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28-4.同。~まだ何かあるのならば、これから備えよう~

~~~~ストックの為したことが、一つの活路になっている。きっと、破滅は越えられる。


 二人が生きて10歳を迎えることは、精霊が確認している、ということだ。


 周りの状況は変わるかもしれないが。


 例えば……ストックの生存。



 この場では言わないでおくが、ストックに記憶が流れ込まなかったのは、変だ。


 だがこの子があと20年生きられるか不透明なら、同じ記憶がないのは頷ける。


 二人が生まれてくれる以上、9年後……くらいまでは大丈夫なんだろうけど。



 あるいは二人にもストックの記憶があるわけだから、19年後くらいかな?


 公契約の前後が、怪しいんじゃないかと思う。



 というわけで、対策は今すぐにでもとっていく。


 ストックのいない未来を、作るわけにはいかない。



 では……そうだな。



「今ボクの頭の中にある、切り札になりそうな存在の有無を聞いておくか。


 二人とも、魔素と魔結晶を結合させる要素の発見というのは聞いたことがあるか?」



 二人して首を振った。


 なんてこった。ここからか。



「もちろん、小型核融合炉なんて聞いたことがないね?」



 ぶんぶん振られた。



「あー……じゃあ、『ナノマシン』」


「あ、ボクはあります。でも、うまくいかなかったって」


「理由は分かる?」


「え、あ。さっきの、魔素と魔結晶を結合?させる何かがあって?


 それが邪魔してる、とかお母さまが呟いてた記憶が」



 なるほど。



 そもそも、魔素を含む魔石を始めとした神器工材と、魔結晶は互いにくっつくような性質のものじゃない。


 だが神器車には埋め込んだりするし、しかも取り出したりもできる。


 その時は特殊な結合状態だ。なぜそうなるのか、具体的なところはこれまでの世で解明されていない。



 やはり二つを結合させる特別な元素がある。そのサイズが、ナノ単位より当然に小さい。


 ボクが作っているのは、それらの最小単位を加味して作っていない。


 今のところは不都合は生じていないが……このままだと、勝手な働きをされるということか。



 その結合元素が思ったより付着してしまっていたり、逆に足りなかったりすれば。


 予定の機能を発揮しない。


 そしてこのあたりが、神器自体の製造揺れの大きな原因になってそうだな。



「ありがとう。じゃあ結合元素からだな。


 マリーに手伝ってもらうかぁ」


「……お父さま、お母さまは何を作ろうとしてるの?」


「さぁ、さすがに私にもわからん」


「二人とも、最小単位の神器、ですよ。目に見えない」


「「??????」」



 二人が疑問符浮かべてるのはたぶん、何でそんなもの作るん??というあたりだろうなぁ。



 ま。結合元素まではともかく、その先は予算とらないでひっそりやるか。


 そして用が済んだら、葬っておくとしよう。



 ボクにだって、分別らしきものはあるのだ。


 どう考えてもそれらは、人類にはまだ早いだろう。




  ◇  ◇  ◇ 




 夜。


 夕飯時にメリアにわびを入れて。


 改めて二人は、彼女のご飯をごちそうになって。



 それから。



 今日は二人、なかなか寝付かなかった。


 たくさん話を聞いた。


 なんで喧嘩したのかも聞いた。



 自分に食べ物を譲って死んでしまったシフォリアが、許せなかったクエル。


 自分をかばって死んでしまったクエルが、許せなかったシフォリア。


 …………優しい子たちだこと。



 さっさと死んだボクらのことを責めても、よかったんやで?


 人の膝を枕にしているクエルの短い髪を、優しく撫でる。


 手を握って離さないシフォリアを、少し握り返す。



「未来は、厳しいな」



 そして沈痛な面持ちのストック。


 おいこら。パパがそんなでどうする。



 少し、声を落として。



「そもそも、ボクは子どもすら持てなかったんだぞ?


 そしてそれを言うなら、最初は破滅して必ず死ぬ役だった。


 二人が見せてくれたのは、それに比べりゃずいぶん明るい未来じゃないか。


 少し、眩しいくらいだ」


「そう……そうだな」



 しょうがないやつめ。


 自分がもどかしいんだろ?


 わかるよ。ボクも君のために何もできなくて、もどかしかった。



 けど、君一人を置いて行ったりはしない。


 一緒だ。ストック。



「大丈夫だ、ストック。


 ボクは絶対に君の子を産むし、今の二人も諦めない。


 君のためにできることは、一つ残らず全部やりたい。


 …………ちょっとわがままなお嫁さん過ぎるかな?」



 おう、ストック真っ赤になってる。


 かわよ。



「~~~~っ。そんな、ことは、ない。


 私だって、同じ気持ちだ。


 何なら、その。私も、だな」



 ふふーん?まぁ君も女の子だもんな。



「いいよ。どうなるかわからないけど。


 できるのであれば」


「ああ……」



 めっちゃ悶えてるし。


 これは……いいなぁ。



 うん。


 必ずやり果たそう。


 絶対に大事なものを守るんだ。



「ボクの描いているいくつかのものは、君にも徐々に共有しておく。


 ボクがダメなら、君がやれ」


「おい、それはっ」


「ああ、そういう意味じゃねーよストック」



 小声で声を荒げるストックを、押しとどめる。



「ボクに何かあってまで、生きてろなんてひどいこと言わない。


 けどどっちかがどっかで詰まるなら。


 二人合わせてか、もしくはもう片方が。


 未来を切り開くんだ。


 何本でも、障害を打ち破る剣を作って。


 力を尽くそう」



 やりたいことは、それなりにあるんだ。


 分担するか、一緒にやるかはともかく。


 一人じゃ、手が足りない。



 もちろん、いくらかは友達にも手伝ってもらうけど。


 ちょっと核心部分は……影響が大きすぎる。


 公表できないものになる。



 付き合ってもらうことになるかも、しれないけど。


 …………いや。適任がいるなら、躊躇うべきではないか。


 彼女たちの未来だってかかっているのだ。秘するべきではない。



 借りられる手はすべて借りて。


 使える力は、すべて尽くして。


 やり遂げよう。

次の投稿に続きます。


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