20-3.同。~閃き集まりすぎて、天に昇る~
~~~~刀かぁ。ま、ボクはいいや。どうせ折れちゃうし。
「ん?だめだった?」
「ダメかわかんない。
今、攻撃魔導を使える魔道具の話、してなかった?」
ああ。
確かに政治的に考えるなら、ちょっとどころじゃなく影響の大きい話だしなぁ。
問題あるなら、場合によってはストップかけてもらって、検証だけとかになるかな?
エイミーの悲願だから、形を変えてでも要求は叶えたいところだけど。
「した。鎧のような魔道具を作って、中に入って起動する。
計画では、制御、魔力ともに魔道具持ち」
「歴史が変わるわよ!?」
「そうだねぇ。エイミー、君は歴史に名を残しそうだね」
「えへっへへっへっへ」
エイミーがめっちゃうれしそうだ。
「ああ、あなたの言ってたロボット。
小型化して鎧くらいにして実現するのね?」
「そーなの!ダリアちゃんは収束式のは見せてもらってる?」
「知ってる。そうか、あれを結合するのか。
早く作って、運用データを集めたいわね」
「でしょー」
割と仲いいね?君たち。
で、当のスノーは頭を抱えている。
「自分で言うのも難だけど、勝手に作らないだけマシだと思って?スノー。
ちゃんと王国所属の研究所で、正式に作られるから」
「もう出来ちゃうの決まりなの!?」
「エイミーの固めてた内容は、特に穴がなかった。
こちらの提供する技術で、実現可能な範疇に十分達する見込み。
検証過程で問題はいろいろ出るだろうけど、できるできないで言えば、できる」
妹は魂が抜けてしまわれた。
ダメ、とはっきり言わなかったということは、これはOKだな。
ただ労苦がすごいし、影響も大きい。
まぁそこの補佐は、お嫁様に頑張ってもらうとしよう。
「これは、当分あっちの話はできないねぇ」
エイミーのいうあっちとは、魔境で話した通信のやつだな。
「あれはどうせ、技術検証が済んでも、構築が大変だからいいんじゃない?」
「まだ何か作る気なの?あんたたち」
「監視の魔導が共和国にあるらしいんだよ。
それが魔導行使の際の視線を、拡大できるっていうからさ」
「えぐいこと考えるわね。
…………通信網ね?」
さすがダリア。
「あたり。検証は簡単なんだけど、これは広めないと意味ないでしょ?」
「いえ、ダメよ。一対一通信ならいいけど、通信網にするなら経路制御が要る」
おお?
そうか。ボク、長距離一体一しか考えてなかったや。
それじゃ用途が限られてダメじゃないか。
さすがだなダリア。こういう機能的なとこに、よく目端が利く。
「あ、ほんとだよ。交換処理がいるのか。どうしよう?」
「私、ちょっとそういう魔導や魔道具に心当たりはないなぁ。ストックは?」
「私も思い当たるものはないな」
「ダリアちゃんは?」
「……簡単にはできそうにないわね」
「ちょっといいでしょうか。経路制御ということは、それこそルール決めでしょう。
通信仕様を作るのと変わらないのでは?
死ぬほど泥臭い真似をすれば、作れるのは作れると思いますが」
「「「「なるほど」」」」
やるではないか単車マニア。
君あれか?お金の感覚ありそうだし、上の工程にも向いているクチか?
しかも刀打てるっていうし、泥臭いところもできる感じで、いいねぇ。まさに技術者だ。
単車を一人で直すくらいだもんな。
いずれ、独力でとんでもないものを作ってくれそうだ。
「となると、いっそ早く作って実験を重ねたほうがいいか?」
「確かにそうだけど、どこに通すの?ほんとに実験程度?
それだと、試験を重ねるのが大変じゃない?」
「いっそ、今後主流になる聖域構造に組み込んでみたらどうだろう。
改版の容易性等、先を見据えてかなり考えておかないといけないが」
「なによ、もしかして聖域まで作ってるの?ストック」
ああ、あれは話してなかったっけ。
ボクから言うのは思わず黙ったんだよね。
というか話していい……いいに決まってるか。
まもなくバレバレになるしな。現物が魔境に出現したら、隠すどころではない。
「単純だ。総神器構造中型神器船で、聖域を作るんだ」
「あ!普通の神器船だったら意味ないけど、それで膨大な魔力を得たいのね!
すごいじゃない、聖域で農業できるわよ!!」
「新しい人類生存圏の出現ですね……。世界中に売れそうです」
エイミーとマリエッタがはしゃぐ。
そういやエイミーは、王都引っ越しの方の触りを聞いただけだったか。
あの時、どんな聖域かって話はしなかったね。
というか君たち、すぐ伝わったね。
あの機構を最近使ったせいかな?
二人ともいいね~。
でもこいつの広がりは、それよりずっと大きいよ。
ボクがここで細々とやってた実験結果で、もっともっと広がる。
「というかストックのその着想は、別に聖域サイズに収まらないよね。
神器同士を一つに重ねた場合、発生する魔力流の出力の減衰は0.00002%だった。
神器の数が増えても、この減衰率の変化に有意差はなかったから、相当数の魔力流を結合しても問題ない」
「あー。都市じゃなくて、国とか陸ができるのね。神器で」
「エイミー、陸だけじゃないです。揺れ防止を加味すれば、洋上も行けます」
「ほんとだわ!」
次の投稿に続きます。




