ、あの人は。
さすがに察しがつかんぞ?」
「そういうのは、自分で見つけてきます。
こちらはその、後押しをするだけです」
……不安だ。
とんでもないもの、発明して来たりしないだろうな?
あのエルピスだけで、時代の針がどれだけ進んだか、わからんぞ。
ま、いいか。
今懸念することでも、あるまい。
「では、息災でな。しばらくは休暇だ」
ラリーアラウンドと別れ、神器車の運転席に滑り込む。
ビオラが助手席に乗り込んできた。
……なるほど。当たり前にこうされるのは、悪くないな。
「なんでしょう?」
「いや。エリアルを待って、行くか。
姉上たちの方は?」
「あの二人、クストの根の中に、自分たちの娘を助けに行きましたよ」
「……は?むすめ??」
「私もわからないので、帰ってきたら聞きましょう」
ビオラが楽しそうに笑っている。
欠片も、彼女たちが戻らないなどと、思っていないようだ。
「根自体は沈黙。あとは止めだけです。作戦は完了ですね」
「ああ。根の攻略を行うという情報で奴をおびき出し、誘導。
要となる再現点を姉上らに潰してもらいつつ、根と奴自身を撃破。
うまくいったな」
情報を流せば、根の移動を試みつつ、状況の好転を狙うと考えた。
エルピスおよび、パンドラの建造もまた、いい餌になった。
あれらがクストの根攻略の、鍵だと思われたようだからな。
もちろん、実際にそれで行いはしたが。
攻略の鍵など、そんなの姉上自身に決まっているのだがな。
「あまり、関心がなさそうですね?」
「そう見えるか?いや、それはそうだろう。
私の関心ごとは、ビオラ。お前だけだ」
「っ」
「今回のだって、お前と会うのが主題で、あとは些事に過ぎない。
ま、次は少し先だが、社交披露だな。
お前を広く、私のものだと知らしめなくては」
「…………スノーは、そういうとこハイディとそっくりです」
何かビオラが小さくなっている。
かわいい。
お、エリアルが後部座席に入ってきた。
ビオラが真っ赤になって、驚き竦んでいる。
そこまで反応しなくても。
「どうかされました?」
わかってるだろうに聞くのか。
この女、割といい性格してる。
「いや。そちらはもういいのか?」
「はい。あと三年は戦えます」
「もっと頻繁に会ってやれ……」
面倒な奴らめ。
さて、舟に戻って、エルピスをパンドラに返しに行かなくては。
ああ、そういえはその後は、姉上との公式な『再会』もあるな。
くく。ダンがどんな顔をするか、今から楽しみだ。
あいつにだけ、ハイディが姉だとは言ってないからな。
荒野に、クルマを滑らせる。
……そうだ。これは単なる思い付きだが。
「余裕があるうちに、二人旅でもしておくか。ビオラ」
「ひゃい!?」
「正式に精霊と契約したら、王国からは出辛くなる。
なら、気ままに諸国や荒野を駆けるなら、今の内だ」
「恐れながら殿下。
気軽に荒野に出られるのは、ハイディとストックだからですよ?」
「そうでもないさ。我が妃は、まぎれもなく最強の神器使いだ。
私自身はミソッカスだが、旅くらいは問題ないさ」
「が、がんばりましゅ」
噛んだ。かわいいか。
しかも意外に前向きなのか。
いかんな。ちょっと滾りそうだ。
次の投稿に続きます。




