21-5.同。~制圧。戦線を押し上げる。奥へ~
~~~~むしろエイミーはよく無事に降りられたな??タフだね???
一台はすでに降り切ったマリエッタ。そしてエイミー。
もう一台は――あの赤いヘルメットとスーツ、アっさんか!?
急に姿が消えたり、明らかにおかしい軌道のドリフト?とかしつつ、魔導師をなぎ倒して行ってる。
今、防御魔術にそのまま突っ込んで轢いてったな。おかしい。
「魔導には隙間がある。そこをこじ開けて突っ込め」とか言ってた記憶あるけど。それはおかしい。
『怪鳥 の 軍勢』!!
怪鳥 の 軍勢!!
怪鳥 の 軍勢ああああああ!!』
エイミーの声が、結構大きく響いてくる。
気持ち悪いくらいの数の、白い怪鳥が飛び交う。
どうやってあれを一つ一つ制御してるんだろう……。
「あぎゃあああああああああああああああああああああ!?」
スロウポークを思わせる、汚い感じの悲鳴が響く。
ダリアとマリーが、あれをやったんだな。詠唱は聞こえなかったけど。
魔導の効かないマリーを中継し、戦略魔術をほんのりぶちかます、あれだ。
だいぶ数を減らしているみたいだけど、パンドラと別方向の奥から、わらわらと出てくるな……。
あれ?そういえば奴ら、何が目的なんだろう。
再現だから、この工場自体の制圧か?パンドラではない??
見れば、中央にそびえ立っている柱の足元に、結構な数の敵さんがいるし。
……いや、それもおかしいな。
柱の下には扉がついているが、そこから侵入してってるやつらがいない。
どちらかというと、アっさんたちが柱の方に来ないように、防衛の構えをとっているように見える。
すでに誰かが上層に向かってて、時間稼ぎをしてるのか?
とすると。狙いはエネルギー炉の奪取……ではなく、暴走か。
この聖域か、建造場の破壊を狙った事件の再現なんかな。
その上で事件を利用して、もしパンドラの破壊を考えているのなら。
セキュリティが効いて入れない神器船を破壊するより、そっちの方が楽だしな。
ぶっちゃけ、神器機構なので魔導を多数浴びせられると、ある程度故障はする。
だが鉄を混ぜてない魔石はかったいので、たいがいの魔導では破壊できない。
壊すなら中のエネルギー炉を暴走・爆発させるのがセオリーだが。
中に入れないなら、別の膨大なエネルギーをぶつけることになるだろう。
特に旧世代の神器船エネルギー炉は……びっくりするほど簡単に、暴走させられるんだよなぁ。
セイフティとか、まったくついてない。ほんとに。
む。幾人かこっちを向いてるな。
ほどほどのとこまで降りて来たので、手すりに飛び乗って。
一息。
「『星 空 よ』」
一気にドックに広く、ボクの紫の魔素が広がる。
両足に、力を籠める。
「『紫藤に 輝け 』!!」
手すりを蹴って、地上へ跳んだ。
目指すは、パンドラ前にある、あの中央塔だ!
地上に降り、一気に駆け抜けつつ、倒せる者、破壊できる魔導を沈めていく。
そのまま、太い四角柱の周りをぐるりと回り。
張り付いて防衛していたやつを、根こそぎ倒す。
……時間切れか。紫の魔素が戻り、ボクの瞳が黒から赤へ変わる。
追随するように、白い小鳥がうち漏らしのやつらに取りつき。
再びマリー経由で雷光が轟いた。
遅れて、ストックたちが近くまでやってくる。
奥にはまだいるようだが、見えてる範囲は制圧できたな。
「これで戦線を押し上げられただろう。
マリエッタ、迎撃・遊撃を続けて。
ダリア!シャッター開閉手伝ってあげて!」
『了解。エイミー、もう一仕事です』
『やったるわ!』
マリーはダリアを抱え、壁際まで走っている。
シャッターを開けられれば、エルピスを招き入れられる。
あれの対人火砲を所長が使えば、制圧は一瞬だ。
ダリアの案をストックが蹴ったのも、その辺に理由がある。
ボクらが分担して、シャッターを開けて侵入するまでもなく。
ビオラ様がエルピスに乗って外にいるなら、それで十分なのだ。
そういやダリアは、所長の実力は知らないんだよな。
前の時間でも、見ていない。今生でも、説明する機会がなかった。
ボクがなんで、誰のために、エルピスを作ったのか……とかも。
緑のフレーム、黒いボディの神器単車がやってきた。
「パンドラ製作者の一人、ハイディです。
上にも敵がいますね?」
『話が早くて助かる。四人だけか?魔導師が上に行ったぞ』
「大丈夫です」
左手で、後ろ髪をかき上げる。
「閃光が、ついてますので」
フルフェイスメットの奥の顔が、獰猛に笑った気がした。
『わかった。こちらは任せろ』
気炎を上げ、単車が走り去る。
ストックが、扉を開けて待ってくれていた。
マドカたちは、もう中に入ったようだ。
ボクも続く。
「『真円に巡る、祈りを捧ぐ。我が友に勝利を』!!
やっちゃえ、アリサ!」
中からマドカの声がし、彼女を背負ったアリサが階上へ跳び上がっていくのが見えた。
今のは、マドカの力だな。『揺り籠から墓場まで3』ヒロイン、クレット・リングとしての。
回復とか強化とか、とにかくふわっとしたいろんな効果を仲間に与えてくれる。
次の投稿に続きます。




