24-3.同。~戦略戦闘船パンドラ。砲撃戦、開始~
~~~~作って、準備して、力を合わせて。今だったら邪魔だって、一瞬で蒸発だ。
おっと、根がなんか力を溜めてるっぽいな?これは急ごう。
ビオラ様とストックを見――三人で、頷いた。
「「「『災厄よ、来たれ』!!」」」
パンドラの外装が細かく分裂、展開。
災厄の箱が――開きだす。
ボクらの魔力流制御により、無数の神器が中空に散り、パンドラ内装区画を真球状の魔力流で囲む。
同時に、この制御室からも外に壁が透過され、見えるようになる。
ここからなら、魔導も直接ぶち込める。
僅かに、砂の香りのする風が吹き込む。
ベルねぇを見る。彼女も、こちらを見て頷いた。
「……メリア様、召喚開始!」
「おうとも!三世、四世、夫人!」
━━━━『サンディ・ザ・サード』。
━━━━『サンド・サリー・サドマーヌ』。
━━━━『サンディ・ザ・フォース』。
丸い紳士と細い紳士、さらに丸い紳士が帽子をとると、頭に小さな玉夫人が現れた。
パンドラの魔力流が反応。魔導拡大し、展開――っておっも!すごい負担くるッ。
総神器構造の分散があって……それでやっと扱えるな。管理者三名でやってなかったら、倒れてるぞこれ。
船周りの地面から、高波のような砂が出て、根に襲い掛かっていく。
さらに、船の前方には、無数の大小の球体が浮かび上がった。こちらと根の間を塞ぐ壁というか、網というか。
精霊の目、だな。
クストの根もまた、目を開く。
だがわかる。その視線が、船の前の精霊の目に、すべて吸い寄せられていく。
さすがに邪魔みたいに、すぐ消滅はしてくれないみたいだな……。
またその隙に砂も根の本体に到達し、その身を縛り上げていくようだ。
「大丈夫か、ハイディ」
「ハイディ、こちらに」
マリエッタが、手を差し伸べてくれた。
「わかった。重いよ?」
端末を出して操作し、彼女にカラミティコールと、それに乗ってる魔法の拡大制御を移す。
「……問題ありません。どんどん行ってください」
うわたのもし。
この子、普通の結晶しか入ってないのに、どうなってんだ?
でも結晶化が進む様子もないし、辛そうですらない。ほんとに余裕がある。
マリエッタと出会えて、よかった。
「さすがマリエッタ、頼りになるね。
よし、ベルねぇ。次!」
「はい!メリア様、根を垂直に寄せてください!」
「わかった。夫人!」
玉夫人が踊る。砂の細かい制御はそっち担当か?
こちらに向かってうねうねしていた根が、砂にまみれて天に伸びて固まっていく。
「重魔力収束鏡、展開願います!」
「よし来た!マリー、息を合わせて!
ボクが船の正面に出した魔力流を制御して!」
「は、はい!オーバードライブ!『神力 災害』!!」
パンドラ正面の魔力流を一部開けて、そこにレンズ状に魔力流を集める。
マリーがその制御を乗っ取って、周囲の流れとは完全に独立した、濃い魔力流を作り上げた。
向こうの景色が歪んで見える。
彼女の謎能力の一つ、神器の制御奪取。
起動している神器の駆動や魔力流を、奪い取って操ることができる。
ボクの使ってるそれとは、精度も出力も段違いだ。本物はやっぱすごいな。
なおマリーはなんかよくわかってない風だったが、ちゃんと以前に説明はしている。
今更だが、これは魔導を収束させるための、特別な魔導拡大の方法だ。
威力が信じられないくらいにあがる。クリティカルする、みたいな感じ?
「ダリア様、ミスティ様。火砲用意!」
━━━━『『天の、星よ。』』
ダリアが黒、ミスティが白の鍵を水平に持ち。
その杖先を、組み合わせる。
━━━━『一二三四五六七八九十。布留部、由良部、祓い給え!!』
二人の持つ杖が、赤い光で染まる。
杖から飛んだ光が魔力のレンズに当たり、その緑を赤く染め上げた。
「いいわよ!」
あれ?何か出来上がった赤いレンズの向こうに、小さな飛翔物が……。
まさか、根の目が分離して飛んできてる!?
いつの間に!砂が届いてない!!
「ベルねぇ、目が飛んでる!」
「っ。エイミー様、牽制開始!」
「よっしゃ来たぁ!
『怪鳥 の 軍勢』!!
『怪鳥 の 軍勢』!!
『怪鳥 の 軍勢』ああああああ!!」
祈りの力が反転し、呪いの力になっていく。
いつもより……かなりでかい、まさに怪鳥が。
炎に、電撃に、氷になって多量に飛んで行く。
まず飛んでくる大小の目を、片っ端から撃ち落していく。
そのまま飛んでって、根まで到達。
砂を引きはがしにかかろうとする根の先端に次から次へと衝突し、その勢いを留める。
いやまって。あの鳥、属性一つ一つ違うの?どうなってんの??
しかも千……いや、何万羽出てるの?きみばかじゃないの???
初めてエイミーの所業を見るミスティとかメリアが、ドン引きしている。
こっち見ないで。ボクのせいじゃない。
ボクが拾った子だけど。
ベルねぇとギンナはここからが本番だからか、集中してるみたいだ。
「では行きましょうか。ウィル」
━━━━『ウィル・ワックス・ウィンドーラ』。
体はどう見ても液体、燕尾服、そしてすごい筋肉質の何かが現れた。
…………君が三節忌み名を知る魔法使いだったとは、今初めて知ったぞ?ギンナ。
いつも魔法らしい魔法使ってなかったのに、なんでや。
いや、そういえばメリアも魔力自体は少ないし、忌み名持ちはそういう傾向なのか?
しかしそりゃ強いわけだよ。ずっと黙ってやがったな、こいつめ。
ほんの少しこちらを見て、にやりと笑ってやがる。
いいさ。今日は君が主役だ。
次投稿をもって、本話は完了です。




