表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
322/518

29-2.同。~時を越えての再会~

~~~~最近とんと聞かない男女間……他所より問題しか感じない。なぜだ。


「じゃあボクが言っておきますので。


 大丈夫ですよ。ベルねぇも、母親の恋愛どころでは、ないでしょうから」


「ああ……いやまってやっぱりちょっと怖いわ」


「怖気づくなし。大公家辞めてまで突っ走るんだから、覚悟決めてください」


「くぅぅぅぅぅ」



 おっといかん。話している間に、予定のとこまでほど近い。


 目の前に迫ってきた船の魔力流に……そのままゆっくりとパンドラを合わせていく。



 このスピリッティアという新型聖域は、多数の中型神器船で構成されている。


 その一つ一つの型が、基本的にパンドラと同じ。なので、簡単に接舷した上で、内部から行き来できる。



 一度魔力流が接触し、船体が停止。


 そこからゆっくりと近づき、魔力流自体が聖域に組み込まれていく。


 ぴたりと合わせて、端末から接合の魔導を起動。



 これで、パンドラ下部のドックとつながったはずだ。



『パンドラ、聖域スピリッティアに接合。


 本艦はこれより予定通り停泊いたします。


 スピリッティアと行き来する場合は、5番ドックを使用してください。


 停泊中、船外に出る場合は8番ドックからです』



 さて。ボクもいかなくては。



「エリアル様は、ビオラ様に着くんですね?」


「ええ。私は謁見はしないけど。また後程」


「はい」



 ようやく、感動のご対面ってやつですよ!




  ◇  ◇  ◇ 




 ええ、感動の対面ではありました。


 時間をかけて整えられたドレスは、今ぎゅっとされてくしゃっとなりましたが。


 涙とかべったりついてそうですが。



 かーちゃんよ。ノータイムでこうこられると、娘はどうしていいかわかりません。


 思考が思わず、ここ数時間のことに飛んでいく。



 まだ街並みもほとんどできていない、新王都を行き。


 スピリッティア中央あたりに鎮座している、新王城に来た。


 もちろん、船の上、甲板にあたるところは魔力流が出ちゃうので、下の構造の中にある。



 元の王城ほど背が高くないが、それでもご立派な建物だった。



 ボクらは正装に整えられた上で、謁見の間へ。


 そこは、広くはとってあるが、兵や重鎮がずらっといるわけでもなく。


 いるのは関係者だけだった。



 まずロイド家。ヴァイオレット様と……宰相のキース様。


 灰目、後ろに撫でつけた灰髪、伸びた背筋と堂々たる態度。あとめっちゃ美形。


 お会いするのはしばらくぶりだ。聖域ユリシーズにもたびたび来ていた。



 それからもう一人。ストックのお兄さま、アスロット様。


 キース様に似ているが、もうちょっと背が高い。


 貴族服の正装ではなく、国防の青い制服、しかも儀礼用か。



 それからファイア家。


 っつっても奥方のケイト様は来てないので、コーカス・ファイア大公閣下おひとり。


 ダンの後見だし、この聖域建造の立役者の一人だ。そらいないとね。



 で、王子三人。ダンとカーティスとバイロン。


 ダン、ボクを見てめっちゃ目を丸くしとる。


 まぁかーちゃんがボクにノータイムで抱き着いたら、そうなるわな。



 あとはまぁ、こちら側だ。



 ボクとストック。スノーとビオラ様。


 メリアとミスティもいるが、これはメリアがロイドの子だから。


 大公がいるので、娘のギンナもいる。ベルねぇやエリアル様は外だ。



 そして後は、クエルとシフォリア。


 よかったよ、君らの着飾った姿が、あっという間に崩されなくて。


 でもなんか、紹介したら同じ目に遭いそうだなぁ。



 この場の名目は、ボクと家族の再会だ。


 それに加えて、ストック、クエル、シフォリアの紹介。


 スノーからビオラ様の紹介。



 紹介ぃ、したいんだけどねぇ。


 これは、もうちょっと無理かなぁ。


 めっちゃ泣かれてるし。思わず頭なでなでしてるよ。ボク。



 その涙の止まらないかーちゃんの肩に、とーちゃんがそっと手を置く。



「アリシア。あまり娘を困らせてはいけない」


「んぐぅぅぅぅ。でぇもぉ」



 顔が涙まみれた。鼻から出たモノが、やっぱりボクの服から繋がってる。


 さっとハンカチを二つとりだし、一つでとりあえず互いについてるものを拭う。


 もう一つをお渡しする。



 いい勢いで鼻をかまれた。三枚目を出して交換し、しまう。


 しまったなぁ。あと三枚しかないんだけど。大丈夫かしら。



 おや、涙止まったぞ。



「……大丈夫ですか?」


「あまりに娘がおかんみ溢れるので、我に帰っちゃった。すん。


 ありがとう。何て呼べばいい?」


「ハイディ、と」



 ウィスタリアと名付けたのは、エリアル様だ。


 王国では名づけ前に浚われているので、本当は名前がない。



 そして聖国の浚われた先では、名を呼ばれてはいなかった。


 ボクを連れ出すとき、その家では絶対呼ばれない名前として、エリアル様が名付けたのだ。


 まぁ、あの方の力で役の名を見抜いた、という点もあるだろうけど。



 連れ去られていた先は、ウィスタリア聖国の特別枢機卿、エナー・オフ・ウィスタリアの家。


 家名がウィスタリアだから、その家の子がウィスタリアという名前になるわけもない。



 で。その役はもう終わったので。


 ボクはこれから、正真正銘の「ハイディ」だ。



「アリシア。アリシア・ロズ・エングレイブよ。ハイディ」


「オズワルド・フル・エングレイブだ。会いに来るのが遅くなって、すまない」



 金髪碧眼の二人が、丁寧にボクに自己紹介してくれた。


 彼らは王家精霊との契約により、生まれと髪や目の色が違う、らしい。



「いいえ。ただいま戻りました。お父さま、お母さま」



 改めて……柔らかく、二人に抱きしめられた。


 王族って、こういうことするイメージじゃないんだけどなぁ。


 ……とても、暖かい。



 25年以上もかかって。


 やっと、帰ってこれたんだ。

次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 愛情豊かな王族だなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ