表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/518

6.西方領モンストン東端、領都。近郊ダンジョンへ。

――――ボクは焼き豚より角煮派だが、この水分の抜けたやつはなんて呼べばいいんだ?

 モンストン領の放射道――中央の王都から、外縁部の国境へ伸びている道には、いくつかの街がある。


 貴族の治めていない、宿場町もあるが……三つの環状道の交差には、大きな街が築かれている。



 ここはその一つ。領都モンストン。


 内環道と放射道の交差にある、モンストン領で国中央の王都に最も近い街だ。



 南門で検めを受けて――この領の侯爵令嬢が乗っているので、素通しとなった。


 話も行ってたらしい。面倒がなくて何よりだ。



 今日は一泊し、明日西門から出る予定だ。


 街の中心は混むそうなので、途中で中央の通りから左折して、環状の道に入った。


 馬車も通るし、人も割といるので、ゆっくりと進む。



 モンストン領はあと、中環道との交差にパールという街があって、外環道は領端近くなので、シャドウだ。


 両方とも、確か伯爵家の治める街だったとは思う。



 旅程については、今日はこのモンストンで一泊。明日はパールに向かうが、たぶんその前の宿場町までだろう。


 その後、パール、また宿場、そしてシャドウという流れだろうな。都合、五泊くらいか?


 急げば一日で走破できるんだが、せっかくだから領内を見せたいというので、お嬢様の勧めに従うことにした。



 ……おまちを。ならなぜ今、実家に案内されてないんだ。


 ボクもあんまり詳しくはないが、確か街の中央付近に領主の本邸があるもんじゃなかったか?


 ニキスは領都に寄らなかったからわからないが、ファイアはそうだったぞ。



「ストック。今日はどこに泊まるの?」


「西門側で宿を探そう。駐車場があるようなところは、埋まりづらい。


 多少高いが、そこで見繕おう」



 やっぱり実家に泊まる気がねぇし。



 なお、路銀はストックが持ってる。


 子どものお小遣いレベルではないが、どっかで稼いできたんだろうか。


 必要ならともかく、あまり人の施しを喜ぶ子ではない。



「…………実家に行かないのはなぜだね」


「家族は誰もいないしな。お父さまは王都だし、お母さまはドーンだ。


 お兄さまも王都の宿舎でな。国防省に入ってる」



 じゃあここの屋敷は空やんけ。



「当家の執事頭はいるがね」


「なおのことお嬢様が使わなくてどうする」


「屋敷だとさすがにどこに行っても使用人がいるが、聞かせたいのか?」


「何を聞かせる気だよ……。


 なるほど。落ち着かないんだな。わかったよ」


「肩が凝るほどではないが、私もこっちの方が気楽だ」



 学園じゃ、いつもあんなに完璧なお嬢様だったのにな。


 今は野生の四歳児を謳歌しすぎて、ぐんにゃりくつろいでる。


 神器車は基本的に外から中は見えないけど、それにしたってはしたない。脚開き過ぎだぞお嬢様。



 おっとそうだ。四歳と言えば。



「ストック。来月3の日はどうする?」


「どうするって……」


「ボクと君の誕生日だよ。旅程としては、ドーンに入った後だけど」



 ボクらは同じ誕生日。6の月3の日生まれだ。



「誕生日なんて、祝うことのほうが少ないから忘れていたよ。


 なら、3の日にドーンのお母さまのところを、旅のゴールするという方向で」


「その心は?」


「この旅が祝いだ。誕生日当日までしっかり使って、楽しくやろう」



 ほんと、楽しそうな顔しよって。



 話しながら環状通りから左折し、直線に入る。


 真っ直ぐ進めば、そのうち西門だ。


 西寄りはなるほど、宿が多そうだ。



「じゃあモンストン領のうまいものを、しっかり食べていくとしよう。


 でもここ、名産なんだっけ?」


「高いぞ?魔物の加工肉だからな」


「ん……おいしいけど高いな。一食くらいにするか」



 魔物肉は、獣肉と違って複雑な味がする。魔物ごとにも味が違う。


 そしておいしい。高い。加工品が贈答用に売られていたりする。


 庶民でもお金を払えば買えるので、手に入らないわけではないが……食卓には上らんな。



「パールかシャドウなら、イスターン寄りの文化が入ってる。


 そこでゆっくりお茶するというのはどうだ?」


「いいね。連邦式の茶会は経験がない」



 イスターンは……地球で言うところの、イギリスってとこにちょっと文化が近い。いや、日本か?


 島国ってわけじゃないんだけど孤立した領土で、文化が独特。


 飯には異常なほど執着してる感じはある。長期休暇が楽しみだ。



「あとちょっと文句言いたいんだけど」


「なんだ?」


「ボクは学園にいる間、君のお祝いを欠かせたことはないだろ。


 誕生日、忘れんなよ」



 君自身のもそうだけど。


 ボクのを忘れるんじゃねぇ。


 そこはボク、文句言っても許されると思う。



「いつもお前が言い出すから、自分で覚えられないんだよ。


 だがいつまでもそれは不甲斐ないな……来年は少し、準備でもしてみるか」


「楽しみにしておくよ」


次の投稿に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
[一言] 4歳児でタグ持ってるのに突っ込みはなし?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ