20-4.同。~もしも未来を、授かれるのなら~
~~~~言いっぱなし作りっぱなしのボクらと違って、スノーは気苦労が絶えんな。
(重ねて注意喚起)
本作品はフィクションであり、すごくファンタジーです。
また、本部分の内容は、作品世界内でも例外的なものです。
ご承知おきくださいませ。
「場合によっては空も行けるんじゃないか?」
「それはエネルギーの無駄よ、ストック」
ボクも、ただ上空へ飛ばすだけならダリアに賛成だが……。
「ダリア、ダンジョンを座標固定してるのってどうやってるんだっけ?
やり方次第では、そっちでいけるんじゃないか?」
「あれは門の展開応用と考えられるわ。
高い出力を要求されるけど、直に空を飛ぶよりはましね」
よし、いけるか。
あれなら、一度飛ばせばいいはずだ。
「あれ、質量で要求出力変わらないんじゃなかったか?」
「そうね。先に大きく作ってから、浮かせ……というか、別次元に展開できるわね。
よく知ってたわねストック」
んん?
「それはもうダンジョン作ってるってことにならないか?」
「あら。ひょっとすると同じ構造かもしれないわね。調べてみる?」
「興味はあるけど、手は回らなそうだねぇ」
「びおらぁぁぁ。ここ、こわい」
……妹がさめざめと泣いている。
「スノー。これからの王国では、これが日常よ」
おう、慰めてるけどあなたはこっち側やんけ。
何せ、世界の螺旋循環を机上から突き止めた人だからな。
スケールが違うわ。
◇ ◇ ◇
盛り上がっていろいろ夢が膨らんでしまった。
どのみち、手をつけられてることは限られてるんだけどねぇ。
我々が生きてるうちに、どれほどがちゃんとした絵になるかなぁ。
休憩がてら工場の外へ歩いてきたら……。
なぜそんなところで座り込んでるのだね、妹よ。
「ひっ、あねうえ」
怯えられておる。
「君はあれか、なまじ内容が理解できるからそうなんだな。
どのみち検証はともかく、そういう世界になるのはボクらの子どもか、孫の頃だよ」
スノーがちょっとびくっとなって……こちらを向いた。
隣に座る。だいぶ行儀悪いけど、こういうのもよかろ。
気にするような服でもないしな。
「子ども……姉上は子どもは、どうするの?」
おっと、予想外の話題だった。
子どもねぇ。
正直ボクはあんまり興味がない。
というか、興味がストックに集中してる。
だが、ストックが欲しいというのなら。
「どうするったって、求めるなら養子しかないが。
ボクはストック以外に体を許す気はないぞ」
「ああ、それはその、そうだけど」
おいこら妹よ。
その言い方だと、何かあるのがばればれである。
「……そこで言い淀むなし。
そうか、同性同士の王家にも、次代が存在しているのか」
養子とか元王族の血とかじゃなくて、直系がいるということだろう。
記録には……特に言及はなかったような気がするが。
いや、これおそらく秘匿事項だな。
同性でも子どもが作れる。しかも王家だけとなったら、ちょっと荒れるだろう。
「私も継承はまだだし、はっきりそうとは知らないけどね。
あるんじゃないのか?とは思ってる」
「いやそれ、ボクは関係なかろ?」
「……ソ、ん”ん”。王家精霊と、アウラは、ちょっと他の精霊とは違うのよ」
違う……どの辺だ?
「種が丸ごと、特定個人と契約する精霊だと言われているわ。
王家精霊は、少なくともそうね。
あと……彼らの囁きで、アウラもそうだと私は知っている」
なんと。
「個がいないということか?」
「いいえ。個はあるけど、種族すべてが特定個人と契約する。
そう。家じゃないのね。王家とはいうけど、これは王と王妃のまとまりなだけ。
究極的には、あくまで個人との契約なの」
「そうなんか」
「姉上は、アウラとは契約して……るわね。
あと、ストックもかしら?
あら。そうすると王家精霊より、さらに特殊ね」
王家精霊は、あのキッチンでのビオラ様とスノーの呟きからすると、二種。
それが王と王妃、それぞれと契約するのだろう。
だがアウラは、ボクとストックという二人と契約している……どういうことだろう。
「特殊っても……具体的にどう、とかは」
「ちょっとわからないわね」
「そうか。
契約については……やはりそうなのか?
こちらでも予想はしてたけど」
「ええ。間違いないわ。姉上とストックが、アウラの契約者よ。
車両契約がきっかけになってると想像するけど」
「だろうね。そこはボクもそう思うが……」
サンライトビリオンの車両契約のことだ。
ただそれだと、ボクとストックだけやないんだけど。
「マリーやギンナもビリオンの車両契約してるんだけど?」
「んー……その中から、継承者を選んだ」
「王家と同じ仕組みか……あ。
王家とそこが変わらないから、王家のように次代を残す方法があると?」
「確証はないけどね。でも、対を次代に指名するという様態が、同じに見えるのよ」
そういうことか。
どっちがどうなるかはともかく、子どもを設けられるかもしれないのか。
実感がさっぱりわかない……。
「まじかよ……まぁ、そこはストックとそのうち相談するよ」
「そうして。
でも姉上……野暮を承知で聞くけど。
本当にストックでいいの?」
本当に野暮だな。
この子は意味もなくこんなこと、聞いたりはしないと思うけど……。
その目を見るに、質問した理由は教えてくれそうにないな。
次の投稿に続きます。




