19-6.同。~輝く瞳、それを見る者~
~~~~「適性欠如」……ミスティのことだ。彼女はそれを自ら、乗り越えた。
飲み込みいいなぁほんとにアリサは。
ほんの数日やってもらっただけで、こうとは。
相当向いてると見た。
マリエッタを見る。
穏やかに、目で頷かれた。
「ま、君がパンドラに来るならば、だけどね」
「志望させていただきます」
よっしゃ、言質いただき。
優秀な技術者は、いればいるほどありがたい。
あの魔石神器の貼り付けを根気よくやれるなんて、いい人材だよ。
「何の話だ?」
「誰が君に、その世界を教えるかって話さ。
ボクも見るけど、マリエッタとやるといい。
マリエッタにも、いい刺激になるんじゃない?」
「そうですね。人に教えたことはありませんし」
「ほんとか!ありがとう、ハイディ。
よろしく、マリエッタ」
「ええ。よろしく、アリサ」
二人が穏やかに、少し照れくさそうに笑い合っている。
…………そういや、ボクの周りだとこれ、ちょっと珍しいな。
自身のパートナー以外と、しっかり手を組むってケース。
皆、それぞれ仲はいいんだけどね。組んで何かやるには分野が違うんだよ。
例えばミスティは魔導に長けるけど、使用専門。ダリアとは話が合わない。
他なんてもっとバラバラだ。誰も得意なところが被らない。
だからこそ、得意分野を出し合う形で、問題に当たったりするけど。
ストックと誰かとか、ボクと誰か、だったら合うかな?
ボクとストックは言わずもがな。
エイミー、マリエッタ、マドカ、アリサの四人がこのまま加わるとして。
技術・研究の既存の輪が、もう少し広がりそうな感じだな……。
マドカはあれで気が利くし、少しメリアに指導してもらってもいいかもなぁ。
前の時間では、あまりなかったことだけど。
こういう輪の広がり方は、ちょっと嬉しい。
「あと、その。ハイディ」
「ん?この際だから何でも言ってみたまえ。アリサ」
「ああ。私の力のこと、なんだが。
その……もっと強くというか。
鍛えることはできないだろうか」
「そういうってことは、普通の方法じゃ鍛えられなかったんだな?」
「ああ」
だろうな。ゲーム由来かもしれない、特殊な力だ。
魔導でも呪いでもなかった。
幾人かいる、由来のわからない力の持ち主たちと、おそらく同じもの。
「んむ。ちょっとどう鍛えたいかの確認のためになんだけどさ。
どうして強くしたいか、聞いていい?」
「ん……あれ最初は、全然うまく扱えなくて。
触れたものが壊れたり、人を傷つけたりしてたんだ」
ああ……だろうなぁ。
「君がこっちの時間に現れた、最初ごろってことか」
「そうだ。少しずつ、慣れてはきたけど、その。
マドカをまた……傷つけないか、不安で」
それでやたらマドカに気遣わしげなのに、必要以上にそばに寄らないんだな、この子。
触れると、壊してしまいそうなんだ。
ま、詳しくは聞くまい。野暮ってもんだ。
「君の破壊の力は、接触必須か?」
「いや、触れてなくても……正しくイメージできれば、壊せる」
「範囲はこないだ聞いたけど、大地を割る勢いから、カップの取っ手だけ壊すまで。
割と自由にいけると」
「ああ」
逆にこれは、イメージが不正確なら意図しないものを壊すということでもある。
能力の発動条件がわからないところが、少し厄介だが。
「時間をかけて、まずは調べよう。
その力の、特に発動条件を明らかにしなければならない」
「できるのか!?」
「できるに決まってるだろ。
君の力は機械計測できたんだ。
なら必ず明らかにできる」
おお。アリサは意外に感情豊かだな?
いい笑顔だこと。
ま、機器に反応しない、謎のパゥワーだったらそりゃダメだがな。
呪縛の力だって、魔導で再現できるんだから。
そのくらい、なんてことないさ。
おや、なんでマリエッタまで笑顔なんだね。
「ふふ……エイミーがあなたをキラキラした目で見てる理由。
少しわかりました」
「あれいつもああじゃないの??」
目がキラキラしてる人かと思った。
最初は違ったけど……結晶の出力欠乏で疲れて、輝きがなかったのかと。
「違います。あなたを見てるときだけです。
ちょっと妬けますね」
すごい笑顔で言うのどういう情緒なの!?
「マドカもだな」
アリサも参戦しないでくれます!?
しかもなんか二人でふふふふって笑い合うのやめよう!?
「別にとらねーから安心しろ」
「「そういう話じゃないから、そのままでいて」」
どういう話だ。心境を明らかにしろ。
ま、いいか。
ボクはスプーンを器に置く。
からん、といい感じに涼しげな音がたった。
「で。良い話できてよかったけど。二人とも」
「はい?」「なんだ」
「ゼリーを食え」
二人の前の器の中で、半透明の物体が静かに揺れている。
ボクは隙を見て、もう全部食べた。
「「…………いただきます」」
んむ。よろしい。
次の投稿に続きます。




