26-4.同。~二人が重なり合う、理由~
~~~~これからの未来が楽しみだ。いろんな意味で。
「君が女の子だからいいんだよ。そこ言ってなかったか?」
「逆なら聞いたぞ。ストレートだろうに」
おっとそういわれて見ればそうだったか。
だがしかし。
「ボクがストレート……異性愛者で、ボクらが女だからいいんだよ」
「よくわからん」
ああやっぱり。ストックには未来の記憶は流れ込んでないんだな。
あんなに言ってあげたのに、覚えてないなんて。
いいね。また言った時の反応が、楽しめるのか。
「ストックのえっち」
また盛大に吹いた。
「ボクには、未来の記憶が結構流れ込んでる。
あの子たちのことが中心だから、それ以外のことはほとんどわからないけど」
前置きし、一息入れる。
「君が男だったら、ボクはこの年ですら貞操が危うかったかもしれないぞ?」
「そんなに私は、はしたないのか」
「別に寝床なら構わんでしょ。
そうではなくてね。未来で君に聞いたんだよ。
とっても我慢してたことも。
それでも待てって言われて辛かったことも。
――――それがたまらなく興奮したことも」
「っ」
ストックは、待たされると燃えるらしい。
ボクにそっくりだ。
彼女の唇に、人差し指で触れる。
「だからこれは、ちゃんと言ってあげないとね」
彼女を正面から見つめる。
その目の奥を。
……少し、欲濡れた目で。
「待って、ストック。あと七年。
ボクらが同時に15になる、その日まで。
その日が来たら、子どもができちゃうくらい……ボクを滅茶苦茶にしていいからね?」
「はい、でぃ」
いつも誕生日にそうするように。
耳元まで、顔を、口を、近づける。
「代わりに、ボクが言ったことを教えてあげる。
ボクはね、ストック――――」
――――焦らされると、たまらないんだ。
そっと囁く。
身を離すと、ストックが真っ赤になって、潤んだ目でボクを見ていた。
ふふ。ボクしか映ってない。
実に、良い。
彼女がボクの頬をそっと撫で……ボクがしたように、唇を、親指でなぞる。
そしてその手でボクの手をとって、さっき彼女の唇を撫でた人差し指に、親指を合わせた。
指を深く、絡めてくる。
「男女だったら、こうはならんやろ?ボクも詳しくは知らんが」
「ならない、だろうな」
「ボクはこういうのがいいんだよ」
「なんだそうだったのか」
「言ってなくてごめんね。
ボクはストレートだ。同性を、好きになることなんてない。
場合によっては、嫌悪すらするだろう。
でもね」
彼女のもう一方の手もとり、そちらも深く絡める。
「ここまで良い仲になっても、あまり想いを伝え合わないのも。
恋人ではなく、相棒という関係なのも。
15まで、この先がお預けなのも。
女同士であることすらも。
すべてがボクを、君の虜にしている」
本当に我ながら――業の深い女だ。
めんどくさくてごめんね、ストック。
君もそこがいいって顔してるけど。
「15になった後が、少々怖いな?それは」
「大丈夫。今すぐ押し倒したって、死んでもそばにいるよ。
ただそうしてくれた方が……ボクがもっと幸せだってだけ」
「ふふ。なんてこと言うんだ。
そう言われたら――待つしかないじゃないか」
なんて蕩けた顔して言うのさ、ストック。
忘れてるかもしれないけど、ボクら今八歳やからな?
「では私からも、改めて言おうか。
私は女性を好ましく思う。
お前が男だったら、私だって逃げるだろうさ。
そしてそれが女の象徴とまでは言わんが――」
片方の手を解いて、ボクのおなかをそっと撫でた。
……こら。なんだその撫で方は。
君結構、むっつりだろう。
「奪われるとなって、盾にされて、許せるものではない。
自分も女だからこそ、強くそう思う」
「言ってもいいのに。『私のものに手を出しやがって』って」
「それはまだ、待たせておくれ」
「ん……しょうがないなぁ」
もう。二人そろってにやにやしちゃう。
ものにしたことの、どうしようもない証拠が、もうあるっていうのに。
「待ち遠しい――たまらない」
そういうこと囁くように言うなし。ぞくぞくするから。
「そういえば、最初のは何だったんだ?」
ああ、君が救えれば、か。
「ん?んー……思えば遠くに来たもんだ、かな?」
「ああ。その初心を覚えているのならばこそ、信じて欲しかったがな?
お前の救いとなるために、私は死なない。必ず帰ってくる」
「信じてるよ。それはそれとして、そばにいないのは寂しいんだよ」
「そんなに寂しがりやだったか?」
「君のがうつったんだよ」
「……そんなに寂しがりやだったか?」
「だったよ。学園じゃいつもボクを探してた。
そんなに恋しかったのかよ」
「そうだとも」
「いつもどっかに行っちゃってごめんね」
「その分は今、そばにいてくれてる。
だが……これから少し、忙しくなりそうだな?」
離れなきゃいけないほどでは、ないと思うけどなぁ。
別々のとこでやらなきゃいけないことは、ある。
でもそれを、ボクらが一人ずつ担当する意味はない。
次投稿をもって、本話は完了です。




