23-4.同。~敵よ。来るならば、迎え撃とう~
~~~~君らは違うと思っていたのに……。ずいぶん前の「唯一」ってそういうことか、ギンナ。
しばらく後。
変な空気のところに、ビオラ様とスノーがやってきて。
おやつを食べに、マドカとアリサが戻ってきて。
エイミーにマリエッタ、ダリアとマリーも来た。
いっそがしいんじゃが!?
君ら何枚パンケーキ食うのよ!!
あと生クリーム食いすぎだなくなるぞ!
王国民ならフルーツを食え、フルーツを!
途中からメリアにも加わっていただき。
かなりの数を焼き、相応満足したらしいところで。
ビオラ様が、少し刺激的な話をした。
…………とても自分の分を食べてる場合ではなくなった。
それから、キッチンを片付けて。
我々はパンドラの船首区画へやってきた。
まぁ何かあるって部屋じゃないんだよね。まだ。
そういうとこはエルピスの制御室と一緒。
ここは単に、外を見るのに易く、また外に接触しやすい場所、というだけ。
だが今は、それが必要だ。
壁一面に、外部映像を映し出す。
今日は稼働や試験の予定はなかったから閉められていたシャッターが、映像の向こうで開こうとしている。
荒野の日差しは、夏の終わりのそれらしく、まだ眩しい。
『先般告示の通り、本艦は連邦北東の魔境を目指し、出港します。
クルー各員は艦船戦闘マニュアルに従い、職分に応じて行動をしてください』
館内放送を流す。
船首制御室にも、相応に座席を出す。
それぞれ座ったのを確認し、後ろに構え、全体を見ているビオラ様とスノーを見る。
「改めて通達する。
王国所属中型神器船パンドラ、クルー諸君。コニファー・エングレイブだ。
聖域ドーンより、王国西方魔境北より西の方角を目指し、巨大な物体が進行中との連絡を受けた。
進路予想上には、この建造場および、連邦の街イアベトゥスも含まれている。
接近を待ってからの対処は、危険が大きい。
ゆえに、本艦の戦闘能力をもって、この巨大物体の排除を願いたい。
ビオラ所長」
「はい。
当研究所所長兼当艦艦長、ビオラ・ロイドよ。
戦闘およびその補助については、この場の13名を持ってあたります」
ん?13って二人少ない……。
スノーの後ろに、エリアル様が控える。
…………ひょっとして。
「物体の現在地は、本建造場より東北東の方角、およそ150kmと推定。
戦闘船速にて急行、これと交戦を行い、撃破します。
目標物体の名は――――クストの根」
そう。あいつが来ちまったのだ。
うん、イスターンで確認したから、情報の共有はしてあった。
ただ見える人と見えない人、また見えない時があって、確認がしづらくてね。
しかしエルピスが戻った直後くらいに、ドーンからの急使が来たのだそうだ。
アレの存在が、疑いようもなく確認できたと。
確かに西に向かっており、精霊魔法による攻撃を行ったが、一顧だにせず去った、と。
聞いたとき、言われて見に外へ出てみれば、ほんとにこっちに向かってた。
でかいし、正直びびった。
思った以上に、到来が早かった。
こないだの見たときに計測・判断した速度より、ずっと早く来た。
おかげで、試験予定を組みなおす羽目になった。
直後から最小限の工程を済ませ、すぐ発進準備。
そうして今に至る。
ユリシーズにいたとき、備えておいてほんとによかったよ……。
あらかじめ、急に出港する事態を想定してなかったら、もう一日は足止め食ってたな。
そしたらさすがに、奴の方が先にこの辺に来ていただろう。
できる備えはしとくもんだ。
堂々と腕与して構える、スノーをちらりと見る。
……その右手首には、ボクのあげた緑の腕輪があった。
よしよし。頑張れよ、妹。
マドカとアリサは、落ち着いた様子だ。
目が合って、頷かれた。
静かに頷き返す。
建造場のシャッターが完全に開く。
「ビオラ様。制御を渡します」
「ええ。戦闘突入で共同権限にするわ。
そしたら、好きにやって頂戴」
「はい」
互いに船体に触れているなら、管理者間の制御兼譲渡は合意をもってすぐ行われる。
ビオラ様が船を起動したようで、稼働用の魔力流が船外に展開。
緑の光が、この巨大な長方形の船のすべてを覆っていく。
「神器船パンドラ。発進!」
所長の声が響き渡る。
魔力流の上をすべるように。
ボクらの作った船が、動き出した。
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