24-2.同。~3年の積み重ねを、今ここに~
~~~~二人に力を使ってもらうのは、打ち合わせ通り。しかし……君らも頼りになるじゃないか。
「ビオラ様。お待たせしました」
ボクの上司が鷹揚に頷き、全員を見渡す。
「ええ。
『当艦はこれより、戦闘態勢に入ります。
各自、マニュアルに従ってまず身の固定を行うように』。
クストの根を、改めてパンドラの撃破目標と定めます。
ミスティ。クストの根について」
「はい。
クストの根は、魔物ではなく、呪いそのものと言われています。
先の通り、物質的存在ではありますが、見た目ほどの質量、膂力はありません。
性質としては――邪魔に近いものと想定いたします。
そのためか、魔導に対して、強い耐性がある――。
これは、ドーンが試みた魔法攻撃で結論が出ています」
「目を開いて、こっち見て来そうね。続けて」
「彼我の距離は面倒だから飛ばしますが、アリサさんの力で縮まらないと断定します。
敵の攻撃でこちらに有効なのは、呪いのみと判断してよいでしょう。
一定の出力はマドカさんの祈りが防いでくれると見えますが、有効打の警戒は必要です。
一方、こちらは効力射となるものを数種備えています。
周辺被害の想定は必要がありません。パンドラ、全力戦闘が可能です」
「結構。ストック、作戦」
「呪いを封じた上で、重魔力収束鏡と呪装火砲を用いた、戦略魔導の砲撃を行いましょう」
「シンプルでいいわね。ハイディ」
「その前に確認を。メリア、ギンナ。
二人同時の魔法は大丈夫?攻防分けたいんだけど、相性があるでしょ?」
前にビオラ様にも言われた、精霊間の相性ってやつだ。
メリアは砂の精霊サンドマン。
ギンナはおそらく、実家の精霊ウンディーネだろう。
そのまま出すと、かち合うんじゃないか?
「問題ない。精霊王はそんなこと気にせん」
「こっちも大丈夫よ。
というか、それでだめならドーンの時にまずいことになったわよ?」
「ほんとだ。まったくだね」
言われてみりゃそうか。
…………そうなんだけどそれ。君の精霊もやばいってことにならないか?ギンナ。
なお今更だが。
メリアも使ってたギンナの得意技『大地・絶唱』。
あれはやはり、精霊魔法の一種なんだそうだ。
魔力とか精霊力とかのあれやこれやの高まりを利用し、大地を変容させるとか。
王国の土地を豊かにしている、その力の延長のようなものなのだろう。
精霊によって多少効果は変わるらしい。
しかし……あれウンディーネって感じだったか??
……普通にノームの技だと言われた方が納得する。
まぁいいや。
そこが大丈夫なら、いける。
パンドラ建造にあたって、対邪魔用に用意した、オーソドックスな手順で行こう。
打ち合わせ済みの工程を、改めて指示していく。
当初想定より、エイミーとマリエッタという、貴重な人材が加わったしね。
「では段取りだ。
まずパンドラの魔力流を最大解放します。これは管理者三名の仕事です」
「そうね」「ああ」
ビオラ様とストックが頷く。
エルピスより巨大な分、制御が重い。
ボク一人でやる分は最小限にし、分配して実行する。
「メリア、調整はこちらでするから、呪詛防御にサンドマンを」
「任せておけ」
サンディ四世の目なら、確実に防いでくれるだろう。
マドカの祈りの力、呪装火砲でも呪いに対する防御力は上がるが。
メリアの力の方が安心だ。
「マリー、重魔力収束鏡を作る。君の制御力がいるから」
「え、え?はい。わかりました?」
わからんような顔してるが、打ち合わせ通りだからな??
パンドラの収束鏡は、ボク一人では作れない。でかすぎる。
本場の勇者の力でやってもらう。
「ダリア、ミスティ。こっちは手一杯になるから、呪装火砲の展開をお願い」
「いいわよ」「了解です」
これもまた、気軽にできないレベルの代物になる。
ボクも負担を引き受けるが、精霊王の魔法が最低二回通る。
二人が手伝ってくれないと、ボクは弾け飛びかねない。
「マリエッタ、ここまでの補助魔導の展開維持を手伝って。
パンドラのは出力が高くて、重い」
「わかりました」
それでも気絶しかねないので、マリエッタにも頼む。
マリエッタにできている結晶の出力は、そう大きくはないのだが。
彼女はそれ以上に、超過駆動を引き受けることができるようだ。
「ハイディ、私は!?」
「呪装火砲展開段階から、超過駆動を好きに撃て。
敵の攻撃を迎撃して。思いっきりやっていいから」
「やっほう!やってやるわ!」
君、ちょっとトリガーハッピーなとこがあるな?エイミー。
敵に、今見えてる以外の攻撃手段がないとも限らない。
そういうときは、エイミーに押し込んでもらおう。
「ギンナ」
「任せなさい」
力強い。頼んだぞ。
「ベルねぇ、今の手順でオペレートお願い。あと照準も」
「……わかりました。必ず当てて見せるから」
いいね。こういうののほうが、ベルねぇの本分だ。
サイズ感でバグりそうになるが、とても普通に魔法が当たる彼我の距離ではない。
ベルねぇの力で、狙撃に近い魔法射撃を行ってもらう。
次の投稿に続きます。




