表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
295/518

24.連邦北東魔境。招かれざる未来、来たれり。

――――お前が何物をも奪うのを、赦しはしない。

 パンドラは建造場を出て、方向を転換。


 魔力流の出力を上げ、高度をやや上昇。


 低空を維持したまま、東北東へかなりの速度で進んだ。



 大きいので実感はわかないが、普通に神器車の最大速度並みのはずだ。



 途中、魔境に入ってからは巨大な魔力流から逃げ惑う魔物の様子も見えたが。


 奴のそばまで来た頃には、それが妙に少なくなっていた。


 ……魔物を呪うモノ、ね。



 制御室の壁の向こう、映像として映されている外の景色に。


 それが、写り込んでいる。



「あれが、クストの根……」


 誰かが呟いた声が、意外に響き渡った。



 でかすぎてスケールがよくわからんが、確かにあれは先日見た根っこに間違いなさそうだ。


 毒々しい色、謎の質感と形状。笹、というんだろうか?あれに近い印象を受ける。


 近くで見るとこんななのか。



 大きさに対して近すぎて全貌がよくわからないので、いくつか遠望の魔導を起動し、状態を見えるようにする。



 長い根の根元に、玉のようなものが見える。


 遠近関係で小さくは見えるけど、あれもかなりの大きさだろう。



「確証はないけど……あれがすべての元凶、なんでしょうかね」


「ん……それ、合ってる。ハイディ」



 ベルねぇがあっさり肯定したんやけど!?


 あ、なんかマリーも頷いてるし。



 えぇぇぇ。



 まぁマドカたちを呼び寄せたってことだし、そうだろうとは思うけど。


 スケールの大きい話になったなぁ。



「ハイディ。


 根が動き出したことに、神主・西宮が噛んでいるところまでは、掴んでいるわ。


 ベルの回答も踏まえると、あれが『アーカイブ』の力の源で間違いないわね。


 マドカやアリサをこの時代に引き寄せたのも、そうでしょう。


 二人がそう話してくれたこと、特におかしな点はなかったから」



 あ、掴んでるってこの情報あれだな!?


 ミスティを見る。


 ちょっとにやりとしていやがる。



 これが彼女の仕事の「一つ目」だな。


 しかしだとすると……ちょっと気になるな。



 ボクの懸念に呼応したわけじゃなかろうが、根が蠢き始めた。


 根が伸びあがったのが見え――慌てて制御の一部をとって、魔導を起動する。


 上部が打ち据えられ、船全体にかすかに振動が走る。



 まだかなり遠いのに、ここまで届くのかよ!



「あら。目視範囲で現物を確認してから詳細を詰める気だったけど、ここまで届くのね。


 明らかにこっち狙ってるわねぇ」


「……ビオラ様、ちょっと待ってもらっても?」


「ええ」



 お許しいただいたので、改めて。


 防御陣はそのままにし、振り返り、制御室を見渡す。


 今ここにいるのは、総勢13人。



 ボクとストック。メリアとミスティ。ダリアとマリー。


 ギンナとベルねぇ。ビオラ様。



 さらにこの旅で加わった子たち。


 エイミーとマリエッタ。


 そしてマドカとアリサ。



 ……………………。


 息を、する。


 自分の言った言葉が。そしてビオラ様の情報が、少し重い。



「あれを倒せば、未来にはつながらなくなる。


 ――――どうする?」



 ボクに選択権があるわけではないが。


 それでも、改めて聞いておきたかった。


 マドカと、アリサに。



 二人が視線を交わし、改めてこちらを向く。



「やっちゃって、ハイディ」


「マドカ……アリサ。いいんだね?」


「ああ。マドカがここにいるんだ。


 未来がここで終着しても、続いても、もう悔いはない」


「あらアリサ、私は嫌よ?


 絶対生き延びてやるんだから。


 楽しいことだってたくさんあった。


 友達だってできたわ。


 でもわかる。ここで死んだら、きっと戻される」



 そうか。この二人は、ちょっとボクらと事情が異なる。


 過去に遣わされたという機会は、今この瞬間にしかない。


 もしこのまま亡くなったら、向こうの時間に戻る可能性は、ある。



 分断された未来として、こちらとは別々の道にでもなるんだろうか。



「それは嫌。アリサといられない未来は、もうごめんよ!


 だから――『真円に巡る、祈りを捧ぐ。我が友に勝利を』!!」



 不思議と力が湧いてくる。


 何度か船を打ち据えていた根が、怯んだ様に離れていく。


 『揺り籠から墓場まで3』の主人公、マドカこと『クレット・リング』の力は、祈り。



 アリサがマドカの手を握り、そして目を閉じる。



「ならば私は、敵を呪おう。『運命よ、分かたれよ』」



 映像の向こうで、すごい勢いで大地が裂ける。


 なのに不思議と、こちらに揺れは来ない。



 根との距離が離れていき――あれだと、こっちを直接殴れないかな?


 アリサこと『ナズナ・リング』は、ゲームの時間が進むとフィールドを分割してくるらしい。


 破壊の力は、これの応用ということか。



 ありがたい。これまでの情報からの懸念として、あれは人間にも接触即必殺の疑いがある。


 まぁそうでなくても、あの質量に当たれば普通死ぬけどね?



 マドカは乙女ゲーの主人公。ボクと同じ立場で。


 アリサは同じゲームの悪役令嬢。ストックと同じだ。


 不思議と……彼女たちの、祈りの心が伝わってくる。



 二人が一緒に居られるのは、ここしかないんだ。



「任せたわよ!


 ここではあんたが主人公なんだから!ハイディ!!」


「気合い入ってるところ悪いんだけど、それは廃業したんだけどなぁ。


 ――――任せておけ」



 二人、ニヤリとし合う。


 といっても、今日のボクはわき役だがね。

次の投稿に続きます。


#本話は計4回(8000字↑)の投稿です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

――――――――――――――――

幻想ロック~転生聖女は人に戻りたい~(クリックでページに跳びます) 

百合冒険短編

――――――――――――――――

残機令嬢は鬼子爵様に愛されたい(クリックでページに跳びます) 

連載追放令嬢溺愛キノコです。
――――――――――――――――
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ