5-3.同。~そうだ。夏休みは連邦に行こう~
~~~~君も巫女になるんかい!一緒にいて……くれるのか。そうか。
「イスターン連邦はどうだ」
西の連邦国家だ。三つくらいの国が合わさってるはず。
広い魔境を奪還して国土にした歴史を持つ、武門国家。
今はさすがにそこまでの武力は誇らないけど、あそこの貴族層は高威力の戦術魔術を得意としていたはず。
あと農耕が盛んだ。精霊はいないものの、国土に十分な魔力があり、作物がすくすく育つ。
雑草も普通に伸び放題だから、農業コストは高いらしいが、輸出できる程度の生産力はあったらしい。
奪還した魔境の一部が砂漠になってしまっているものの、それを補って余りある国力だそうだ。
政治的には王国ともめてるところじゃないし、それは良い旅になりそうだな。
「西方魔境を突っ切るのか。それならやったことあるし、いいよ」
「穀類がうまいらしいな」
「芋と豆じゃあかんのか?」
芋……黄土根芋と豆類は、王国民のソウルフードだ。あと野菜だな。
一見雑っぽいけど、調味料も香辛料も豊富だから、味付け多彩。
……ちょっとおなかへってきた。
「それはそれだ。嫌か?」
「んにゃ。前行ったときは、もう国がなかったからね。ボクもいろいろ食べてみたい」
イスターン連邦は、王国より前に滅んでる。
そういえばあれって、ドーン襲撃に近い時期だったな。ほんと、何があったんだろう。
急に滅んだらしくって、いくら調べてもわからなかったんだよ。
あそこ出身の友達がいたけど、学園卒業して国元に帰ったら滅んでたって、げらげら笑ってたなぁ。
でも、親しい人の死を弔って、よく泣いていたのを知ってる。
国や政治は嫌いだけど、家族や縁者をとても大事にしていた子だった。
「……ハイディは、その喋り方の方が本来のものなのか?」
何だ急に。
そういや、前は「私」で、ですます調だったか。
この子と初めてあったのは、学園だしなぁ。
王都の後の数日は気安い感じではあったけど、ボクは口調はそのままだったし。
「んー……そうだね。君と出会った頃は、ボクはクレッセントの責任者の一人だったし。
ちょっと丁寧な喋り方を心がけてたんだよ」
当時のボクは、大人の間で仕事しながら、学園に通っていた。
学園と中型以上の神器船は、魔力転送路……いわゆるテレポーターで結ばれてるんだよ。
だから船から通ってた。ボクは魔導は使えないけど、研究用の知識を仕入れに行ってたんだよね。
なお、各国から転移できてしまうため、学園は外には出づらくなっている。
外国人なら、基本的に学園から外の王都へは出られない。
ボクはある日偶然、外に出て……自分が王国民だって知ってしまったんだよね。
しばらくはいろいろあって暇がなかったけど、その時のことがきっかけで、自分の出自を疑って調べたんだ。
そしてクレッセントにいることに、耐えられなくなった。
「コンクパールのときは、とっくに船を降りた後だったんだろう?」
「あんときは、そもそも長く人と喋ってなかったから、そのせい。
あと……君の前に六人、友達斬ってるし。ちょっとしんどかった」
「そうか…………」
「そんな顔するなよ。君が来てくれなかったら、こうして穏やかにドライブできてないんだし。
……ボクは、本当に救われたんだ。ストックがただ、会いに来てくれたから」
「お前が王都で私にしてくれたことを、やっただけさ。
……辛いことを掘り返すようだが、彼女たちはそうじゃなかったのか?」
「みんな、ボクを止めに来てた。意味がわからなかった。
だって濁流はとっくに起きてて、ボクをどうかしてもどうにもならないことは明らかなのに」
「聖国が使ってた、水流の制御装置だかを暴走させたんだろう?」
「おう、よく知ってるなストック。調べたの?」
「あの国が自国の河川の流れを制御してる話は、結構有名だったぞ。
詳細は知らなかったがな」
ま?どこ情報??
ん……ちょっと公開されてる情報では覚えがないな。有名、とは。
あれ、でも一つ思い当たるような。
……これ、ゲームのだ。
「聖国は河川の流れを自由に組み換え、魔物を避けている」って言及が大々的にされてる。
確かにストックも色付き結晶持ってるし、ここ由来なら知ってるのはOKだ。
だが有名、という認識は……ちょっと謎だな。
確かに聖国と法術を詳しく調べれば、出てくる範疇ではある。
ま、いいか。ストックはボクと違って、何もかも正確に覚えてるわけじゃないしな。
「そういやそうか。で、装置じゃないけど、まぁそうだよ。
その上でだが、やったのって、あの二か月前だよ?
ボクはその結果を、眺めのいいとこで見てただけなんだけど」
仕組みに変更を加えると、徐々に大地の魔力の流れが変わっていくんだ。
それが水の流れに影響を与えていく。
二か月後、コンクパールから眺めていた日が変化のピーク。
水流が完全に変わり、水害も起こり、魔境の形が変わった。
「…………よくわからんな、それは。何がしたかったんだろうな」
ほんとにね。
彼女たちは口々にボクを止めると言って、戦いを挑んて来た。
ボクからは、もう濁流は止まらないことは説明した。
話が通じてないような感じだったな……。
最初は泣きながら戦って。そのうち戦いの方が厳しくて集中して。
最後には何も感じなくなって。
ストックが来たときは、彼女も同じなんだと思ってた。
だからいつまでも斬りかかってこないことも、剣を置いたことも、衝撃が大きかった。
よく見れば、戦意も殺意もまったくなかった。
ストックはただボクに会いに来て……話がしたかっただけみたいだった。
そのためだけに、たった一人で魔物の中を突っ切ってきて……力尽きた。
……もうちょっと早かったら、唇くらい許してやってもよかったのに。
次の投稿に続きます。




