19-13.同。~ならば彼女たちにも紹介しよう。そう、新しい家族を~
~~~~ん?そういや別に教えてもよかったのか。ま、いいや。へたれ返上は、本人にやってもらおう。
おっとそうだ。
「ストックが今、一緒に来た人たち迎えに言ってるんだけどさ」
「あれ?ビオラ様だけじゃないんですか?」
「うん。二人増えてる。ファイア家の侍従のエリアル様。
あと、ボクの妹」
「あれ、あんた妹いたんだ」
「というか、親兄弟いたんですかハイディ」
「マリーはボクのことなんだと?」
「突然発生した超生物」
…………絶対違うとはちょっと言い切れない。
「来たら紹介するけど、偉い子だから、最初はボクみたいに接しないでね?」
「え、ハイディ貴族だったんですか!?」
「違うよ」
「は?」「あ」
マリーが、ダリアの方をぐりんと向いた。
「え、何に気づいたんですかダリアさん!?
あちょっとまって言わないでまって。
ええっとええっと……え、おうじょ?」
マリーが正解を引いた。
別に予言の力を使ったわけではなさそうだ。
「そうだよ。本名はウィスタリア・エングレイブだ」
「こんな王女がいるわけないでしょ……」
「おう、鏡はそこやぞ。ダリア」
「あ、私は納得しましたよ。
礼法完璧なの、聖女マニアだからじゃないんですね」
「いやそこはそうだけど。
生まれたときに浚われてるんだから、作法に生まれは関係ないでしょ」
「ああ、そういえばそうでした……」
ん。これでやっと友達全員に伝わったことになるかな。
メリアとミスティ、ギンナとベルねぇは知ってるし。
「で……来るのは、コニファー王女ね」
「そう。呪いの子で、ボクとは同い年くらいな感じ。
というかそうだった。君らは会ったことあるんだよ。
マリーは、向こうが君を知ってるって理解しといてね」
「え。会ったことがってことは、あの船にいたの?」
「スノーって覚えてる?」
「すのー…………あの髪型が派手な?」
思い出したようだ。そしてやはりその印象か。
「あれ、オーナーが勝手にやったみたいだから、話題に出さないであげてね。
本人の趣味は、もっと普通だから」
「ああ、そうなの。それは何よりね」
だよねぇ。紹介したら君がかなり引いてたの、よく覚えてるよ。
「どんな子なんですか?」
「真面目な子ね。あと仕事が正確。
ハイディが自分の感覚より当てにしてるの、あの子くらいじゃなかった?」
ダリアからの評は適格だな。
確かにボクは、スノーの仕事は結構あてにしていた。
オーナーともどもいなくなられて、かなり悲嘆に暮れた覚えがある。
「そうだね。
スノーとボクの認識が違うなら、ボクが得ている情報が間違いだ、くらいには考える」
「何ですかそれドン引きなんですけど……。
ベルちゃんにだって、そこまで信頼おかないでしょう、ハイディ」
比較としてはまぁそこだろうけど、ちょっと不適切なんだよなぁ。
「ベルねぇは、そもそもの問いの定め方が間違っていて、別の正解を持ってくることがある。
スノーは問題の定義の方を絶対に間違えない。ギンナの同類」
「うわっ。戦闘以外もできるギンナちゃんってことですか」
「戦闘以外『が』得意なギンナだね。
本来ベルねぇがあるべき、到達点に近い」
話してて何となく思ったけど。
だからあの二人、妙に張り合ってたのかな。
まぁ彼女たちが比較としてわかりやすいだけであって、スノーの本質はもうちょっと違うけど。
「何か特殊な能力をお持ちで……」
「そんなものはなかったね。
今はボクと同じ雷獣を使えるけど」
「えぇ~……ストックのならまだしも、そっち」
ひたすらマリーが引いていくのだが、なんでや。
少し話が途切れたので、おにぎりを食べ、お茶を飲む。
うーん、エイミーとマリエッタのことはよし。
スノーのことも話して、ビオラ様のことはまだ言っちゃダメ。
二人の関係の今後のことも、状況の確認はOK。
ジュノーの件や、パンドラ絡みはまだ特にないし。
あとは何かあったかな……。
あ、そうだ。
ついさっきのことがあったか。
「紹介、もう一人したいのがいたんだった」
おにぎりを食べきり、手を拭く。
「何?また誰か拾ったの?」
「違うよ。ずっと一緒だった子。
おいで、アウラ」
ボクの声に反応して。
ピンとか機器とか全部外して、セキュリティロックをかけておいたビリオンが。
自ら魔力流を発し、静かにこちらにやってくる。
「「!!??」」
二人が席から立ち上がって驚いてる。
サルベーションコールで少し動くのは二人とも見てるけど、これはさらに奇怪な現象だ。
あれは魔導の効果もあるから、まだ納得の範疇なんだけど。
普通、何の魔導もなく、神器車は自分で起動できない。
ボクの知る限り半島で唯一、神器を遠隔起動できるマリー。
その技と、同じ現象ともいえる。
まぁ、まださすがにヨチヨチ歩きみたいなもんだ。
自ら走り回ったりするには、魔力供給……サルベーションのコールを上げる必要がある。
「え、これあの腕輪のコールですか!?」
「違うよ。アウラ、聞かせてあげて」
『マリー、ダリア』
二人がおかしな感じのお顔になっている。
『イツモアリガトウ』
ダリアとマリーは、ビリオンの整備とかも手伝ってくれてるしね。
しかしいいリアクションだけど。
詳細を説明したら、卒倒したりしないだろうな?二人とも。
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