26-2.同。~娘たちを迎え入れるにあたって~
~~~~さっぱりして、綺麗でかわいい二人になった。ほんと、ストック似で眼福だ。
「そうかぁ。シフォリア。いつまでいられる感じ?」
「ん?んー……お母さまが私らを産んだら、元の時間に帰ると思います」
なるほど。同じ存在は、同じ時代にはいられないのかな。
そしてこっちで過ごした記憶を持って、この子たちは10歳から先の時間に帰る感じだろうか。
やはりこう、近い原理だけど呪いの子とは違う。どちらかといえば、マドカやアリサに似た状態なのだろう。
マドカとアリサの場合、この時間が「ゲーム」とはつながらなくなったから、同じことは起きない。
ただこの子たちの場合は、ゲームとは関係なく、ボクとストックによる決まった未来とのつながりから来ている。
だから、ボクが子どもを産んだら元の時間に帰る、ということになるのだろう。
なお余談だが。まだはっきりとはしてないんだけど。
シフォリアにはおそらく、知り得ないことを知るいずれかの力がある。
どうもエリアル様に近いっぽいんだけどね。
しかし、産むまでかぁ。ボクまだ八歳なんやが。
「あと10年くらいはあるじゃねーか。
そりゃ困ったな。王国民にするとややこしいし、魔都民に――あ、ダメだ」
「ん?魔都なら適当だから、好きに潜り込ませられるけど?」
上司がすごいこと言ってるけど、違うんだわ。魔都の問題じゃない。
「そうじゃない。リア、エル。誕生日、8の月20の日だよね?」
「そうだよ」「そうです」
まだしばらく先。そしてこの子たちはすでに10歳。
「アウト。公契約したね?昨年末に」
「しました」「したねぇ」
「この子らばっちり王国民だわ……」
ボクもストックも王国民で、国を出る理由はさすがにないだろう。
法律は変わってるんだし、女同士でも結婚はできる。
子どもはまぁ……信じられないことに、できてしまったけれど。
とにかく、ボクが自然妊娠して産んだ子である以上、この子らは王国民。
しかも10歳過ぎちゃってる。10になる歳の年末に行うんだよね、公契約……。
王国民登録だけの10歳未満とは、だいぶ話が変わってくる。
「時間を戻ったんなら、関係ないんじゃないの??」
「そんなことないでしょビオラ様。
自分が精霊の子だって忘れてる?」
「あ、あー……そうか。
精霊には、時間があんまり関係ないものね」
「10歳未満ならまだしも、10歳での公契約はいろいろ関わるから精霊にばれやすい。
存在しない人間が契約されてるって、契約省側で大騒ぎになる。
しょうがないなぁ」
「ハイディ。今度は何すんの?」
「ん?もうやってもらってるんだよ、マドカ。いろいろとね。
……ストック。いいよ、こっちおいで」
ストックが正座から直って、足をちょっとさすってからこっち来た。
素直ないい子。
「改めて。ボクの実家にご挨拶だ。心しておけ」
「ぐ。緊張するな」
「ボクだって初顔合わせやぞ?一緒に緊張して。
君が守ってくれた、ボクらの娘たちのためだから、頑張って頂戴」
「わかった。だが……二人のこと、何とかできるのか?」
「いや、精霊の管轄が違う。ウィスプの契約だから、そこは何ともできない。
ただ、王国でこの子たちを頼らせるなら、そこしかない」
「実家?ハイディって聖国の生まれなんじゃないの??」
えっとマドカには……説明してなかったか。
クレッセントとか、その辺のことは触れた記憶があるけど。
「ああ、それゲーム情報か。マドカ、ボクは王国民だよ」
「そうなんだ。というかストックが緊張って、もしかして大公家とか?」
「ある程度合ってるけど違うよー。偉いけど貴族じゃない」
「きぞくじゃ、ない??」
マドカが黙って、青くなった。
アリサも、うそぉって顔してる。
そりゃそうは見えなかろうしな?見えちゃまずいし。
「ボクの名はウィスタリア・エングレイブ。
三つ子のうち、最初に取り上げられた赤子で、死産を告げられた。
実際には生きており、そのまま聖国に浚われたんだ」
「王、女?」
「そうだよ。
しかもボクがお姉ちゃん」
「あ”!そういえばスノー!!
エングレイブって名乗ってた!
あの子も王女!!??」
「ああ、はっきり言ってなかったっけ。そうだよ」
「ふぁあああああ!!!!
あ!ビリオンがオウサマって言ってたのそういうことなの!!??」
マドカが錯乱しておる。
だが言ってる内容はまぁ合ってる。
ついこないだのこととはいえ、よく覚えてるな。
「あー……そういう。
理由はその、わからないが。
王太子と王太子妃、なのか」
「まだ婚約だけど、精霊に祝福されたから、決まりだね」
「「えぇ~……」」
二人で静かに引いていく。
なんだ。ほんとに気づいておられなかったのか。
そういやこの子らは東方出で、王国のことはあまり知らんのだな。
というか君ら、周り王女とか貴族だらけじゃんよ。
今更そんな驚くことかねぇ。
「さて。では安全な実家訪問の手配。
もう大詰めという話だったけど、頼めるね?ストック」
ストックは少し笑って、肩をすくめた。
「もちろんだ。ついでにしっかり、エスコートしてやろう」
いいね。そいつは楽しみだ。
…………あれ?あの入り口にいるのは、スノーか?
クストの根の戦闘前、エリアル様といつの間にかいなくなってたな。
もう用事は済んだとみられる。
……無事で済んでよかったよ。
「どしたの?スノー」
「えっと姉上。お子さんを助けに行ったと聞いたのだけど」
おや、耳が早い。誰に聞いたし。
まぁ可能性が高いのは、ボクの上司殿だな。
詳細はまぁ……ビオラ様が詳しく話さんのやし、聞かん方がいいか。
「うん。紹介するね。
クエルとシフォリアだ。
二人とも、知ってると思うけど。
スノー。コニファー・エングレイブだ。
君たちから見ると、叔母に当たるね」
「クエルです」
「シフォリアです。スノー叔母様」
「ぉ……スノー、よ。
え。大きいのだけど」
「クストの根が、この世界をゲームの未来につなげる……呪いの礎として。
『ウィスタリアの子ども』という可能性を、生贄にしてたみたいなんだ。
ボクからストックの子を取り上げるなんて、あったまきたから、取り返してやった」
「お、おぅ」
スノーが呆然としておる。
しかし、あれだな。思ったほどは驚かんな?
あれか。ボクがやることなすことに、ちょっとは慣れて来たのか。
……お母さまとかお父さま、腰抜かさないかしら。
弟たちは、その……ダンにはなにか、非常に申し訳ない。
しばらく離れて会ってみたら、実は姉でしかも子どもがいるとか。
ボクは別に、君の脳を破壊したいわけじゃないんだけどねぇ……。
きっとほら、あれだ。古来よりあるというじゃないか。
同性愛に挟まろうとした奴には死をって。あれだよあれ。
次の投稿に続きます。




