21-3.同。~密かに備え、前に進む~
~~~~ボクらが苦労して作った船狙ってくるとか、人の心ない系か?おのれ。
「重要設備は?」
「第三世代は制御関連施設が分散していて、あそこは七か所にある。
例えばドックもその一つだ。ドックからシャッターは開けられる。
他は制御室以外だと……エネルギー炉かな。
こっちは一つにまとめられていてね。
これが上層中央にあるんだけど、一度ドックに降りてから中央塔を登らないといけない。
六つの制御室は、エネルギー炉から行ける。
つまりだいたい行くのが面倒な上層に固まっているわけだ。
これでいい?」
「ああ。ドックに異変があるのは明白だ。
ここへの到達、そして確認が第一目標。
ドックにあるパンドラの確保が第二目標。
エネルギー炉の調査が第三目標だ」
「作戦は?」
「全員で一点突破。
敵がいるなら、どこから入っても中は待ち伏せだろう。
ドックまで下り、そこからは分散する。
人質、要救助者、敵、と対処しなければならないものが増える。
四人一組で行動する。
こちらは私、ハイディ、マドカとアリサだ」
マドカ、アリサが頷く。
「ダリア、そちらを頼む。マリー、エイミー、マリエッタを連れてってくれ」
「いいけど、基準は?」
「機動力のあるペアと、拠点防衛・攻勢ができるペアをそれぞれに振っている。
単独行動を避け、別れることになっても二人一組で動いてほしい。
他に質問は?」
「ないわ」
「私からいいですか?」
「なんだ、マリエッタ」
「我々は神器単車での突入を行え、ということですね?」
「ええええええええええええ!?」
後ろに乗せられることになるエイミーが、驚愕している。
どこも意外ではないと思うのだが……。
そうでなきゃ、魔力なしでまだ武術家でもない君が、突入に加わるわけなかろ。
「そうだ。確認だが、可能か?ハイディ」
「内外の階段の構造を考えても、マリエッタなら余裕。
エイミーは……がんばってしがみついてね」
「がんばりましゅ」
降りるという選択をしないあたり、君も肝が据わってるね。
「単車の機動力、エイミーの魔導制御は重要だ。
内部での分担は状況次第だが、おそらくドックはそちらに任せることになる。
我々がエネルギー炉だな」
「でしょうね。中に入れさえするなら、その方がいいわ。
その点だと、シャッターを開けてビリオンあたりを入れるという手もあるわよ?」
「ダリア、シャッターが開かないという可能性もある。
エネルギー炉がもう落ちているかもしれない」
「ああ、ほんとね。確実な進入路は非常口だけ、と。
そっちがバリケードなどで塞がれていたら?」
「物理的な封鎖なら、私かお前で粉砕できるだろう。問題ない」
外装の魔石ならともかく、ただの扉ならストックが発勁でどーんすれば開く。
もちろん、ダリアが魔術でどーんしても開く。
便利なマスターキーだ。
ただ、外装が破壊できるほどの出力で撃つと、中が壊れてしまう。
そうなると、人やパンドラが被害に遭う可能性が高い。
だから、ドックへダイナミックお邪魔しますは、ちょっと難しい。
「ん……わかったわ。後はないわよ」
「よし。ハイディ」
息を、する。
「では単車とビリオンに乗って接近しよう。
ビリオンのセンサーで内部を確認しつつ、侵入する。
所長、行ってきます」
「ええ。帰りを待ってるわ」
「姉上」
「なに?スノー」
「姉上の打ったそばは絶品だそうだな?
私も食べてみたい」
ふふん、いいだろう。
そば粉はめっちゃ積んでるからな。
「わかった。おなかをすかせて、待ってるといいよ」
ビリオンからの魔導で確認できる範囲は、そう広くはない。
だが外装の魔石越しに内部はある程度わかった。人の配置くらいだがね。
急ぎ、非常階段の一つへ向かう。
おそらく、中は戦闘中だ。
「あ、降りる前にこれ」
左手にしてきた腕輪の一つを、ストックに渡す。
「これは?」
「録音のに似てるけど、サルベーションコール用だ。
ビリオンのね。ボクもつけてるけど、君も持ってて。
自身が本当に緊急の時は、意地と根性でそいつを回してほしい。
頼んだよ?」
「……わかった。約束する」
ストックが右手首に腕輪をつけた。
ちょうどついたので、ビリオンを階段の影に停める。
皆がクルマを降りていく。
ボクとストックも外へ出た。
「皆、ボクが先行する。続いて単車だ。
念のため、少し距離を空けてその後をついてきてね」
五人、頷いたのを見て、袖を咥える。
瞠目し、開いたボクの目が、紫に変わる。
遅れて到着した単車が、階段へ向かった。
フルフェイスのヘルメットの向こうのマリエッタの瞳と、視線が交錯する。
僅かに頷き合い――ボクは階段に跳び上がり、単車は段を上り始めた。
鋼で作られた、むき出しの階段を跳んで登りあがる。
単車が後から、猛然と登ってくる。
五度ほど跳んで、扉の前についた。
次の投稿に続きます。




